詐欺・迷惑電話

特殊詐欺グループの役割分担|かけ子・受け子と捕まる人

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知らない番号からの電話で「息子だけど」「警察です」と言われたとき、その電話をかけている人と、あとで家に現金やキャッシュカードを取りに来る人は、たいてい別の人物です。この記事では、警察庁の白書と統計をもとに、①特殊詐欺グループがどんな役割に分かれているか、②令和7年(2025年)と令和8年(2026年)上半期に検挙された人のうち、どの役割が多かったか、③なぜ「受け子」ばかりが捕まるのか、④電話を受けた側、誘われた側、その家族がそれぞれ何をすればよいか、をまとめます。

特殊詐欺とは:いまの規模

警察庁は特殊詐欺を「被害者に電話やSNS等を通じて、対面することなく信頼させ又は関係を深めて信用させ、指定した預貯金口座への振込その他の方法により、現金等をだまし取る犯罪」(脅し取る恐喝や、隙を見てキャッシュカード等を盗む窃盗も含む)の総称と説明しています。令和7年の認知件数は27,832件、被害額は1,423.1億円(確定値)で、どちらも前の年より大きく増えました。

令和8年上半期(1〜6月・暫定値)は、認知件数22,031件、被害額1,816.2億円で、前年同期より件数が18.3%、被害額が51.7%増えています。ただし警察庁は令和8年から、SNS型投資・ロマンス詐欺を特殊詐欺の一手口に含め、警察官等をかたる「ニセ警察詐欺」を独立した手口として数えるように整理しました。令和7年までの数字とは数え方が違う点に注意が必要です(読み方は2026年上半期の特殊詐欺 1,816億円の数字の読み方で詳しく説明しています)。

犯行グループの役割分担

令和3年版の警察白書は、特殊詐欺の犯行グループについて「中枢被疑者の下、『受け子』及び『出し子』と呼ばれる現場実行犯のほかに、被害金等の回収・運搬役、『受け子』等の指示役、リクルーター、犯行ツールの調達役等が役割を分担」していると書いています。平成26年版の警察白書は、電話をかける役を「架け子(かけこ)」、携帯電話や他人名義の口座を用意する役を「道具屋」と呼んでいます。警察の資料に出てくる役割を並べると、次のとおりです。

役割警察の資料での説明
中枢被疑者(主犯)犯行グループの中枢にいる主犯(グループリーダー・首謀者等)
架け子(かけ子)電話を繰り返しかけて被害者をだます役。統計では「架け子・打ち子」とまとめて数えられています
受け子自宅等に現金等を受け取りに行く役。キャッシュカードを受け取ることもある
出し子受け取ったキャッシュカードでATMから現金を引き出す役
見張り役出し子・受け子を見張る役
指示役受け子・出し子・見張り役に指示を出す役
回収・運搬役だまし取った現金等を回収して運ぶ役
リクルーター実行役を集める役
道具の調達役(道具屋)電話や口座などの犯行ツールを用意する役。令和3年版白書は「犯行拠点を用意する者も含む」としています

令和3年版の白書は、それぞれの役割の者が「お互いの素性を明かさず連絡の痕跡を残さないようにするなど、徹底した秘匿工作を行っている」とも書いています。また令和8年の統計からは、「送金役」「暗号資産送信役」という役割の集計も新しく始まりました(役割の中身の説明は資料にありません)。

最近の警察は、こうしたグループを「匿名・流動型犯罪グループ」と呼んでいます。令和6年版の警察白書は、これを「匿名性の高いスキームによって実行犯等の人的資源を確保し、離合集散を繰り返しながら特殊詐欺等を敢行」する集団と説明し、「SNS等を介して募集した若年者等を実行犯として使い捨てる、指示役の存在があります」と書いています。

数字で見る:検挙されるのは末端が中心

警察庁の統計から、検挙された人を役割別に並べました。令和8年上半期はSNS型投資・ロマンス詐欺を含み、数え方が令和7年と違うため、割合の目安として見てください。

役割令和7年(確定値)令和8年上半期(暫定値)
受け子1,379人(59.0%)730人(52.9%)
出し子301人(12.9%)156人(11.3%)
架け子・打ち子95人(4.1%)97人(7.0%)
現金回収・運搬156人(6.7%)84人(6.1%)
主犯(グループリーダー・首謀者等)69人(3.0%)78人(5.6%)
リクルーター165人(7.1%)62人(4.5%)
出し子・受け子・見張りの指示役41人(1.8%)36人(2.6%)
出し子・受け子の見張り役26人(1.1%)30人(2.2%)
道具調達34人(1.5%)23人(1.7%)
送金役(集計なし)36人(2.6%)
暗号資産送信役(集計なし)3人(0.2%)
その他72人(3.1%)46人(3.3%)
合計2,338人1,381人

令和7年は、受け子・出し子・見張り役を合わせると1,706人で、検挙された人の7割を超えます。被害者と直接会ったりATMに行ったりする現場の役割です。令和8年上半期も受け子が半分以上を占め、最も多い役割であることは変わっていません。一方で、主犯の検挙は78人と前年同期より16人増え、割合も5.6%に上がりました。

少年・外国人・暴力団構成員等

  • 少年:令和7年は468人(全体の20.0%)。警察庁は、受け子に占める少年の割合が25.6%で「受け子のおよそ4人に1人が少年」としています。令和8年上半期は211人(15.3%)で、受け子に占める割合は19.3%、「受け子の約5人に1人が少年」です。
  • 外国人:令和8年上半期は216人(15.6%)で、前年同期より101人増えました。そのうち119人(55.1%)が受け子です。
  • 暴力団構成員等:令和7年は414人(17.7%)、令和8年上半期は110人(8.0%)でした。役割ごとの偏りについて、令和3年版の白書は令和2年の検挙で、暴力団構成員等の割合が受け子で8.6%、出し子で11.6%だったのに対し、中枢被疑者では45.0%、指示役では46.0%、リクルーターでは34.2%だったとし、「暴力団が主導的な立場で特殊詐欺に深く関与している実態がうかがえる」と書いています。

電話をかける拠点の摘発

電話をかけたりメールを送ったりする拠点(警察は「架け場」と呼んでいます)は、令和7年に国内で11か所、令和8年上半期に8か所が摘発されました。海外の拠点を外国の当局が摘発し、日本に移送するなどして検挙した人は、令和7年に54人、令和8年上半期に37人です。令和8年上半期の主な検挙事件としては、カンボジア(令和7年11月)とインドネシア(令和8年3月)の当局がそれぞれ現地の拠点を摘発して日本人計13人ずつを確保し、日本へ移送されたあとニセ警察詐欺の事件で逮捕された例が挙げられています。

なぜ受け子は捕まりやすいのか

愛媛県警察は、受け子を「詐欺の犯人グループにとっては、いつ警察に捕まっても問題ない、使い捨ての道具のような存在」と説明しています。警察庁が各都道府県警察への調査をもとにまとめた資料(令和5年7月)からは、少年が「闇バイト」で使い捨てにされる流れが読み取れます。

  1. 応募:SNSで「高額報酬」などと検索して応募する。先輩・友人に誘われる例もある。
  2. 秘匿アプリへの誘導:Telegram、Signal など、匿名性の高いアプリを入れさせられる。
  3. 個人情報の送信:「登録に必要」などと言われ、身分証明書や顔写真を送ってしまう。家族構成や勤務先まで聞かれた例もある。
  4. 脅迫:仕事が犯罪だと分かって断ろうとすると、送った個人情報をもとに本人や家族を脅される。
  5. 逮捕まで使われる:資料は「脅し等により、逮捕されるまで使い続けられることが特徴です」と書いています。約束の報酬が一度も払われないまま捕まった例や、グループに密告されて逮捕された例も載っています。

受け子等として検挙された人がどう誘われたかを見ると、令和7年は2,228人のうちSNSからの応募が845人(37.9%)、知人等の紹介が827人(37.1%)でした。令和8年上半期は1,267人のうち、SNSからの応募が502人(39.6%)、知人等の紹介が417人(32.9%)です。上の人間が見えない仕組みのなかで、顔をさらして現金を受け取る役だけが何度も現場に出されることになります。平成26年版の警察白書も「末端被疑者の検挙のみならず、突き上げ捜査を通じた組織の壊滅が課題」としています。

「知らなかった」「受け取っただけ」では済まない

刑法の詐欺罪(第246条)は「人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の拘禁刑に処する」、窃盗罪(第235条)は「十年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金」、恐喝罪(第249条)は「十年以下の拘禁刑」と定めています。さらに第60条は「二人以上共同して犯罪を実行した者は、すべて正犯とする」としています。令和6年版の警察白書には、実行犯の募集を投稿したメンバーを職業安定法違反で検挙し、さらに募集に応じた実行犯による詐欺等の共犯としても検挙した取組が紹介されています。電話をかけていない人も、募集しただけの人も、罪に問われうるということです。警視庁は、逮捕のあとに待っているのは刑罰と「被害者への損害賠償」だと呼びかけています。

電話を受けた側ができること

役割分担を知っておくと、電話の流れの中で「次に誰かが来る」段階に気づけます。警察庁は、キャッシュカードや通帳をだまし取る「預貯金詐欺」、カードを用意させて隙を見て盗む「キャッシュカード詐欺盗」、警察官をかたって捜査名目で現金等をだまし取る「ニセ警察詐欺」などの手口を挙げ、「犯人と話をしない」ことを対策の基本にしています。電話の相手が家族・警察・銀行・役所を名乗っていても、次のように動いてください。

  1. 「取りに行く」「預かりに行く」と言われたら電話を切る。現金やキャッシュカードを渡す段階は、受け子が来る段階です(手口の詳細はキャッシュカードを「預かりに行く」電話)。
  2. かかってきた番号にかけ直さない。家族には、自分の電話帳に入っている番号へかけて確かめます。警察や銀行を名乗られたら、自分で調べた代表番号にかけます(警察を名乗る電話の例は偽警察からの「口座が凍結」電話)。表示された番号の形だけでは本物かどうか決められません(オレオレ詐欺の番号に特徴はあるか)。
  3. 家を訪ねてきた人に、現金・キャッシュカード・暗証番号を渡さない。
  4. 迷ったら警察相談専用電話 #9110 へ。東京都内は警視庁総合相談センター(#9110 または 03-3501-0110)でも受け付けています。相談先の使い分けは迷惑電話の相談先の使い分けにまとめています。
  5. かかってきた番号を番号検索で調べる。ほかの人の口コミがあれば判断材料になります。やり取りの内容は被害の整理メモの形で残しておくと、相談のときに役立ちます。

「割のいいバイト」に誘われた側ができること

警察庁は「高額」「即日即金」「ホワイト案件」など「楽で、簡単、高収入」を強調する募集や、シグナルやテレグラムのような匿名性の高いアプリへ誘導する募集を「犯罪に関わる危険性が大」だとしています。同じページで「警察は相談を受けたあなたやあなたの家族を確実に保護します」と書いています。応募してしまった、身分証を送ってしまったという場合も、ひとりで抱えずに #9110 か近くの警察署へ相談してください。応募後に取るべき行動は闇バイトの募集に応じてしまったときにすべきことにまとめています。

家族や学校の立場では、警察庁の資料が、少年から「先輩、知人等から『簡単に儲かるバイトがある』と誘いを受けた」「不審な高額バイトに応募してしまった」といった話を聞いたら、ためらわず早めに警察(少年相談窓口や少年サポートセンター等)へ相談するよう少年に伝えてほしいと呼びかけています。

よくある質問

電話をかけてきた人が家に来ることはありますか

警察の資料では、電話をかける役と受け取りに行く役は別の役割として分けられています。電話の相手が、別の人に現金やカードを取りに行かせると言ったら、受け子が来る段階だと考えて電話を切り、自分で調べた番号に確認してください。

受け子は報酬をもらえるのですか

警察庁の資料には、報酬が一度も支払われないまま捕まった例や、グループに密告されて逮捕された例が載っています。約束の報酬があてにならないうえ、検挙されれば刑罰と損害賠償を負うことになります。

主犯は捕まらないのですか

主犯の検挙は令和7年に69人、令和8年上半期に78人でした。受け子に比べると少ないものの、令和8年上半期の主犯の検挙は前年同期より16人増えています。

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参考

この記事は2026年9月に書き、2026年10月に最新の公開情報で見直しました。

※令和7年(2025年1〜12月)の数字は確定値、令和8年上半期(2026年1〜6月)の数字は暫定値です。令和8年から警察庁はSNS型投資・ロマンス詐欺を特殊詐欺に含め、検挙には組織的犯罪処罰法違反も含めているため、令和7年の数字と単純には比べられません。暴力団構成員等の役割別の割合は令和2年の検挙についての数字です。「受け子等」は、検挙人員から主犯と指示役を除いた人を指します。役割の名前や分け方は資料によって異なり、すべての事件がこの形とは限りません。

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