携帯電話不正利用防止法を改正する法律(令和8年法律第25号)が、2026年(令和8年)5月22日に成立し、5月29日に公布されました。施行は公布から1年以内、つまり遅くとも2027年(令和9年)5月28日までに始まります。
「詐欺に使われる電話番号は、どこから湧いてくるのか」——この改正は、その入口の側を締める法律です。番号を調べる側にとっても、これから何が変わるのかを知っておく価値があります。
データ通信専用SIMが新たに規制の対象になる
これまでの携帯電話不正利用防止法は、通話ができる回線(携帯音声通信)を対象にしてきました。契約するときに本人確認をする、他人に無断で譲り渡さない、といった義務です。
今回の改正では、ここにデータ通信専用SIMが加わります。総務省の説明では、規制の対象は「SMS機能付きデータ通信専用SIM」に限定し、IoT機器向けのものは除外することが想定されています。法律の名前も、これに合わせて「携帯音声通信」から「携帯通信」へ変わります。
あわせて、データ通信サービスだけを提供するMVNO(格安SIM事業者)も対象に含まれることになりました。これまで本人確認の義務がかからなかった事業者にも、同じ義務がかかります。
1人が持てる回線数に上限ができる
改正後の法律の第11条第6号では、個人による多回線契約に上限が設けられました。音声SIMとSMS機能付きデータSIMについて、それぞれ5回線が上限です。正当な利用目的が確認できる場合には、その回線数まで認められます。
1人で何十回線も契約し、それを使い捨てにするという使われ方に、直接ブレーキをかける規定です。番号が次々に変わる迷惑電話に心当たりがある方には、意味が分かりやすい改正だと思います。
すでに契約している人にも本人確認が行われる
見落とされがちですが、この改正には経過措置があります。改正法附則第2条により、施行の時点ですでにデータSIMを使っている人にも、本人確認を行う義務が事業者に課されます。
ただし、次の人は対象から外れます。
- 音声SIMの利用者(すでに本人確認済みのため)
- 施行日より前に本人確認が済んでいる人
- 契約終了や地位の承継が予定されている人
そして附則第6条により、本人確認に応じない場合には、事業者が役務の提供を拒めます。「昔契約したデータSIMをそのまま使っている」という方は、通信会社から本人確認の案内が来たら放置しないほうがよい、ということになります。
そのほかに変わること
- 短期滞在の外国人の本人確認… 住居に代えて「国籍及び旅券番号等」で確認できるようになります(改正後法第3条第1項)。対面では旅券の提示、非対面では旅券の写しの送付が想定されています。
- 警察署長の照会… 改正後法第8条第2項により、警察署長がメッセージアプリ等の運営事業者に対して、契約情報の報告を求められるようになります。
- 契約手続きをする担当者の確認… 法人などで契約を結ぶ担当者について、権限と地位を確認することが義務づけられます(改正後法第3条第2項・第3項)。確認方法として、同居親族・代理人の確認、登記の確認、委任状の確認、電話での確認、関係認識の確認が挙げられています。確認した事項は本人確認記録の対象にもなります(改正後法第4条第1項)。
背景にあるもの
総務省は、この改正が「国民を詐欺から守るための総合対策2.0」(令和7年4月22日 犯罪対策閣僚会議決定)などを踏まえたものであり、携帯通信端末向けの電気通信役務の不正な利用の多様化・巧妙化に対応するための措置だと説明しています。
制度の細部は総務省令に委ねられており、2026年7月以降に開かれた「ICTサービスの利用環境の整備に関する研究会」の作業部会で議論され、その結果が2026年8月3日に「携帯電話不正利用防止法の改正に基づく制度整備の方向性について」として公表されました。
番号そのものの見分け方については番号詐称:表示された番号は本物の証明になりませんもあわせてご覧ください。
参考
この記事は2026年9月5日に、以下の公開情報をもとに書きました。年月日・条文番号・回線数はすべて出典のとおりです。
- 牛島総合法律事務所「携帯電話不正利用防止法 令和8年改正法の概要」
https://www.ushijima-law.gr.jp/client-alert_seminar/client-alert/20260805identification/ - 総務省「『携帯電話不正利用防止法の改正に基づく制度整備の方向性について』の公表」(令和8年8月3日)
https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01kiban18_01000289.html
※本記事は公開資料をもとにした一般的な解説であり、法的助言ではありません。制度の細部は今後の総務省令等で定められます。最新の内容は総務省の公表資料をご確認ください。