この記事では、警察庁が2026年7月31日に公表した「令和8年上半期における特殊詐欺の認知・検挙状況等について(暫定値)」をもとに、どの手口で被害額が増えたのか、2026年から「特殊詐欺」の範囲が変わったことで数字をどう読むべきか、そして電話で狙われる手口と着信への具体的な備えを整理します。2026年1月から6月までの特殊詐欺は、認知件数22,031件、被害総額1,816.2億円でした。前年の同じ時期と比べて、件数は3,408件(18.3%)、被害額は618.8億円(51.7%)増えています。
「詐欺の電話は減ったのではないか」と感じている方もいるかもしれませんが、公表された数字はその逆を示しています。しかも増え方には、はっきりした偏りがあります。
2026年から「特殊詐欺」の範囲が変わった
数字を読む前に押さえておきたいのが、集計の枠組みの変更です。警察庁は2026年(令和8年)から手口の整理を見直し、次の2点を変えました。
- SNS型投資詐欺・SNS型ロマンス詐欺を、特殊詐欺の手口の一つに入れた(2025年までは特殊詐欺とは別に集計)
- ニセ警察詐欺を独立した手口にした(2025年まではオレオレ詐欺などの中に含まれていた)
このため、2026年の「特殊詐欺」の数字は、2025年以前に報道された「特殊詐欺の被害額」とそのまま比べることはできません。なお警察庁の資料では、2026年から独立したニセ警察詐欺やSNS型投資詐欺にも前年同期との差が示されており、上の「前年同期比」は同じ手口の分け方で並べた比較として読めます。
1日あたり10.0億円が失われている
被害総額1,816.2億円を半年の日数(181日)で割ると、1日あたり10.0億円になります。警察庁の資料にもこの数字がそのまま示されています。
ここで注目したいのは、件数の伸び(18.3%)より被害額の伸び(51.7%)のほうがはるかに大きいことです。件数の増え方以上に金額が増えているということは、1件あたりの被害が重くなっていることを意味します。「かかってくる本数が増えた」だけの話ではなく、「一度つかまると失う額が大きい」段階に入っている、ということです。
なお認知件数とは、警察が届出や相談によって把握した件数です。被害にあっても警察に届け出がなければ、この22,031件には入りません。
年間で見ると:2025年の確定値と2026年7月末までの数字
半年の数字だけでは規模がつかみにくいので、年間の数字も並べます。
| 期間 | 区分 | 認知件数 | 被害額 |
|---|---|---|---|
| 2025年(確定値) | 特殊詐欺(旧来の範囲) | 27,832件 | 1,423.1億円 |
| 2025年(確定値) | SNS型投資・ロマンス詐欺(当時は別集計) | 15,168件 | 1,834.3億円 |
| 2026年1〜6月(暫定値) | 特殊詐欺(新しい範囲) | 22,031件 | 1,816.2億円 |
| 2026年1〜7月(暫定値) | 特殊詐欺(新しい範囲) | 26,051件 | 2,108.1億円 |
2025年の旧来の特殊詐欺は、前年より被害額が704.3億円(98.0%)増えていました。警察庁は、その年のオレオレ詐欺14,489件のうち10,859件(74.9%)が警察官などをかたるニセ警察詐欺だったとしています。2026年は7月末の時点で被害額が2,108.1億円となり、すでに2,000億円を超えています。
手口別に見ると、上位2つで被害額の7割
2026年上半期の手口別の内訳は次のとおりです。カッコ内は前年同期比、そのあとが既遂1件あたりの被害額です。
- SNS型投資詐欺… 797.9億円(+444.9億円)/1件あたり1,362.5万円
- ニセ警察詐欺… 507.9億円(+108.9億円)/1件あたり1,163.9万円
- SNS型ロマンス詐欺… 246.6億円(+6.3億円)/1件あたり984.1万円
- 架空料金請求詐欺… 74.6億円(+6.1億円)/1件あたり250.2万円
- オレオレ詐欺… 68.9億円(+5.5億円)/1件あたり380.7万円
- その他… 120.3億円(+47.0億円)/1件あたり293.2万円
SNS型投資詐欺とニセ警察詐欺の2つだけで1,305.8億円、全体の7割を超えます。増加額で見ても、全体の増加618.8億円のうち444.9億円がSNS型投資詐欺によるものです。SNS型投資詐欺は認知件数も5,893件と、前年同期の約2倍(+105.1%)になりました。被害額が増えた原因の大半は、この1つの手口です。
逆に、以前から名前の知られているオレオレ詐欺は68.9億円(+5.5億円)で、増加分としては小さい部類です。ニセ警察詐欺は件数が4,466件と前年同期より296件減った一方で、被害額は108.9億円増えています。
1件あたり1,000万円を超える手口が2つある
既遂1件あたりの被害額が1,000万円を超えているのは、SNS型投資詐欺(1,362.5万円)とニセ警察詐欺(1,163.9万円)の2つです。オレオレ詐欺の380.7万円と比べると、約3〜3.6倍になります。
警察庁はSNS型投資・ロマンス詐欺を「交信を重ねるなどして関係を深めて信用させ」る詐欺と定義しています。1回の連絡で終わらず、やり取りを重ねてから金額を上げていく形の手口ほど、1件あたりの被害が大きくなっています。
いっぽう、件数として身近な架空料金請求詐欺は1件あたり250.2万円です。金額は相対的に小さくても、認知件数は3,115件あり、未納料金をかたる架空請求は固定電話にもSMSにも届くため、遭遇する機会そのものが多い手口です。
還付金詐欺は件数・被害額とも前年より減少
「税金などが戻ってくる」と持ちかける還付金詐欺は、2026年上半期に1,489件(-311件)、被害額33.1億円(-1.2億円)でした。警察庁はこの手口を「税金還付等に必要な手続きを装って被害者にATMを操作させ」る手口と説明しています。電話で「ATMへ行ってください」と言われたら、この手口を疑ってください。
誰が被害にあっているか
警察庁は、被害は幅広い年代に及んでいるものの、被害額で見ると50代以上が約8割を占めるとしています。65歳以上の高齢者の被害は9,230件・817.8億円で、法人被害を除いた認知件数の42.2%です。一方で、2025年の確定値ではニセ警察詐欺の認知件数は30代が2,239件で最も多く、次いで20代の1,718件でした。「高齢者だけが狙われる」わけではありません。
電話はどれくらい使われているか
電話番号を調べる立場から見て、特に押さえておきたい数字は次のとおりです。
- ニセ警察詐欺の最初の接触は98.2%が電話(2026年上半期・認知件数ベース)
- 予兆電話は半年で119,778件。予兆電話とは、住所・氏名・資産・利用している金融機関などを探る、特殊詐欺が疑われる電話として警察が把握したものです(前年同期より27.1%減)
- 2025年に特殊詐欺に使われた電話番号の約75.5%が国際電話番号(+1や+44など、日本の+81以外の国コードで始まる番号)
- 2026年上半期に、犯行に使われた固定電話番号52件、050IP電話番号512件が利用停止された
いっぽう、SNS型投資詐欺やSNS型ロマンス詐欺は入口がSNSで、警察庁によるとSNS型投資詐欺の最初の接触手段はバナー等の広告が最多です。電話はあとから登場するため、番号を調べたときには、すでにやり取りが始まっていることがあります。
ニセ警察詐欺では、警察を名乗る着信が使われます。表示された番号は発信者の正体を証明しません。実在する組織の番号が表示されていても、それだけでは本物の確認になりません。
着信への備えと、かかってきたときの行動
警察庁は「何よりも『犯人と話をしない』ことが大切」としています。事前にできる備えは次のとおりです。
- 固定電話の国際電話を止める:海外と固定電話で話すことがなければ、「国際電話不取扱受付センター」(0120-210-364)に申し込むと、固定電話の国際電話の利用を休止できます。手続きが難しければ最寄りの警察署にも相談できます。
- 携帯電話の着信設定を見直す:非通知や電話帳に登録していない番号からの着信を拒否する、国際電話の着信を規制できるアプリ(警察庁推奨アプリなど)を使う。
- 留守番電話を使う:録音されたメッセージで相手を確かめてから、かけ直すかを決める。
実際にかかってきたら、かかってきた番号にかけ直さず、自分で調べた公式の番号にかけ直して確かめてください。お金、ATMの操作、口座の話が出たら、その時点で電話を切ってください。心当たりのない番号は番号検索で確認し、お金の話が出たら消費者ホットライン188、犯罪の疑いがあれば警察相談専用電話#9110に相談してください。たった今被害にあったなど緊急のときは、110番に通報してください。被害にあったときの整理のしかたは被害整理メモ・相談窓口にまとめています。
参考
この記事は2026年9月に、以下の公開情報をもとに書きました。
- 警察庁・SOS47「令和8年上半期における特殊詐欺の認知・検挙状況等について(暫定値)」(2026年7月31日公表)
https://www.npa.go.jp/bureau/safetylife/sos47/new-topics/260731/01.html - 警察庁 同上 資料1(PDF)
https://www.npa.go.jp/bureau/safetylife/sos47/assets/img/new-topics/detail/260731/01/01.pdf - 警察庁「令和7年における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について(確定値)」(2026年5月22日)
https://www.npa.go.jp/bureau/criminal/souni/tokusyusagi/hurikomesagi_toukei2025.pdf - 警察庁「令和8年7月末における特殊詐欺の認知・検挙状況等について(暫定値)」
https://www.npa.go.jp/bureau/criminal/souni/tokusyusagi/kouhou.pdf - 警察庁・SOS47「手口一覧と今日からできる対策」
https://www.npa.go.jp/bureau/safetylife/sos47/case/ - 警察庁・SOS47「みんなでとめよう!!国際電話詐欺 #みんとめ」
https://www.npa.go.jp/bureau/safetylife/sos47/case/international-phone/ - 警視庁「相談ホットラインのご案内」(2026年9月18日更新)
https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/sodan/madoguchi/sogo.html
※2026年の数字は警察庁の暫定値で、今後の確定値で変わることがあります。2026年から特殊詐欺にSNS型投資・ロマンス詐欺が含まれ、ニセ警察詐欺が独立した手口になったため、2025年以前の「特殊詐欺」の数字とは範囲が異なります。「1件あたり」はいずれも既遂1件あたりの被害額です。認知件数の説明と対処のしかたの記述は、でんわチェックによるものです。