営業の電話に「結構です」と断ったのに、別の日にまた同じ会社から電話が来た――。そんなとき相手のしていることが法律上どう扱われるのかを、特定商取引法(特定商取引に関する法律)の条文と消費者庁の解説・指針にもとづいて整理します。この記事で分かるのは、①電話勧誘で事業者が最初に名乗るべきこと、②「断った」と認められる言い方と認められにくい言い方、③自分からかけた電話やネット通話でも対象になる場合、④会社やお店の電話への営業が対象外になる場合、⑤契約してしまった後のクーリング・オフや取消し、⑥相談するときの準備、です。
電話勧誘の相談は増えている
国民生活センターが2026年8月5日に公表した「2025年度 全国の消費生活相談の状況」によると、販売購入形態が「電話勧誘販売」の相談は2025年度に66,768件で、全体(1,006,377件)の6.6%でした。2023年度の50,177件、2024年度の58,604件から2年続けて増えています。
| 年度 | 電話勧誘販売の相談件数 | 全体に占める割合 |
|---|---|---|
| 2023年度 | 50,177件 | 5.6% |
| 2024年度 | 58,604件 | 6.4% |
| 2025年度 | 66,768件 | 6.6% |
2025年度の電話勧誘販売の相談では、契約した人の32.1%が70歳以上で、年代別で最も多くなっています。販売方法・手口別の集計でも「電話勧誘販売」は2025年度に3位(56,663件)で、同センターは「インターネット接続回線に関する相談」が多いとしています。「光回線の利用料金が安くなる」と電話で言われて契約したが解約したい、という相談例も挙げられています。光回線の勧誘については「NTTの代理店です」と言われたときの記事でくわしく扱っています。
特定商取引法が「電話勧誘販売」として扱う電話
特定商取引法は、事業者が電話をかけて勧誘し、その相手から郵便等で申込みを受けたり契約を結んだりする販売を「電話勧誘販売」と定めています(第2条第3項)。電話勧誘販売をする事業者には、主に次のルールがあります。
- 最初に名乗る(第16条): 勧誘に先立って、事業者の名称、勧誘している人の氏名、商品などの種類、そして「契約の勧誘のための電話であること」を告げなければなりません。
- 断った人に勧誘しない(第17条): 契約しないという意思を示した人に、勧誘を続けたり、あらためて勧誘したりしてはいけません。
- うそ・隠しごと・脅しの禁止(第21条): 価格や内容などについて事実と違うことを告げる、重要なことをわざと告げない、威迫して困らせる、といった行為は禁止です。
海外の「電話してほしくない人の登録制度」と日本の違いはDo Not Call制度の記事にまとめています。
自分からかけた電話・ネット通話でも対象になることがある
条文は「電話をかけ」だけでなく、「政令で定める方法により電話をかけさせ」た場合も電話勧誘販売に含めています。施行令第2条は、SMS・メール・SNSのメッセージ、チラシ、新聞・テレビ・ウェブページの広告などで、勧誘のためだと告げずに電話をかけるよう求める方法や、「ほかの人より著しく有利な条件で契約できる」と告げて電話をかけさせる方法を挙げています。
消費者庁の「電話勧誘販売の解釈に関するQ&A」では、テレビCMの拡大鏡を注文する電話で、CMに出ていなかったサプリメントを勧められて買った例について、電話勧誘販売に当たりクーリング・オフの規定が適用されると考えられる、としています。また、インターネット回線を使って通話する形式(映像を伴うWeb会議ツールを含む)も「電話」に当たると説明しています。
「断った」と認められる言い方、認められにくい言い方
消費者庁の解説(令和7年6月1日時点版)は、第17条の「契約を締結しない旨の意思の表示」について、次の例を挙げています。
- 「いりません」「関心がありません」「お断りします」「結構です」「間に合っています」など、はっきり断った場合
- 応答せずにそのまま電話を切ることが繰り返されるなど、黙って断っていると考えられる場合
- 「その商品はいりません」だけでなく、「一切取引を行うつもりはありません」と伝えた場合
「結構です」について、消費者庁の再勧誘禁止の指針は、否定の意思表示として十分に一般的で、契約する意思がないことをはっきり示していると解される、と明記しています。一方で、「今は忙しいので後日にして欲しい」とだけ告げた場合は、その場・その時点での拒絶にすぎず、「契約しない意思」の表示には当たらないとしています。
| 言い方 | 指針・解説での扱い |
|---|---|
| 「結構です」「お断りします」「いりません」 | 契約しない意思の表示に当たる |
| 「一切取引を行うつもりはありません」 | 当たる(その商品に限らない断り方) |
| 応答せずに切ることが繰り返される | 黙って断っていると考えられる場合がある |
| 「今は忙しいので後日にして」 | 当たらない(その時点の拒絶にとどまる) |
断るときは「今は忙しい」ではなく「契約しません。今後の電話も不要です」と、はっきり伝えるのが確実です。
断った後、どこまでが禁止されるか
同じ指針は訪問販売の第3条の2について次のように整理し、電話勧誘販売の第17条も「基本的には」同様の解釈になるとしています。
| 場面 | 指針での扱い |
|---|---|
| 同じ会社の別の担当者が、同じ商品を勧誘する | 当然に禁止 |
| 断った商品とは別の商品を勧誘する | 禁止されない |
| 同じ商品でも、相当な期間が過ぎた後 | 商品の性質によっては、実質的に別の商品の契約と考えられる場合もある |
このため「一度断ったのに、また電話が来た」というだけで直ちに違反とは限りません。前回と同じ商品の話か、どのくらい期間が空いたかをメモしておくと、相談するときに役立ちます。
ルールを破った事業者はどうなるか
消費者庁の解説によると、第16条(名乗る義務)と第17条(再勧誘の禁止)の違反には罰則は定められていませんが、国による指示(第22条)や業務停止命令(第23条)の対象になります。業務停止命令は2年以内の期間を限って出され、命令したときは公表されます。第21条の不実告知や威迫などの違反は、3年以下の拘禁刑または300万円以下の罰金(併科もあり)の対象です(第70条)。業務停止命令に違反した場合も同じ刑の対象で、法人には3億円以下の罰金刑が科されることがあります(第70条・第74条)。
実際の処分は、消費者庁の特定商取引法ガイドの「執行状況」で公開されています。2025年度の一覧には国と都道府県の処分が80件載っており、そのうち取引類型が電話勧誘販売のものは4件でした(健康食品の品質についての不実告知と書面の記載不備による業務停止命令3か月など)。
会社・お店の電話への営業電話は対象外になることがある
特定商取引法は、「営業のために若しくは営業として」結ぶ契約には、電話勧誘販売の規定を適用しないと定めています(第26条第1項第1号)。会社の業務用の商品やサービスを会社として契約する場合は、原則としてこの法律の電話勧誘販売のルールの外になります。
ただし消費者庁の解説は、相手が事業者や法人だというだけで一律に対象外にするものではないとしています。
- 一見事業者名で契約していても、商品やサービスが主に個人用・家庭用に使うものなら、原則として適用される
- 実質的に廃業していたり、事業の実態がほとんどない零細事業者の場合は、適用される可能性が高い
消費者庁のQ&Aでも、「営業のため」に当たるかは、取引の種類、利益活動との関連性や目的、必要な設備を準備しているかなどの事情から、その人がその取引に習熟しているといえるかを総合的に検討するとしています。個人事業主の方が「お店の名前で契約したから対象外」と言われても、すぐにあきらめる必要はありません。
「電話してほしい」と頼んだ場合
契約の申込みのために「電話をかけてほしい」と自分から頼んだ人への電話勧誘販売は、書面交付やクーリング・オフなどの規定が適用されません(第26条第7項第1号)。ただし、消費者庁の解説は次の2点を明記しています。
- この場合でも、名乗る義務(第16条)と再勧誘の禁止(第17条)は適用される
- 商品の問い合わせのつもりで電話を頼んだだけなら、適用除外にはならない
契約してしまった後にできること
| 制度 | 期限 | 主な条件 |
|---|---|---|
| クーリング・オフ(第24条) | 法定の書面を受け取った日から8日以内 | 理由は不要。書面またはメールなどの電磁的記録で通知し、発信した時に効力が生じる |
| 過量販売の解除(第24条の2) | 契約から1年以内 | 日常生活で通常必要な量を著しく超える契約 |
| 取消し(第24条の3) | 追認できる時から1年、契約から5年 | 事実と違うことを告げられた、重要なことをわざと告げられなかったために誤認して契約した |
クーリング・オフをすると、事業者は損害賠償や違約金を請求できず、商品の引取り費用も事業者の負担です。うそを告げられたり威迫されたりして8日のうちに行使できなかった場合は、期間が延びます。消耗品(健康食品・化粧品など)を使った場合や、3,000円未満の現金取引などは対象外です。消費者庁は、書面なら特定記録郵便・書留・内容証明郵便など、メールなら送信したメールを保存するなど、証拠を残す方法をすすめています。通知の書き方はクーリング・オフの通知方法の記事、8日を過ぎた後の手段は取消し・解除の記事にまとめています。
よくある質問
同じ会社から別の番号で電話が来るのは違反ですか
第17条は事業者に対する決まりで、どの番号からかけたかは問いません。同じ会社が、断った人に同じ商品を勧誘していれば、番号が違っても再勧誘に当たり得ます。会社名と商品を記録しておくことが大切です。
相談の前に何を記録しておけばよいですか
「いつ・何と言って断ったか」を後から示せるよう、日時・番号・会社名・担当者名・やり取りをメモしておくと、相談がスムーズになります。整理のしかたは被害の整理ページが使えます。
知らない番号から営業電話が来たときの行動
- まず、相手の会社名・担当者名・何の勧誘かを確認します。名乗らない、目的をはっきり言わない電話は、その場で切ってかまいません。
- 断るときは「契約しません。今後の電話も不要です」とはっきり伝えます。
- 日時・番号・会社名・言われた内容を記録します。
- 着信した番号は折り返す前に番号検索で、ほかの人の口コミを確認します。
- 契約してしまった、しつこい勧誘が続くときは、消費者ホットライン188へ。最寄りの消費生活センター等の相談窓口につながり、土日祝日でその窓口が開いていない場合は、10時~16時に国民生活センターが受け付けます(一部地域や年末年始などを除く)。脅された、身の危険を感じるなど警察に相談したいときは、警察相談専用電話#9110へ。発信地を管轄する都道府県警察本部などの総合窓口につながります。相談先の使い分けは迷惑電話の相談先の記事も参考にしてください。
あわせて読みたい
参考
この記事は2026年9月に書き、2026年10月に最新の公開情報で見直しました。
- e-Gov法令検索「特定商取引に関する法律(昭和五十一年法律第五十七号)」(2026年8月12日施行の改正まで反映)
https://laws.e-gov.go.jp/law/351AC0000000057 - e-Gov法令検索「特定商取引に関する法律施行令」
https://laws.e-gov.go.jp/law/351CO0000000295 - 消費者庁 特定商取引法ガイド「電話勧誘販売」
https://www.no-trouble.caa.go.jp/what/telemarketing/ - 消費者庁「電話勧誘販売の解釈に関するQ&A」
https://www.no-trouble.caa.go.jp/qa/telemarketing.html - 消費者庁「特定商取引に関する法律の解説(令和7年6月1日時点版)第2章第4節 電話勧誘販売」
https://www.no-trouble.caa.go.jp/pdf/20250601la03_05.pdf - 消費者庁「特定商取引に関する法律の解説 第2章第5節 雑則」
https://www.no-trouble.caa.go.jp/pdf/20240319la03_06.pdf.pdf - 消費者庁「特定商取引に関する法律第3条の2等の運用指針―再勧誘禁止規定に関する指針―」
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_transaction/amendment/2012/pdf/130220legal_4.pdf - 消費者庁「訪問販売等の適用除外に関するQ&A」
https://www.no-trouble.caa.go.jp/qa/exclusion.html - 消費者庁 特定商取引法ガイド「2025年度の執行状況」
https://www.no-trouble.caa.go.jp/action/result_1year.html - 国民生活センター「2025年度 全国の消費生活相談の状況」(2026年8月5日)
https://www.kokusen.go.jp/pdf/n-20260805_1.pdf - 国民生活センター「全国の消費生活センター等」
https://www.kokusen.go.jp/map/ - 警察庁「警察相談専用電話『#9110』」
https://www.npa.go.jp/bureau/soumu/soudan/soudanmadoguti.pdf
※条文は2026年10月にe-Gov法令検索で確認した内容です。相談件数は国民生活センターのPIO-NETに2026年5月末日までに登録された2025年度の苦情相談の値で、販売購入形態別の件数です。処分件数は2026年10月時点で消費者庁の「2025年度の執行状況」に載っていた一覧(指示・業務停止命令・業務禁止命令を1件ずつ数えたもの)です。違反かどうかは個別の事情で判断されるため、この記事は一般的な整理です。具体的なトラブルは188(消費者ホットライン)などの相談窓口にご相談ください。