表示された番号は、本物である保証になりません
番号詐称(スプーフィング)とは、発信者が別の番号を表示させて電話やSMSを送る手口です。銀行・カード会社・警察・役所などの番号が表示されるため、受けた側は本物だと思い込みます。
大事なのはここです。着信画面に出ている番号は、かけてきた相手が本当にその番号を使っている証明にはなりません。「公式サイトに載っている番号と一致したから本物だ」という確認のしかたは、この手口には通用しません。
なぜ番号を偽装できるのか
固定電話でもスマホでも、着信時に表示される番号は「発信者番号通知」という仕組みで発信側から送られてきます。ポイントは、この番号を最終的に申告するのが発信側の設備だという点です。受け手の電話機や通信会社が「本当にその番号の持ち主からかかってきたか」を毎回検証しているわけではありません。
通常の携帯・固定電話回線では勝手な番号を名乗りにくい仕組みになっていますが、インターネットを使うIP電話や、海外の中継業者を経由する経路では、発信側が任意の番号を発信者番号として設定できてしまう場合があります。国民生活センターも、公的機関などをかたる電話で「実在する機関の番号が表示される」手口が確認されていると注意を呼びかけています。総務省や通信事業者は、発信元を検証する技術(発信者番号の真正性を確認する仕組み)の整備を進めていますが、現時点で「表示された番号=本物」と言い切れる保証はありません。だからこそ、受け手側の確認が重要になります。
よく使われる名乗り
- 銀行・クレジットカード会社… カード裏面や公式サイトに載っている番号を表示させ、「不正利用を検知しました」と暗証番号やカード情報を聞き出す
- 警察… 警察署の代表番号を表示し「あなたの口座が犯罪に使われている」と言う。警察庁は特殊詐欺の類型としてニセ警察詐欺を挙げています
- 役所・税務署… 還付金や未納の話からATM操作へ誘導する
- 通信会社… 「回線を止める」と言って支払いを急がせる
いずれも、表示番号が本物に見えることで「公式だから安心」という心理的な隙を突きます。公的機関や金融機関が電話で暗証番号を尋ねたり、ATMでの還付金操作を指示することはありません。
受け手にできること・できないこと
まず正直に言うと、受け手が着信画面だけを見て、その番号が詐称かどうかを見分けることは基本的にできません。表示番号の真偽を判定する機能は受け手側にはありません。だからこそ、番号の真偽を見抜こうとするのではなく、行動のルールで身を守るのが現実的です。番号が本物に見えても通用する、たった1つの確認方法があります。
一度切って、自分で調べた番号にかけ直すことです。警察庁も「不審な電話は一度切って確認する」と呼びかけています。
- 会話中に判断しない。「折り返します」と言って切る
- キャッシュカードの裏面・請求書・通帳・公式サイトなど、手元にある資料から番号を確認する
- 自分で調べた番号にかけて、そのような連絡をしたか確認する
相手が「この番号にかけ直してください」と伝えてきた番号は使わないでください。着信履歴に残った番号でかけ直すのも避けてください。履歴に残った番号自体が詐称されている可能性があり、そこにかけ直すと同じ相手や別の詐欺グループにつながる恐れがあります。
会話の中で出たら、そこで切ってよい言葉
- 暗証番号・キャッシュカードの番号を聞かれた… 金融機関が電話で聞くことはありません
- ATMへ行くよう言われた… ATMで還付金は受け取れません
- カードを預かりに行くと言われた… 警察も銀行もカードを取りに来ません
- 「今日中に」と急がされた… 考える時間を与えないための言い方です
受ける前に減らす
警察庁が挙げている対策は、「在宅時も留守番電話に設定する」「防犯機能付き電話機や番号表示サービスを導入する」「家族と詐欺対策について話し合う」です。番号が偽装できる以上、そもそも会話を始めないことが有効です。
かかってきた番号を調べる
心当たりのない番号は番号検索で調べてください。同じ番号への口コミや報告があれば警戒の材料になります。ただし前述のとおり、表示された番号自体が偽装されている場合があるため、「検索して問題なさそう」でも安心はできません。あくまで判断材料の一つとして、前述のかけ直しルールと併用してください。海外からの着信は海外番号・国番号一覧で国番号を確認できます。
相談先
- 警察相談専用電話「#9110」:緊急ではないが不安、という段階の相談窓口です
- 消費者ホットライン「188」(いやや):契約や支払い、詐欺的な勧誘の相談ができます
お金やカードを渡してしまった場合は、すぐに110番と金融機関へ。相談の際は被害整理メモ・相談窓口を使って、着信日時・表示されていた番号・相手が名乗った組織・言われた内容・指示された操作などを書き出しておくと、状況が正確に伝わり対応がスムーズになります。
まとめ
- 表示された番号は本物の証明にならない。発信者番号通知は発信側の申告にすぎず、受け手側が真偽を検証する術はない
- 確実なのは一度切って、自分で調べた番号にかけ直すこと(警察庁)。着信履歴の番号でかけ直さない
- 暗証番号を聞く/ATMへ行かせる/カードを預かる——どれも本物はやりません
- 在宅時も留守番電話にして、会話自体を始めない
※対処法および特殊詐欺の類型は、警察庁「SOS47 特殊詐欺対策ページ」の記載によります。発信者番号通知の仕組みおよび真正性確認技術の整備状況は総務省・国民生活センターの公開情報によります。