「あなたの名義の口座が犯罪に使われている。このままでは口座が凍結される」――警察官や検察官を名乗る人物からこう電話がかかってきたら、それは詐欺です。警察庁は、警察官などをかたって捜査名目で現金などをだまし取る手口を「ニセ警察詐欺」と呼び、2025年(令和7年)の特殊詐欺の被害額の約7割がこの手口だったと公表しています。この記事では、警察・検察をかたる「口座凍結」詐欺の手口、画面に出る番号が本物でも信用できない理由、銀行員を名乗る型との違い、本物の警察がしないこと、そして電話を切ってから今日できる確認手順を、警察庁と全国銀行協会の公表情報をもとに具体的に解説します。
心当たりのない番号からの着信なら、まず番号を検索して素性を確かめてください。以下の内容に一つでも当てはまるなら、通話を続けてはいけません。
数字で見る「ニセ警察詐欺」
警察庁が2026年6月に公表した令和7年(2025年)の確定値では、特殊詐欺全体の認知件数は27,832件、被害額は1,423.1億円でした。このうちニセ警察詐欺は次のとおりです。
| 項目 | ニセ警察詐欺(令和7年) |
|---|---|
| 認知件数 | 11,014件(特殊詐欺全体の39.6%) |
| 被害額 | 1,005.0億円(特殊詐欺全体の70.6%) |
| 既遂1件当たりの被害額 | 922.5万円 |
| 金地金(金塊)をだまし取られた件数・被害額 | 163件・58.2億円 |
警察庁は、この手口が令和6年後半ごろから目立って増え、令和7年に特殊詐欺の件数・被害額が大きく増えた主な要因になったとしています。被害者の年代は30代が最も多い一方、1件当たりの被害額は70代が最も大きいという特徴もあります。最初の接触は、40代以下では携帯電話が9割以上、50代以上では固定電話が約6割です。若い人も「自分は関係ない」とは言えない手口です。
手口の流れ――「捜査協力」を装って資産を奪う
従来のオレオレ詐欺と違い、この手口は「あなたが事件に巻き込まれている」「あなたにも容疑がかかっている」という筋書きで進みます。警察庁が公表している事例から、典型的な流れを三段階で整理します。
1. 電話で不安を煽る
最初の電話では「あなたの口座が犯罪に使われている」「あなた名義の口座が不正に開設され、あなたも資金洗浄事件の容疑者になっている」「あなたの携帯電話が不正に契約された」などと告げます。電話会社や総務省などを名乗って「携帯電話の未納料金がある」と切り出し、途中で警察官役に交代する型もあります。「2時間後からこの電話は使えなくなる」といった自動音声で始まり、番号を押すと犯人につながる例も確認されています。
犯人は「捜査の内容は誰にも話してはいけない」「長期間勾留される可能性がある」と強く口止めし、家族や周囲に相談させないように仕向けます。口止めされた時点で、詐欺を疑ってください。
2. SNS・ビデオ通話で「本物らしさ」を演出する
次に、LINEなどのメッセージアプリやビデオ通話に誘導し、画面越しに顔写真付きの偽の警察手帳や、被害者の実名が書かれた偽の逮捕状を見せます。警察官を名乗る電話の後、今度は「大阪地検特捜部の検察官」を名乗る人物からビデオ通話があり、身分証らしきものを見せられて現金をだまし取られた事例もあります。どれほど精巧でも、これらは偽物です。
3. 「資金調査」を名目にお金を移させる
信じ込ませた後、「口座の資金を全て確認する必要がある」「一度お金を全て振り込んでもらい、資金調査を行う必要がある」「身の潔白を証明するには資産の提出が必要」などと言い、振込や現金の受け渡しを求めます。警察庁が公表した事例では、指示された口座にインターネットバンキングで250万円を振り込ませられています。金地金(金塊)を買わせて郵送させたり、受け子が自宅で受け取ったりする手口も確認されています。手口の全体像は詐欺パターン集でも整理しています。
画面に「本物の警察の番号」が出ても信用しない
着信画面に知っている警察署の番号が出れば、本物だと思ってしまいがちです。しかし警察庁は、犯人が実在する警察署などの電話番号を偽装して表示させる手口を確認しています。実際に、愛知県警察本部の代表電話番号が表示された電話で警察官を名乗られ、振込をさせられた事例があります。被害者はその後、表示された代表番号に自分から電話をかけて、初めて詐欺だと分かりました。
また、「+」から始まる国際電話番号で、末尾が「0110」になっている番号から警察署を装ってかけてくる例も目立つと警察庁は注意を呼びかけています。表示された番号がどうであれ、「電話で捜査対象だと告げられた」時点で詐欺と判断してかまいません。
国際電話を使う予定がなければ、着信自体を止めておくのが有効です。固定電話は「国際電話不取扱受付センター」(0120-210-364)に申し込むと、国際電話の発着信を無料で休止できます。携帯電話については、警察庁は国際電話の着信規制ができるアプリの利用を呼びかけています。
銀行員・銀行協会職員を名乗る型もある
「口座が凍結される」「キャッシュカードが不正に利用されている」という電話は、警察官だけでなく、銀行員や銀行協会の職員を名乗ってかかってくることもあります。警察庁は、警察官や銀行協会などの職員を装って電話し、「キャッシュカードが不正に利用されている」などと言ってキャッシュカードを準備させ、隙を見て盗み取る手口を「キャッシュカード詐欺盗」として注意を呼びかけています。全国銀行協会も、銀行協会の職員を名乗って口座番号や暗証番号を聞き出し、「担当者が伺います」と言ってキャッシュカードや通帳をだまし取る手口を紹介しています。
見分ける一線ははっきりしています。全国銀行協会は「銀行協会職員や銀行員が暗証番号を尋ねることは一切ない」としています。暗証番号を聞かれた、カードを取りに来ると言われた――どちらかがあれば詐欺です。
「電話をつないだままATMへ行ってください」という指示も危険なサインです。犯人が被害者をATMに誘導し、携帯電話で話をさせながら振込操作をさせるのは還付金詐欺の典型的な手口で、警察庁と金融庁は「ATMでの携帯電話の通話は、しない、させない」運動を全国で進めています。ATMの前で電話の指示に従って操作することは、どんな名目でもしないでください。
なお、金融機関が本当に連絡してくることもあります。警察庁と金融庁は、金融機関が詐欺などの疑いがある取引について、顧客に確認をしたり、必要に応じて警察に連絡したりする場合があると周知しています。本物かどうか迷ったら、その電話では何も答えずに切り、キャッシュカードの裏面や通帳、公式サイトに載っている番号へ自分からかけ直して確かめてください。
本物の警察・検察が「絶対にしないこと」
警察庁の呼びかけをまとめると、本物の警察は次のことをしません。
- 電話で「あなたが捜査対象になっている」と伝えない。電話で取り調べをすることもありません。
- メッセージアプリ(LINEなど)で連絡してこない。
- 警察手帳や逮捕状の画像を送ってこない。
- 個人のスマートフォンに突然ビデオ通話をかけてこない。
- メールや電話で金銭を要求しない。警察庁は、メールや電話で金銭を要求することは一切ないとしています。「資産を保護する」「口座を調査する」名目での振込や現金・カードの受け渡しを求められたら詐欺です。
このどれか一つでも起きていれば、相手が名乗る所属や肩書きが何であれ、詐欺と判断してかまいません。「今すぐ」「今日中に」と急がせ、誰にも話すなと口止めするのも、判断力を奪うための典型的なやり方です。
電話を切って確認する具体手順
相手のペースに乗らないための最善策は、いったん電話(ビデオ通話)を切ることです。「確認して折り返します」と言えば十分で、理由を説明する必要はありません。切った後、次の順で確認してください。
- 相手から教えられた番号には、決して折り返さない。警察庁もこの点をはっきり呼びかけています。折り返すと、詐欺グループにつながります。
- 相手が名乗った所属の番号を、自分で調べてかけ直す。「◯◯警察署」「◯◯地方検察庁」の番号を公式サイトなどで自分で調べ、自分からかけて事実を確認します。着信画面に表示された番号は偽装されている場合があるので、そのまま信用しないでください。
- 迷ったら警察相談専用電話「#9110」か、最寄りの警察署へ。警察庁は、少しでも怪しいと思ったら電話を切り、対面で最寄りの警察署に相談するか、#9110に相談するよう呼びかけています。
- 一人で判断せず、家族や身近な人に話す。「他言無用」という指示自体が詐欺のサインです。話すことで冷静さを取り戻せます。
受けた電話の内容は、時系列でメモに残しておくと相談や被害届の際に役立ちます。被害整理メモを使って、日時・表示された番号・相手の名乗り・言われた内容・要求されたことを書き出しておきましょう。高齢のご家族がいる場合の予防策は高齢者の電話詐欺を防ぐもあわせてご覧ください。
情報や現金を渡してしまったら
すでに口座番号や暗証番号を教えた、振り込んだ、現金やカードを渡してしまった――そんなときも、次の行動で被害の拡大を止められる可能性があります。落ち着いて、早い順に動いてください。
- 金融機関に連絡して口座を止める。キャッシュカードや暗証番号を渡した、振り込んでしまった場合は、直ちに取引銀行に電話し、口座の利用停止などを相談します。連絡先は、カードの裏面や通帳、銀行の公式サイトで自分で確かめた番号にしてください。
- カード会社の正規窓口に連絡する。クレジットカードの情報を伝えた場合は、カード裏面や公式サイトに記載された窓口に連絡し、利用停止と再発行の手続きをします。相手から教えられた番号には絶対にかけないでください。
- 被害にあった、またはこれから受け子が来るなら「110」へ。現金をだまし取られた、これから誰かが受け取りに来る、といった緊急時は迷わず110番通報してください。緊急でなければ、最寄りの警察署か#9110に相談します。
- 消費者ホットライン「188(いやや)」も使える。どこに相談すればよいか分からないときは、消費者庁の消費者ホットライン188で、身近な消費生活センターや相談窓口を案内してもらえます。
渡してしまったことを恥じて一人で抱え込む必要はありません。令和7年だけで1万1千件を超える被害が警察に認知されており、相談窓口はそのためにあります。まずは口座とカードを止め、110または#9110に連絡することが、今日できる最も重要な行動です。似た手口で不審な着信があったときの初動は、知らない番号への対応も参考にしてください。
参考
この記事は2026年9月に、以下の公開情報をもとに書きました。
- 警察庁・SOS47「ニセ警察詐欺に注意! #ニセ警察詐欺」(2025年11月17日)
https://www.npa.go.jp/bureau/safetylife/sos47/new-topics/241218/02.html - 警察庁・SOS47「ニセ警察官とのビデオ通話」(2025年10月24日)
https://www.npa.go.jp/bureau/safetylife/sos47/new-topics/241218/06.html - 警察庁・SOS47「警察に偽装した電話番号に注意!」(2025年3月25日)
https://www.npa.go.jp/bureau/safetylife/sos47/new-topics/250325/01.html - 警察庁・SOS47「令和7年における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について(確定値)」(2026年6月5日)
https://www.npa.go.jp/bureau/safetylife/sos47/new-topics/260605/01.html - 警察庁・SOS47「手口一覧と今日からできる対策」
https://www.npa.go.jp/bureau/safetylife/sos47/case/ - 警察庁・SOS47「「ストップ!ATMでの携帯電話」運動について」
https://www.npa.go.jp/bureau/safetylife/sos47/new-topics/250110/05.html - 警察庁・SOS47「金融機関が行う預貯金口座の不正利用等防止の取組に係る広報について(金融庁等と連携した啓発)」(2026年5月22日)
https://www.npa.go.jp/bureau/safetylife/sos47/new-topics/260522/01.html - 全国銀行協会「銀行協会職員を騙る詐欺」
https://www.zenginkyo.or.jp/hanzai/7320/ - 消費者庁「消費者ホットライン」
https://www.caa.go.jp/policies/policy/local_cooperation/local_consumer_administration/hotline/ - 消費者庁「消費者ホットライン啓発資料」
https://www.caa.go.jp/policies/policy/local_cooperation/local_consumer_administration/hotline/188_pamphlet - 警視庁「相談ホットラインのご案内」(2026年9月18日更新)
https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/sodan/madoguchi/sogo.html
※件数・被害額は警察庁が2026年6月に公表した令和7年(2025年1〜12月)の確定値です。ニセ警察詐欺は令和7年から統計が始まったため、前年との比較はありません。電話番号・相談窓口は2026年9月時点の各公式ページの記載によります。