詐欺・迷惑電話

電話で「はい」は録音悪用される?米国の注意喚起と本当の注意点

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「知らない番号からの電話で『はい』と答えると、その声を録音されて悪用される」――こうした話を見聞きして、電話に出るのが不安になったときのために、この記事では、①この話に関係する米国の公的機関の注意喚起に実際に何が書かれているか、②日本の警察庁が今どんな電話の手口に注意を呼びかけているか(2026年の最新の数字つき)、③日本で実際に「電話で返事をしてしまった」ことから起きているトラブル(電話勧誘・送り付け)と法律のルール、④うっかり「はい」と言ってしまったときに状況別に何をすればよいか、を公的機関の公開情報をもとに整理します。

米国で出された注意喚起:FCC(2017年3月27日)

「『はい』を録音される」という手口について公的機関が出した注意喚起として、米国の連邦通信委員会(FCC)が2017年3月27日に出した消費者向け注意喚起「CONSUMER ALERT: 'CAN YOU HEAR ME' SCAMS」があります。内容を要約すると次のとおりです。

  • 電話に出ると、相手が「Can you hear me?(聞こえますか?)」と尋ねる。
  • 相手はこちらの「Yes(はい)」という返事を録音し、「声の署名(voice signature)」として手に入れる。
  • その録音を使って本人になりすまし、電話を通じて公共料金やクレジットカードの不正な請求を承認させるおそれがある。
  • かけてくる相手は、住宅ローン会社や公共料金の事業者など、受け手になじみのありそうな組織を名乗る。

FCCは、こうした電話の特徴を「FCCに寄せられた苦情と報道」にもとづいて説明し、身に覚えのない請求が明細にあれば「クラミング(cramming)」と呼ばれる不正請求の被害にあった可能性が高い、としています。

4日後の2017年3月31日には、イリノイ州の司法長官も同じ手口について注意喚起を出しました。州の住民から苦情が増えていること、相手は発信者番号を偽装してなじみのある市外局番を表示させ、電話に出させようとすることを挙げ、「聞こえますか」と聞かれたら「『いいえ』と言うか何も言わずに切る」よう呼びかけています。番号の表示が当てにならない点は日本でも同じで、番号詐称の記事で詳しく説明しています。

注意喚起から読み取れること・読み取れないこと

FCCの文書にもイリノイ州の文書にも、被害件数や被害額は載っていません。つまり「実際にこういう電話がある」という警告ではありますが、「録音された『はい』だけでどれだけ被害が出たか」を示すものではありません。また、どちらも米国の電話・請求の仕組みを前提にしたものです。

一方で、FCCの助言の中身(知らない番号には出ない・出たら切る・明細を確かめる)は、録音の悪用が起きるかどうかに関係なく、どの国の迷惑電話にも役に立つものです。大事なのは「はい」という一言そのものより、相手が誰か分からないまま会話を続けないことです。

日本の警察庁が注意を呼びかけている手口(2026年)

警察庁の特殊詐欺対策ページ(SOS47)の手口一覧には、ニセ警察詐欺・オレオレ詐欺・預貯金詐欺・キャッシュカード詐欺盗・架空料金請求詐欺・還付金詐欺・SNS型投資詐欺・SNS型ロマンス詐欺などが並んでいますが、録音した返事を使う手口は載っていません。日本で電話の被害の中心になっているのは、相手が警察や家族などを名乗り、会話を重ねてお金を払わせる手口です。

時点(暫定値)特殊詐欺の認知件数被害額うちニセ警察詐欺
2026年1〜6月22,031件(前年同期比+18.3%)1,816.2億円(同+51.7%)4,466件・507.9億円
2026年1〜8月29,687件(同+3,732件)2,360.7億円(同+588.4億円)6,346件・728.6億円

(警察庁SOS47の令和8年上半期・8月末の公表より)

警察庁は、ニセ警察詐欺の最初の接触手段は電話が9割以上を占める状況が続いているとしています。「口座が凍結される」「捜査に協力を」といった話で始まる電話の確かめ方は警察を名乗る「口座が凍結される」電話にまとめています。録音された一言を心配するより、こうした電話で話を聞き続けてしまうことのほうが、日本では現実の危険です。

日本で実際に起きている「電話で承諾した」トラブル

電話での返事が問題になるもう一つの場面が、電話で強引に「承諾」を取り付け、商品を送ってくるトラブルです。国民生活センターは、カニなどの海産物を電話で勧められ、強引に契約させられたり、断ったのに商品が届いたりする相談を公表しています。

年度相談件数
2023年度2,876件
2024年度3,538件
2025年度4,358件
2026年度(5月31日時点)273件(前年同期428件)

(国民生活センター「海産物の電話勧誘販売・送り付け」2026年7月31日更新より。魚介類の「ネガティブ・オプション」または「電話勧誘販売」に関する相談で、消費生活センター等からの経由相談は含まれていません)

公表されている事例には次のようなものがあります。

  • 過去に利用した店から「カニが安くなる」と勧誘の電話があり承諾したが、不審に感じて解約したい。
  • 知らない業者から電話で勧められて断ったのに、着払いで商品が届いた。
  • 「店を閉めるので最後に買ってほしい」と電話があり断ったが、まもなく発送すると連絡があった。

海産物に限りません。国民生活センターの見守り新鮮情報(第465号)には、80代の人が健康食品の電話勧誘を何度も受け、「あまりにしつこいので購入を承諾してしまった」(約11万円)という事例が載っています。電話口でつい返事をしてしまう場面が、実際のトラブルの入り口になっています。

電話勧誘には法律のルールがある

事業者が電話で勧誘して申込みを受ける取引は、特定商取引法の「電話勧誘販売」にあたります。電話をいったん切ったあとに、郵便や電話で申し込んだ場合も含まれます。消費者庁の特定商取引法ガイドによると、主なルールは次のとおりです。

ルール中身
名乗る義務(第16条)勧誘の前に、事業者名・勧誘する人の氏名・商品の種類・契約の勧誘が目的であることを告げる
再勧誘の禁止(第17条)契約しないと意思表示した人に、勧誘を続けたり改めて勧誘したりしてはいけない
書面の交付(第18条・第19条)申込み・契約のときに、価格・支払い方法・クーリング・オフなどを書いた書面を渡す。クーリング・オフの事項は赤枠の中に赤字、8ポイント以上の文字で書く
禁止行為(第21条)事実と違うことを告げる、わざと事実を告げない、威迫して困惑させる、といった勧誘をしてはいけない
クーリング・オフ(第24条)書面を受け取った日から数えて8日以内なら、書面または電磁的記録(メールなど)で申込みの撤回・契約の解除ができる。うそを言われたり威迫されたりしてクーリング・オフしなかった場合は、期間が過ぎてもできる
過量販売の解除(第24条の2)通常必要な量を著しく超える契約は、契約から1年間は撤回・解除ができる(特別な事情がある場合を除く)
取消し(第24条の3)事実と違うことを告げられて誤認した、などの場合は申込み・承諾の意思表示を取り消せる

なお、使ってしまった消耗品や、現金で払った総額3,000円未満の取引にはクーリング・オフが使えないなどの例外があります。通知の出し方はクーリング・オフは電話でできる?、8日を過ぎてしまった場合は8日を過ぎた後の取消し・解除で詳しく説明しています。

つまり日本では、電話で「はい」と言ってしまっても、それが電話勧誘販売であれば、書面を受け取ってから8日間は理由を問わずやめられる仕組みがあります。「一言で取り返しがつかなくなる」わけではないので、慌てずに書面と期限を確かめてください。

注文していない商品が届いたら

注文していない商品を一方的に送り付け、断らなければ買ったものとみなして代金を請求するやり方は「送り付け商法(ネガティブ・オプション)」と呼ばれます。

  • 受け取らない:国民生活センターは、家族宛てなどでその場で判断できないときは、荷物をいったん持ち帰ってもらうよう勧めています。
  • 受け取っても払わない:注文していない商品なら売買契約は成立していないため、荷物の中に請求書が入っていても支払う必要はありません(国民生活センター)。
  • 処分してよい:警視庁によると、2021年(令和3年)7月6日以降、売買契約にもとづかずに一方的に送り付けられた商品は直ちに処分できます。それ以前は、送付から14日間などの保管が必要でした(2019年の国民生活センター資料)。
  • 払ってしまったら:誤って代金を支払った場合は、返還を請求できます(警視庁)。

ただし、家族からの贈り物や、家族が自分で申し込んだ物でないかは処分する前に確かめてください。電話で「承諾した」と言われる場合は送り付けではなく電話勧誘販売の扱いになるので、前の節のクーリング・オフを確認します。

「はい」と言ってしまったときの確認手順

状況やること
相手が誰か分からないまま「はい」と答えたすぐに切る(FCCも「すぐに切る」よう勧めています)。かけ直さない
しばらくして気になってきた銀行・クレジットカード・電話会社の明細に身に覚えのない請求がないか確認する(FCCの助言)
商品の購入を承諾してしまった届いた書面の日付を確認し、8日以内ならクーリング・オフ。書面が届かない場合も相談を
頼んでいない荷物が届いた受け取らない。受け取っても払わない
名前・住所・口座などを話してしまった金融機関に連絡し、188や#9110に相談する

どの場合も、相手の事業者名・電話番号・日時・言われた内容をメモしておくと、相談がスムーズです。整理のしかたは被害メモの書き方を参考にしてください。契約や請求のトラブルは消費者ホットライン188、詐欺ではないかと不安なときは警察相談専用電話#9110へ。お金を要求されているなど急ぐときは110番です。

そもそも「話さない」ための対策

警察庁のSOS47は、特殊詐欺対策では「何よりも『犯人と話をしない』ことが大切」としています。

  • 知らない番号には出ず、留守番電話に任せる:FCCも同じ助言をしています。用件のある相手ならメッセージを残します。
  • 自動音声の「停止するにはボタンを」は押さない:FCCは、押さずに切るよう呼びかけています。反応した人を見つけて狙うために使われるためです。
  • 番号表示・非通知拒否サービス:各電話会社が提供しています。
  • 防犯機能付き電話:着信音が鳴る前に「この通話は防犯のために録音されます」などの警告を流したり、通話を自動録音したりできます。番号表示・非通知拒否サービスと組み合わせられる機種もあり、自治体によっては補助金もあるので、お住まいの自治体の情報を確認してください。録音の警告がなぜ効くのかは「録音しています」で詐欺電話が切れる理由で解説しています。
  • 断るときははっきり:国民生活センターは、相手の事業者名と連絡先を聞いたうえで、「いりません」「興味ありません」「取引するつもりはありません」など、はっきりした言葉で伝えるよう勧めています。はっきり断ったのにまた勧誘の電話をすることは、特定商取引法で禁止されています。

よくある質問

「聞こえますか?」と聞かれたら、どう返せばよい?

相手が名乗らないなら、答えずに切ってかまいません。イリノイ州の司法長官は「『いいえ』と言うか何も言わずに切る」よう呼びかけています。返事の言葉を選ぶより、名乗らない相手と会話を続けないことが大切です。

録音された声をAIでまねされることはある?

声をまねて家族を装う手口は、録音された「はい」の一言とは別の問題です。声が本人そっくりでも、いったん切って本人の番号にかけ直すなど、声に頼らない確かめ方が有効です。詳しくはAI音声で家族を装う詐欺をご覧ください。

本物の会社の電話だったら、失礼にならない?

本当に用件があるなら、会社は改めて連絡してきます。気になる場合は、電話で言われた番号ではなく、契約書や公式サイトなど自分で調べた番号にかけ直して確かめれば十分です。

まとめ:返事の一言より「相手が誰か」を確かめる

「はい」の録音悪用については、米国のFCCが2017年に注意喚起を出していますが、被害件数は示されていません。日本で実際に注意が呼びかけられているのは、警察などを名乗って会話を重ねる特殊詐欺(2026年1〜8月で被害額2,360.7億円・暫定値)や、電話で承諾を取り付ける勧誘、注文していない商品の送り付けです。知らない番号には出ない。出てしまったら名乗らせて、あいまいな返事をせずに切る。承諾してしまったら書面と8日の期限を確かめ、188に相談する。かけ直すなら、自分で調べた公式の番号にかけてください。気になる番号は、でんわチェックの番号検索で口コミや公開情報を確認できます。

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参考

この記事は2026年9月に書き、2026年10月に最新の公開情報で見直しました。

※FCCとイリノイ州司法長官の注意喚起は米国の消費者向けのもので、被害件数・被害額は示されていません。特殊詐欺の数字は警察庁が公表した2026年の暫定値で、今後変わることがあります。海産物の相談件数は国民生活センターのPIO-NETに登録された件数(年度別・2026年度は5月31日時点)で、消費生活センター等からの経由相談を含みません。クーリング・オフの期間や条件は取引の内容によって異なる場合があるため、具体的なケースは消費者ホットライン188でご相談ください。

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