知らない番号からの電話、しつこい勧誘、お店にかかってくる強い口調のクレーム。「あとで言った・言わないにならないよう録音しておきたい」という場面に備えて、この記事では次のことを公式の情報だけでまとめます。
- 通話の録音について総務省・個人情報保護委員会が公表している考え方(録音したデータの「使い方」に注意が要る理由)
- iPhone と Android の標準の電話アプリで録音する手順、保存場所、消し方、録音できない場面
- 固定電話で使える「この通話は録音されます」の警告機能と、70歳以上の世帯で無料になるサービス
- 2026年10月1日から事業主の義務になったカスタマーハラスメント対策で、厚生労働省のマニュアルが録音について示していること
- 録音した後にどこへ相談し、データをどう扱うか
録音の前に知っておきたい、公的機関の説明
総務省:「通信の秘密」と、手元に保存した録音の関係
電話の通信は、電気通信事業法第4条の「通信の秘密」で守られています。総務省のFAQによると、保護の対象は「電気通信事業者の取扱中に係る通信」で、侵した場合の罰則は同法第179条に定められています。侵害にあたりうる行為は、通信当事者以外の第三者が積極的に知ろうとする「知得」、当事者の意思に反して使う「窃用」、他人が知り得る状態に置く「漏えい」の3つに分けられています。
そのうえで同じFAQは、通信当事者が自分の端末に保存している「通話の録音記録」は「電気通信事業者の取扱中」には当たらないとしつつ、それを通信当事者の有効な同意なく取得・利用・提供などすると、不法行為責任などが生じる場合があると説明しています。つまり、問題になりやすいのは「録音したこと」そのものより、録音を誰に渡すか・何に使うかです。SNSに音声を載せる、関係のない人に聞かせる、といった使い方は避け、相談先や社内の担当者など必要な範囲にとどめるのが安全です。
個人情報保護委員会:事業者が顧客との通話を録音するとき
個人情報保護委員会のFAQ(Q1-10)は、顧客との通話内容について「特定の個人を識別することが可能な場合には個人情報に該当」するとし、その場合、事業者は利用目的を通知または公表する義務を負う一方で、録音していることを相手に伝える義務までは負わないと答えています。お店や会社が通話を録音するなら、プライバシーポリシーなどで「何のために使うか」を公表しておくことが前提になります。
iPhone で通話を録音する
Apple の iPhone ユーザガイドには、標準の電話アプリで通話を録音する手順が載っています。Apple の「iOSとiPadOSで利用できる機能」のページでは、「電話:通話録音」の対応言語に日本語が、「電話:通話の文字起こし」の対応言語に日本語(日本)が入っています。
- 電話アプリで電話をかける(または受ける)。
- 通話中に画面上のボタンをタップしてから、「通話録音」をタップする。
- 録音が始まると、録音されていることが音声の通知で双方に知らされます。
- 止めるときは停止ボタンをタップするか、電話を切る。
- 録音はメモアプリの「通話録音」フォルダに自動で保存されます。
録音した後の扱いもユーザガイドに書かれています。
- 聞き直す:メモアプリの「通話録音」フォルダのメモを開いて再生します。
- 音声ファイルとして残す:メニューの「オーディオファイルを保存」で、好きな保存場所に書き出せます。「オーディオを共有」で送ることもできます。
- 消す:メモの「削除」で消します。音声を消すと文字起こしも一緒に消えます。
注意点も公式に書かれています。
- Apple は、始める前に録音しても問題ないことを通話相手に確認するよう案内しています。
- 一部の国や地域では1対1の通話しか録音できません。欧州連合など、通話録音が使えない国・地域もあります。
- 文字起こしは「会話を完全に再現できていない可能性」があるため、精度を確認してから使うよう書かれています。
- 録音機能は初期状態でオンです。使わないなら「設定」→「アプリ」→「電話」→「オーディオ通話録音」でオフにできます。
Android(Google の電話アプリ)で通話を録音する
Android の場合、機種によって入っている電話アプリが違います。ここでは Google の「電話アプリ」のヘルプに書かれている内容を紹介します。メーカー独自の電話アプリは手順が異なります。
- 使える条件:Pixel 以外は Android 9 以降、Pixel は Android 14 以降を搭載した Pixel 6 以降。電話アプリが最新であること。録音に対応しているのは特定のデバイスと携帯通信会社だけで、使える国・地域も限られます。
- 録音の始め方:Pixel 以外は通話中の画面で録音アイコンをタップ。Pixel は「通話アシスト」→「通話の録音」をタップ。
- 相手への通知:録音を始めると、録音していることが自分と相手の両方に知らされます。止めたときも双方に知らされます。初めて使うときには、地域の法律を守るよう案内が表示されます。
- 録音できない場面:相手が出るまでの間、保留中、グループ通話。
- 保存先:録音は端末内にだけ保存され、端末の外に保存されたりバックアップされたりしません。通話履歴を消すと録音も消えます。機種変更の前や相談に持っていく前には、共有アイコンからメールなど別のアプリに送って控えを作っておきます。
- 自動で消す・まとめて消す:「通話の録音」の設定で、自動で削除するまでの期間を決めたり、すべての録音を一括で消したりできます。
- 自動録音:「連絡先に登録されていない電話番号」からの通話や、選んだ連絡先との通話を常に録音する設定があります(自動録音・自動削除は国・地域によっては使えません)。
Google のヘルプは、多くの地域の法令で通話の録音に関係者全員の同意が義務付けられていると説明し、必要な場合にだけ機能をオンにするよう注意しています。
iPhone・Android・固定電話の違い
| iPhone(電話アプリ) | Android(Google の電話アプリ) | 固定電話(防犯機能付き電話) | |
|---|---|---|---|
| 相手に伝わるか | 音声の通知で双方に知らされる | 開始・停止が双方に知らされる | 着信音の前に警告メッセージを流す機種がある |
| 保存先 | メモアプリ「通話録音」フォルダ | 端末内のみ(バックアップされない) | 電話機本体(機種による) |
| 知らない番号の自動録音 | 公式ガイドに記載なし | 「常に録音」の設定あり(国・地域による) | 出た通話を自動で録音する機能がある |
| 消えやすい操作 | 音声を消すと文字起こしも消える | 通話履歴を消すと録音も消える | 機種の説明書を確認 |
固定電話は「録音します」を先に流す
警察庁の特殊詐欺対策ページ(SOS47)は、防犯機能付き電話の導入をすすめています。着信音が鳴る前に「この通話は防犯のために録音されます」などの警告メッセージを自動で流し、出てしまった場合も通話が録音されて後から聞き直せる、という機能です。ナンバー・ディスプレイを契約していれば、非通知の電話を着信音を鳴らさずに拒否したり、登録していない番号からの着信に注意を促したりする機能もあります。同じページには、自治体によっては補助金などがあるので、お住まいの自治体の情報を確認するよう書かれています。SOS47の防犯マンガ「留守電や録音機でSTOP!オレオレ詐欺」でも、「詐欺の犯人って録音されるのが嫌みたいだよ」というせりふとともに、知らない番号からの着信で警告音を鳴らす機器を使った対策を紹介しています。警告メッセージがなぜ効くのかは「録音しています」で詐欺電話が切れる理由で詳しく説明しています。
電話を入口にした詐欺は今も多く、警察庁の令和8年(2026年)上半期の暫定値では、特殊詐欺の認知件数は22,031件(前年同期比18.3%増)、被害額は1,816.2億円(同51.7%増)でした。警察官などを名乗るニセ警察詐欺では、最初の接触手段は「電話が9割以上を占める状況が継続」と警察庁は公表しています(手口は警察を名乗る「口座が凍結される」電話)。
NTT東日本の固定電話では、警視庁の案内(2026年3月更新)によると、70歳以上の契約者、または70歳以上の方と同居している契約者の回線は、申し込めばナンバー・ディスプレイとナンバー・リクエスト(非通知の相手に番号を通知してかけ直すよう案内する機能)が無料になります。国際電話を使わないなら、国際電話の利用休止も無料で申し込めます。問い合わせ先はNTT東日本の特殊詐欺対策ダイヤル(0120-722-455、9時〜17時。土日・年末年始を除く)です。詳しい条件や申し込み方は固定電話の迷惑電話対策 70歳以上は番号表示が無料にまとめています。
お店・会社がクレーム電話を録音するとき
厚生労働省の「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル(令和8年度改訂版)」によると、令和7年6月の労働施策総合推進法の改正で、カスタマーハラスメントについて事業主が雇用管理上必要な措置を講じることが義務化され、令和8年(2026年)10月1日から施行されています。マニュアルでは録音について次のように書かれています。
- 相手の言動がカスタマーハラスメントと疑われる場合は、録音・録画・対応記録・時間の計測など、第三者が検証できる証拠を集める。
- 共通の対応として「必要があれば相手の了解を得て録音する」。
- 電話での対応では「通話内容を録音できるようにしておく」。
- 対応例として、侮辱的な発言や名誉を傷つける発言、人格を否定する発言は、後で事実確認ができるよう録音する。
- 理不尽な問い合わせが繰り返される場合は、連絡先をリスト化し、通話内容を記録する。
- 電話で長時間拘束される場合は、応じられないことを明確に告げたうえで、膠着状態になってから一定時間(30分程度)を超えたら電話を切る対応例が示されている。
- 暴行・傷害・脅迫など犯罪に当たる言動は、警察に通報することが重要だと書かれている。
- 録音・録画にあたっては個人情報保護法などを守り、顧客の個人情報を適切に扱う。
お店で準備しておくことを整理すると、①電話機や回線で通話を録音できるようにする、②録音の利用目的をプライバシーポリシーなどで公表する、③録音を聞ける人・保存する場所を決める、④長時間の電話を切る基準や、警察・弁護士に相談する基準を従業員に伝えておく、の4つです。
よくある質問
相手に言わずに録音してもよい?
事業者については、個人情報保護委員会のFAQが「録音している旨を伝える義務までは負わない」と答えています(利用目的の通知・公表は必要)。一方、Apple は録音前に相手に確認するよう案内しており、iPhone と Google の電話アプリでは録音の開始が相手にも自動で知らされます。個人が録音を証拠として使えるかどうかは事情によるため、心配なら弁護士や法テラス(サポートダイヤル 0570-078374、平日9時〜21時・土曜9時〜17時)に相談してください。
録音を家族や相談先に聞かせてもよい?
総務省のFAQは、録音記録を有効な同意なく利用・提供すると不法行為責任などが生じる場合があるとしています。警察・消費生活センター・弁護士など、相談に必要な相手に聞いてもらう範囲にとどめ、SNSなどで広く公開するのは避けましょう。
勧誘電話で「もう電話しないで」と言ったのに、また来たら?
特定商取引法は、電話勧誘販売で契約しない意思を示した人への勧誘の継続や再勧誘を禁止しています(第17条)。勧誘の前には事業者名・勧誘者の氏名・商品の種類・勧誘である旨を告げる義務もあります(第16条)。断った日時と相手の名乗った名前を記録しておくと、相談のときに役立ちます(断った営業電話がまた来たら?)。
知らない番号からの電話で、録音を役立てる手順
- 出る前に番号を調べる:番号検索で、口コミや公開情報を確認します。心当たりがなければ出ない・折り返さないのも選択肢です(知らない番号から電話が来たときの対応)。
- 出るなら録音し、そのことを伝える:iPhone の電話アプリと Google の電話アプリの録音機能では、録音していることが相手にも自動で知らされます。
- 相手の名前と連絡先を確かめる:国民生活センターは、勧誘を断るときに事業者名と連絡先を確認し、「いりません」とはっきり伝えるよう呼びかけています。迷惑電話対策機能や留守番電話を使い、知らない番号にすぐ出ないことも有効としています。
- 断ったのに勧誘が続くなら188へ:困ったら消費者ホットライン188で、お住まいの地域の消費生活センターなどに相談できます。断りきれずに契約しても、クーリング・オフなどができる場合があります。
- 脅し・詐欺が疑われるなら#9110へ:警察相談専用電話#9110は、かけた場所を管轄する都道府県警察本部などの総合窓口につながります(携帯電話からも使えます。ダイヤル回線と一部のIP電話では使えません。土日祝日と夜間は当直や音声案内などで対応)。たった今被害に遭った・事件を目撃したという緊急のときは110番です。どこに相談するか迷ったら迷惑電話の相談先の使い分けを参考にしてください。
- 録音とメモを整理して残す:日時・番号・話の内容を被害メモにまとめます。Android は通話履歴を消すと録音も消えるので、控えを別の場所に保存してから履歴を整理します。録音は相談先に聞いてもらう以外の目的で広めないようにします。
あわせて読みたい
参考
この記事は2026年9月に書き、2026年10月に最新の公開情報で見直しました。
- 総務省「通信の秘密(電気通信事業法第4条)FAQ」
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/d_syohi/th_faq.html - 個人情報保護委員会「顧客との電話の通話内容は個人情報に該当しますか。また、通話内容を録音している場合、録音している旨を相手方に伝えなければなりませんか。」(Q1-10・令和4年4月更新)
https://www.ppc.go.jp/all_faq_index/faq1-q1-10/ - Apple「iPhoneで通話を録音して文字に起こす」(iPhoneユーザガイド)
https://support.apple.com/ja-jp/guide/iphone/iph57c6590e9/ios - Apple「iOSとiPadOSで利用できる機能」
https://www.apple.com/jp/ios/feature-availability/ - Google 電話アプリ ヘルプ「電話アプリを使用して通話を録音する」
https://support.google.com/phoneapp/answer/9803950?hl=ja - 警察庁・SOS47特殊詐欺対策ページ「防犯機能付き電話の導入」
https://www.npa.go.jp/bureau/safetylife/sos47/case/security-phone/ - 警察庁・SOS47特殊詐欺対策ページ 防犯マンガ「留守電や録音機でSTOP!オレオレ詐欺」
https://www.npa.go.jp/bureau/safetylife/sos47/manga/phone/ - 警察庁・SOS47「令和8年上半期における特殊詐欺の認知・検挙状況等(暫定値)」
https://www.npa.go.jp/bureau/safetylife/sos47/new-topics/260731/01.html - 警視庁「特殊詐欺被害防止の取組(固定電話)」(2026年3月6日更新)
https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/kurashi/tokushu/furikome/stop_sagi_tel.html - 厚生労働省「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル(令和8年度改訂版)」
https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000915233.pdf - 消費者庁 特定商取引法ガイド「電話勧誘販売」
https://www.no-trouble.caa.go.jp/what/telemarketing/ - 国民生活センター 見守り新鮮情報 第465号「断っているのにしつこい勧誘電話 法律違反です」(2023年10月31日)
https://www.kokusen.go.jp/mimamori/mj_mailmag/mj-shinsen465.html - 警察庁「警察相談専用電話『#9110』」
https://www.npa.go.jp/bureau/soumu/soudan/soudanmadoguti.pdf - 警視庁「相談ホットラインのご案内」
https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/sodan/madoguchi/sogo.html - 法テラス「法テラスについて」(サポートダイヤル)
https://www.houterasu.or.jp/site/about-houterasu/
※iPhone・Android の手順と対応条件は、2026年10月時点の各社ヘルプの記載です。OSや電話アプリの更新、機種・通信会社・国や地域によって、表示や使える機能が変わることがあります。特殊詐欺の件数・被害額は警察庁が2026年7月に公表した令和8年1〜6月の暫定値です。NTT東日本の無料化の条件は警視庁の2026年3月更新の案内によるもので、最新の条件はNTT東日本にご確認ください。この記事は録音の法的な扱いを個別に判断するものではありません。録音を証拠として使う場面や個別の事情については、弁護士や相談窓口にご相談ください。