「オレオレ詐欺」「振り込め詐欺」「特殊詐欺」、そしていま最も被害が大きい「ニセ警察詐欺」。電話を使った詐欺の呼び名は、20年あまりで何度も変わってきました。この記事では、警察白書・犯罪白書・警察庁の資料で確かめられる範囲で、いつ・なぜ呼び名が変わったのか、お金の受け取り方や使われる電話番号がどう変わってきたかを年表の形でまとめ、令和7年(2025年)の確定値と令和8年(2026年)上半期の暫定値で「いま」を確かめます。最後に、変わらない身の守り方を整理しています。
呼び名と対策の移り変わり(早見表)
| 時期 | 出来事 |
|---|---|
| 平成15年(2003年)5月以降 | 親族を装う電話詐欺が目立ち始める(「オレ、オレ」と名乗る手口から、一般に「オレオレ詐欺」と呼ばれた) |
| 平成16年(2004年) | 警察庁がオレオレ詐欺・架空(料金)請求詐欺・融資保証金詐欺を「振り込め詐欺」と総称。この頃すでに警察官をかたる手口の増加が白書に記されている |
| 平成17年(2005年)4月 | 携帯電話不正利用防止法が成立(平成18年4月全面施行) |
| 平成18年(2006年)6月 | 市区町村の職員などを装いATMを操作させる「還付金等詐欺」が初めて認知される |
| 平成19年(2007年)10月 | 振り込め詐欺に還付金詐欺を追加 |
| 平成20年(2008年)6月・7月 | 警察庁に「振り込め詐欺対策室」を設置/「振り込め詐欺撲滅アクションプラン」を公表。携帯電話不正利用防止法の改正(同年12月施行) |
| 平成21年(2009年)頃 | 「受け子」が現金やキャッシュカードを直接受け取りに来る手口が目立ち始める |
| 平成24年(2012年)版 警察白書 | 「振り込め詐欺を始めとする特殊詐欺」という見出しで、振り込め詐欺以外の手口も含めて扱う |
| 令和元年(2019年) | 「オレオレ詐欺等対策プラン」決定。犯行に使われた固定電話番号の利用停止が始まる |
| 令和2年(2020年) | 統計上、「預貯金詐欺」をオレオレ詐欺から分けて集計 |
| 令和5年(2023年)7月以降 | 国際電話番号を使った特殊詐欺が急増 |
| 令和7年(2025年) | 「ニセ警察詐欺」の統計を開始 |
| 令和8年(2026年) | ニセ警察詐欺を独立した手口に。SNS型投資詐欺・SNS型ロマンス詐欺も特殊詐欺の一手口として、全体を「特殊詐欺」と呼ぶ整理に |
「オレオレ詐欺」の登場(平成15〜16年)
平成17年版警察白書によると、親族を装う電話詐欺は平成15年5月以降に発生が目立ってきました。「オレオレ詐欺」という呼び名は、電話口で突然「ばあちゃん、オレ、オレ、助けてくれ。金が必要なんだ」などと言う手口から、一般にそう呼ばれるようになったものだと白書は説明しています。
平成16年のオレオレ詐欺(同じ手口の恐喝を含む)の認知件数は1万4,874件(前年比8,239件増)、被害総額は約191億3,000万円でした。名目で最も多かったのは交通事故の示談金(8,832件)で、被害者の77%が女性でした。
注目したいのは、同じ白書のコラムがすでに「警察官をかたる手口」が増えていると書いていることです。「A警察署交通課の者だが、息子さんが車で人をひいてしまい…」と話し、弁護士役などを登場させて示談金を振り込ませる型で、警察は当時から「所属する警察署を聞き、いったん電話を切ってからかけ直す」よう呼びかけていました。警察を名乗る詐欺は、20年前からある古い手口なのです。
「振り込め詐欺」とまとめて呼ぶように(平成16年〜)
犯罪白書(令和3年版)によると、警察庁は平成16年に、オレオレ詐欺・架空料金請求詐欺・融資保証金詐欺の3つを「振り込め詐欺」と総称し、対策を強めました。平成16年の振り込め詐欺(振り込め恐喝を含む)は、認知件数2万5,667件、被害総額約283億8,000万円でした。
平成18年6月には、市区町村の職員などを装い、医療費の還付などの手続だと思わせてATMを操作させ、口座間送金で振り込ませる手口が初めて認知されました(平成24年版警察白書)。これが平成19年10月に振り込め詐欺へ加えられた還付金詐欺です。平成20年6月には警察庁に「振り込め詐欺対策室」が置かれ、同年7月には警察庁と法務省が「振り込め詐欺撲滅アクションプラン」を公表しています。
この時期は、犯人が使う道具をふさぐ法整備も進みました。平成17年4月に携帯電話不正利用防止法が成立し(平成18年4月全面施行)、犯罪に使われた携帯電話について警察署長が事業者に契約者の確認を求められる規定などが設けられました。平成20年6月の改正(同年12月施行)では、レンタル携帯電話の事業者にも本人確認と記録の保存が義務付けられています。この法律は令和8年にも改正されており、内容は携帯電話不正利用防止法の2026年改正で解説しています。
「振り込ませる」から「受け取りに来る」へ
口座や携帯電話への対策が進むと、手口も変わりました。平成29年版警察白書は、振り込め詐欺の認知件数が平成21年には平成16年の約3分の1まで減ったと記しています。一方で犯罪白書は、金融機関を経由した手口への対策の影響もあり、平成21年頃から「受け子」が現金やキャッシュカードを直接受け取りに来る手口が目立つようになったと説明しています。電話をかける「架け子」、受け取りに行く「受け子」といった役割分担については特殊詐欺グループの役割分担で詳しく扱っています。
さらに平成22年頃からは、金融商品取引名目など振り込め詐欺に当てはまらない手口が多発し、平成28年にはコンビニで電子マネーを買わせてIDを聞き出す手口の被害も増えていました(平成29年版警察白書)。
「特殊詐欺」という総称
振り込め詐欺に当てはまらない手口まで含めた、より広い総称が「特殊詐欺」です。平成24年版警察白書は「振り込め詐欺を始めとする特殊詐欺」という見出しで、特殊詐欺の「代表的なもの」が振り込め詐欺だと説明し、未公開株・社債や外国通貨等の売買勧誘をめぐる詐欺など、従来の類型に当てはまらない特殊詐欺が全国的に多発していると記しています。つまり振り込め詐欺は特殊詐欺の一部という関係です。
犯罪白書によると、特殊詐欺の認知件数は平成21年に大きく減って1万件を下回ったあと、平成23年から増え続け、平成29年には1万8,212件に達しました。警察庁の令和2年の資料では、被害額が最も大きかったのは平成26年の565.5億円(同資料では「過去最高」)です。ただし後で見るとおり、令和7年の被害額はこれを大きく上回りました。
使われる電話番号の移り変わり
呼び名と並んで、犯人が使う電話番号も対策が進むたびに別の種類へ移ってきました。
- 携帯電話: 他人名義・架空名義の携帯電話が悪用され、平成17年に携帯電話不正利用防止法ができた
- 固定電話の番号: 電話転送サービスを悪用し、犯人の携帯電話などから相手に固定電話の番号を表示させてかける手法が多用されるようになった(犯罪白書)。平成28年12月には、警視庁の情報提供を受けた通信事業者が固定電話の約5,900番号を解約し(平成29年版警察白書)、令和元年からは警察の要請で犯行に使われた固定電話番号を止める対策が進められている
- 050のIP電話番号: 令和8年上半期には、固定電話番号52件に対し、050IP電話番号512件が利用停止された
- 国際電話番号: 令和5年7月以降、「+」から始まる国際電話番号を使った特殊詐欺が急増している
このため、「市外局番の番号だから安心」「表示された番号が警察署の番号と同じだから本物」とは言えません。表示番号の偽装については番号詐称:表示された番号は本物の証明になりませんで、国際電話の止め方は国際電話詐欺:+1・+44・+86からの着信と止め方で解説しています。
分類はさらに細かく(令和元年〜令和8年)
令和元年6月、政府の犯罪対策閣僚会議は「オレオレ詐欺等対策プラン」を決定しました。統計の分け方も変わり、令和2年からは「預貯金詐欺」をオレオレ詐欺から分けて集計しています(前年まではオレオレ詐欺に含まれていました)。同じ令和2年の資料では、オレオレ詐欺・預貯金詐欺・キャッシュカード詐欺盗の3つを合わせて「オレオレ型特殊詐欺」と総称しています。
令和7年からは、警察官などをかたり「捜査(優先調査)」名目で現金などをだまし取る「ニセ警察詐欺」の統計が始まりました。警察庁によると、この手口は令和6年後半頃から被害の増加が目立ち、令和7年のオレオレ詐欺14,489件のうち10,859件(74.9%)がニセ警察詐欺でした。平成16年頃の「警察官をかたる手口」が家族の事故の示談金を口実にしていたのに対し、いまの型は電話を受けた本人を「捜査の対象」にしてお金を出させる点が違います。話の流れは警察を名乗る「口座が凍結される」電話で紹介しています。
そして令和8年からは、警察庁がニセ警察詐欺を独立した手口として位置付け、SNS型投資詐欺・SNS型ロマンス詐欺も特殊詐欺の一手口に加えて、全体を「特殊詐欺」と呼ぶことにしました。令和7年まではSNS型投資・ロマンス詐欺は特殊詐欺とは別に集計されていたため、令和8年以降の「特殊詐欺」の数字は、それ以前と範囲が違う点に注意が必要です。
数字で見る「いま」(令和7年・令和8年上半期)
警察庁の資料にある、令和7年までの特殊詐欺(SNS型投資・ロマンス詐欺を含まない)の推移は次のとおりです。
| 年 | 認知件数 | 被害額 |
|---|---|---|
| 平成28年(2016年) | 14,154件 | 407.7億円 |
| 令和2年(2020年) | 13,550件 | 285.2億円 |
| 令和6年(2024年) | 21,043件 | 718.8億円 |
| 令和7年(2025年) | 27,832件 | 1,423.1億円 |
令和7年の確定値(令和8年5月公表)のポイントです。
- 認知件数は27,832件(前年比32.3%増)、被害額は1,423.1億円(同98.0%増)
- ニセ警察詐欺は11,014件・1,005.0億円で、件数の39.6%
- 犯人が最初に接触した手段は電話が78.8%。オレオレ型特殊詐欺と還付金詐欺では9割以上が電話
- オレオレ詐欺の認知件数のうち20代・30代が27.9%(前年比14.4ポイント増)
- 住所や資産などを探る「予兆電話」は331,653件
令和8年7月に公表された令和8年上半期(1〜6月)の暫定値は、新しい分類(SNS型を含む)で次のとおりです。
| 項目 | 認知件数 | 被害額 |
|---|---|---|
| 特殊詐欺(全体) | 22,031件(前年同期比18.3%増) | 1,816.2億円(同51.7%増) |
| SNS型投資詐欺 | 5,893件 | 797.9億円 |
| ニセ警察詐欺 | 4,466件 | 507.9億円 |
| SNS型ロマンス詐欺 | 2,509件 | 246.6億円 |
| オレオレ詐欺 | 1,898件 | 68.9億円 |
上半期のニセ警察詐欺は件数こそ前年同期より6.2%減りましたが、被害額は27.3%増え、既遂1件あたりの被害額は1,163.9万円でした。ニセ警察詐欺の98.2%は電話が最初の接触で、そのうち携帯電話からが58.8%です。予兆電話は119,778件(前年同期比27.1%減)でした。また65歳以上の被害は、法人を除いた件数の42.2%でした。警察庁は、ニセ警察詐欺の増加で高齢者だけでなく20代・30代を含む幅広い年代の被害が増えているとして、「犯人側と接触してしまえば、誰もがだまされるおそれがある」としています。上半期の数字の詳しい読み方は2026年上半期の特殊詐欺の統計にまとめています。
よくある質問
振り込め詐欺と特殊詐欺は何が違う?
振り込め詐欺は、オレオレ詐欺・架空料金請求詐欺・融資保証金詐欺・還付金詐欺をまとめた呼び名で、特殊詐欺はそれを含むもっと広い総称です。いまは振込以外の受け取り方も多いため、統計は「特殊詐欺」で集計されています。
ニセ警察詐欺とオレオレ詐欺は別物?
令和7年の統計では、ニセ警察詐欺の多くがオレオレ詐欺の中に数えられていました。令和8年からは独立した手口として別に集計されています。
呼び名が変わっても、身を守る方法は同じ
20年あまりの変化を見ると、名目(事故の示談金、還付金、有料サイトの利用料、捜査など)やお金の受け取り方(振込→受け取りに来る→電子マネー→暗号資産など)は変わっても、「電話でお金の話をして、急がせる」という入口はほとんど変わっていません。警察庁の特殊詐欺対策ページ(SOS47)は、何よりも「犯人と話をしない」ことが大切としています。次のように対応してください。
- 電話でお金の話が出たら、いったん切る。その場で約束しない・操作しない
- 表示された番号や相手が言う番号にかけ直さない。家族には普段の番号へ、警察を名乗る電話なら自分で調べた最寄りの警察署へかけ直して、本物か確認する
- 固定電話は番号表示・非通知拒否サービスを検討し、国際電話を使わないなら「国際電話不取扱受付センター」への申込みで、国際電話番号からの発着信を無償で休止できる
- 携帯電話は、知らない番号の着信拒否や、国際電話・詐欺電話を遮断する対策アプリを使う(警察庁は一定の基準を満たすアプリを「警察庁推奨アプリ」として認定する制度を始め、令和8年3月に第1弾として2つのアプリを認定している)
- 迷ったら警察相談専用電話「#9110」、契約や請求のトラブルは消費者ホットライン「188」へ相談する。お金を渡してしまった・今まさに受け子が来ようとしている場合は110番
知らない番号からの着信は、出る前に番号検索で口コミを確認できます。被害に遭ったかもしれないときは被害の記録メモで日時・番号・話した内容を整理してから相談してください。
あわせて読みたい
参考
この記事は2026年9月に書き、2026年10月に最新の公開情報で見直しました。
- 警察庁「平成17年版 警察白書 7 振り込め詐欺・恐喝」
https://www.npa.go.jp/hakusyo/h17/hakusho/h17/html/G3010700.html - 警察庁「平成24年版 警察白書 3 振り込め詐欺を始めとする特殊詐欺」
https://www.npa.go.jp/hakusyo/h24/honbun/html/o2130000.html - 警察庁「平成29年版 警察白書 トピックスIII 特殊詐欺の手口の変遷と警察の取組」
https://www.npa.go.jp/hakusyo/h29/honbun/html/tt300000.html - 法務省「令和3年版 犯罪白書 コラム9 特殊詐欺撲滅に向けた官民の取組」
https://hakusyo1.moj.go.jp/jp/68/nfm/n68_2_8_3_1_1_09.html - 法務省「令和3年版 犯罪白書 第8編第3章第1節」
https://hakusyo1.moj.go.jp/jp/68/nfm/n68_2_8_3_1_1.html - 警察庁「令和2年における特殊詐欺の認知・検挙状況等について(確定値版)」
https://www.npa.go.jp/bureau/criminal/souni/tokusyusagi/tokushusagi_toukei2020.pdf - 警察庁「令和7年における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について(確定値)」(令和8年5月22日)
https://www.npa.go.jp/bureau/criminal/souni/tokusyusagi/hurikomesagi_toukei2025.pdf - 警察庁「令和8年上半期における特殊詐欺の認知・検挙状況等について(暫定値)」(令和8年7月30日)
https://www.npa.go.jp/bureau/criminal/souni/tokusyusagi/hurikomesagi_toukei2026.pdf - 警察庁SOS47「オレオレ詐欺」
https://www.npa.go.jp/bureau/safetylife/sos47/case/oreore/
※平成16年の数字は平成17年版警察白書、令和7年の数字は警察庁が令和8年5月22日に公表した確定値、令和8年上半期の数字は同年7月30日に公表された暫定値で、今後変わることがあります。令和7年までの「特殊詐欺」にはSNS型投資・ロマンス詐欺が含まれず、令和8年からは含まれるため、両者の件数・被害額は単純に比べられません。統計の手口の分け方は年によって変わっている(令和2年に預貯金詐欺を分離、令和7年にニセ警察詐欺の統計開始、令和8年に分類を整理)ため、年をまたいだ手口別の数字にも注意してください。「特殊詐欺」という言葉を警察が使い始めた正確な時期は、この記事では確認できた範囲(平成24年版警察白書で使用)のみを記載しています。