最終更新:2026年9月
特殊詐欺(オレオレ詐欺・還付金詐欺・警察官をかたる詐欺など)は、自宅の固定電話を入り口にすることが多く、高齢の家族が狙われやすい犯罪です。この記事では、警察庁の最新集計(令和8年上半期)で分かる高齢者の被害の大きさ、犯人が電話で使う決まり文句、そして家族が代わりに申し込める無料の対策(国際電話の利用休止・番号表示サービス)を、窓口の電話番号つきでまとめました。本人の注意だけに頼らず、家族と電話の環境の両面で防ぎましょう。
65歳以上の被害は被害総額の46%
警察庁が2026年7月31日に公表した令和8年上半期(1〜6月・暫定値)の集計では、特殊詐欺の認知件数は22,031件、被害額は1,816.2億円でした。このうち65歳以上の高齢者の被害は9,230件・817.8億円で、法人被害を除いた総認知件数の42.2%、被害総額の46.0%を占めています。
年代別では60代が被害額・認知件数ともに最多で、被害額でみると50代以上が約8割です。実在する警察官などをかたる「ニセ警察詐欺」は70代が最多で、犯人との最初の接触は、50代以下では携帯電話、60代以上では固定電話が半数以上でした。家族を装うオレオレ詐欺は1,898件・68.9億円、役所などを装う還付金詐欺は1,489件・33.1億円です。「うちは大丈夫」ではなく、家族に50代以上の人がいれば、一度対策を話し合っておく価値があります。
犯人が電話で使う決まり文句
手口を先に知っておくと、電話の途中で「これは聞いたことがある」と気付けます。警察庁の特殊詐欺対策ページ(SOS47)が紹介している例です。
- 息子・孫をかたる(オレオレ詐欺):最初に「風邪をひいて声が変わった」「携帯が壊れて番号が変わった」と言って信用させ、「お金が今すぐ必要」と振り込みを求めます。銀行で引き出す理由を聞かれたときの言い訳まで指示してくることがあり、お金を受け取りに来るのは「受け子」と呼ばれる犯人で、本物の子どもは来ません。
- 役所・年金事務所などをかたる(還付金詐欺):医療費の過払い金や未払いの年金が受け取れると言い、「払い戻しの期限は今日まで」と焦らせて携帯電話を持ってATMへ向かわせます。ATMでお金が返ってくることは絶対にありません。
- 警察官をかたる(ニセ警察詐欺):「あなたの口座が犯罪に利用されている」などと不安をあおり、「逮捕状」などの偽の書類を見せたり、SNSやビデオ通話に誘導したりします。警視庁は「警察官がSNSやビデオ通話で連絡を取ることはありません」と注意を呼びかけています。
本番の前に、住所・氏名・資産・取引している金融機関などを探る「予兆電話」がかかってくることもあります。また「無担保・低金利で融資可能」などと書いたハガキやSMSを送り、書かれた番号に電話させる手口もあるため、ハガキやSMSに書かれた連絡先には電話しないことも家族で共有しておきましょう。
国際電話番号からの着信を止める(無料・家族が代わりに申込可)
警察庁によると、令和5年7月以降、国際電話番号を使った特殊詐欺が急増しており、令和7年中に特殊詐欺に使われた電話番号の約75.5%が国際電話番号でした。「+1」「+44」のように「+」で始まり、日本の国番号「+81」以外が続く番号には注意が必要です。
海外と固定電話で話す用がなければ、国際電話不取扱受付センターに申し込むと、固定電話の国際電話の着信(または発着信)を休止できます。
- 費用:無料(紙の申込書を郵送する場合の郵送料のみ自己負担)
- 申込方法:Web、電話(0120-210-364・休止する固定電話からかける)、申込書の郵送の3通り
- 対象:03や06などで始まる10桁の固定電話(ひかり電話を含む)。携帯電話(070・080・090)と050のIP電話は対象外
- 家族による申込:名義人本人の了承があれば代理で申し込め、実家の親の電話を、住所が違う子どもが申し込むこともできます。あとから利用再開もできます
令和8年6月末時点で、この利用休止の手続きは約182万件行われています。携帯電話については、国際電話や詐欺電話の着信を遮断できるアプリを警察庁が「警察庁推奨アプリ」として認定する制度が始まり、令和8年3月に第1弾として2つのアプリが認定されました(同6月末で累計約147.6万ダウンロード)。
電話機・回線でできる対策
- 番号表示・非通知拒否を無料で使う:NTT東日本・NTT西日本では、70歳以上、または70歳以上の人と同居している契約者は、ナンバー・ディスプレイ(番号表示)とナンバー・リクエスト(非通知拒否)の月額料・工事費が無料になります(申込が必要・対応機器などの条件あり)。申込は NTT東日本 特殊詐欺対策ダイヤル 0120-722-455、NTT西日本 特殊詐欺対策ダイヤル 0120-931-965(午前9時〜午後5時、土日・年末年始を除く)。番号が見えれば、知らない番号・非通知には出ない習慣をつくれます。着信への向き合い方は知らない番号からの着信、折り返すべき?正しい対処法で解説しています。
- 常時留守番電話にする:知らない相手と直接話さない状態にしておき、用件のある人にはメッセージを残してもらいます。警察庁も、特殊詐欺対策では「何よりも『犯人と話をしない』ことが大切」としています。
- 防犯機能付き電話を使う:着信音が鳴る前に「この通話は防犯のために録音されます」などと自動で警告する機能や、通話を自動録音して後から聞き直せる機能があります。
- 狙われたら番号を変える:NTT東日本では、詐欺被害を受けた場合や受けるおそれがある場合、申し出により電話番号変更の工事費が無料になります。
防犯電話の購入補助は市区町村に確認を
警察庁は、防犯機能付き電話について「自治体によっては補助金などもあります」として、住んでいる自治体の情報を確認するよう案内しています。補助の有無・金額・対象年齢、無償の貸し出しがあるかは自治体と年度によって違うため、購入の前にお住まいの市区町村の防犯・消費生活の担当窓口に問い合わせてください。
家族でできる「決めごと」
- 「お金の話が出たら、いったん切る」を家族のルールにする:警察庁も「電話でお金の話が出たら、一旦電話を切り、すぐに家族などに相談しましょう」と呼びかけています。「番号が変わった」と言われても、前から知っている家族の番号にかけ直して本人か確かめます。
- 警察・役所を名乗られたら、自分で調べた番号にかけ直す:名乗られた部署や相手が教える番号ではなく、最寄りの警察署や役所の代表番号にかけて本物かを確認します。
- 正規の連絡先を電話機のそばに貼る:家族・銀行・役所・最寄りの警察署の本当の番号を大きく書いて貼っておきます。
- ATMの利用限度額を低くしておく:警察庁が還付金詐欺の対策として挙げている方法です。
- 手口の情報を共有し、声をかける:国民生活センターも、高齢者に多いトラブルの事例や手口の「情報」を集めることがとても有効だとしています。定期的に「最近こんな電話なかった?」と声をかけ、相談しやすい関係をつくります。
不審な電話があったら
あわてて対応せず、いったん電話を切ってから家族に相談してください。かかってきた番号は番号検索で口コミや公開情報を確認でき、被害整理メモで状況を整理して相談窓口を確認できます。相談先は警察相談専用電話 #9110、消費者ホットライン 188、お金を渡してしまった・今まさに受け取りに来ようとしているなど緊急の場合は110番です。
参考
この記事は2026年9月に、以下の公開情報をもとに書きました。
- 警察庁・SOS47「令和8年上半期における特殊詐欺の認知・検挙状況等について」(2026年7月31日公表・資料1・資料2を含む)
https://www.npa.go.jp/bureau/safetylife/sos47/new-topics/260731/01.html - 警察庁・SOS47「オレオレ詐欺」
https://www.npa.go.jp/bureau/safetylife/sos47/case/oreore/ - 警察庁・SOS47「還付金詐欺」
https://www.npa.go.jp/bureau/safetylife/sos47/case/refund/ - 警察庁・SOS47「その他の特殊詐欺」
https://www.npa.go.jp/bureau/safetylife/sos47/case/special/ - 警察庁・SOS47「みんなでとめよう!!国際電話詐欺 #みんとめ」
https://www.npa.go.jp/bureau/safetylife/sos47/case/international-phone/ - 警察庁・SOS47「固定電話の番号表示・非通知拒否サービス」
https://www.npa.go.jp/bureau/safetylife/sos47/case/service/ - 警察庁・SOS47「防犯機能付き電話の導入」
https://www.npa.go.jp/bureau/safetylife/sos47/case/security-phone/ - 警視庁「特殊詐欺被害防止の取組(固定電話)」(2026年3月6日更新)
https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/kurashi/tokushu/furikome/stop_sagi_tel.html - 警視庁「警察官等をかたる詐欺」(2026年4月15日更新)
https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/kurashi/tokushu/police_officer.html - 警視庁「相談ホットラインのご案内」
https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/sodan/madoguchi/sogo.html - 国際電話不取扱受付センター(KDDI・ソフトバンク・NTT東日本・NTT西日本・NTTドコモビジネス)
https://www.kokusai-teishi.com/ - 国民生活センター「高齢者の消費者被害」(2026年9月17日更新)
https://www.kokusen.go.jp/soudan_now/data/koureisha.html
※被害の数字は警察庁の令和8年上半期(2026年1〜6月)の暫定値で、令和8年からSNS型投資・ロマンス詐欺を含めて「特殊詐欺」として集計されています。65歳以上の割合は法人被害を除いた数字です。NTT東日本・西日本の無料化、国際電話の利用休止の条件は2026年9月時点の各ページによるもので、変わることがあります。自治体の補助の内容は自治体・年度により異なるため、必ずお住まいの窓口でご確認ください。