この記事で分かること:着信画面に警察署や銀行の番号が出ていても、それだけでは本物と言えない理由、警察庁が公表している「実在する警察の番号を偽装した」実例、特殊詐欺に使われた番号の約75.5%が国際電話番号だったという警察庁の数字(令和7年中)、そして番号の真偽を見分けられなくても身を守れる具体的な手順と、国際電話を無料で止める申込み先です。
表示された番号は、本物である保証になりません
番号詐称(スプーフィング)とは、発信者が別の番号を表示させて電話やSMSを送る手口です。銀行・カード会社・警察・役所などの番号が表示されるため、受けた側は本物だと思い込みます。
大事なのはここです。着信画面に出ている番号は、かけてきた相手が本当にその番号を使っている証明にはなりません。「公式サイトに載っている番号と一致したから本物だ」という確認のしかたは、この手口には通用しません。
なぜ番号を偽装できるのか
固定電話の番号表示サービス(ナンバー・ディスプレイ)は、かけてきた相手の電話番号を、電話に出る前に電話機の画面へ表示する仕組みです。ただし表示されるのは相手側から届いた番号で、受け手の電話機に「本当にその番号の持ち主からかかってきたか」を確かめる機能はありません。
実際に警察庁は2025年3月、「警察官をかたる特殊詐欺の犯人が、実在する警察署等の電話番号を偽装して表示させる手口を確認」したとして注意を呼びかけています。表示番号の真偽を着信画面だけで見分ける方法は、受け手にはありません。だからこそ、受け手側の行動のルールが重要になります。
警察庁が公表している実例
警察本部の代表番号が表示された
警察庁が紹介している事例では、被害者の携帯電話に愛知県警察本部の代表電話番号(052-951-1611)から電話がありました。出ると警察官を名乗る人物から「あなた名義の口座が不正に開設されており、あなたも資金洗浄事件の容疑者になっている」などと言われ、その後SNSのビデオ通話で顔写真付きの警察手帳を見せられたうえで、「一度お金を全て振り込んでもらい、資金調査を行う必要がある」などと指示され、インターネットバンキングで250万円を振り込んでしまいました。
表示されていたのは本物の代表番号でした。「警察の番号から電話が来た」という事実は、相手が警察官である証明にはならないということです。
「+」で始まり、末尾が「0110」の番号
警察庁の「ニセ警察詐欺に注意!」では、「+」から始まる国際電話番号で、末尾が「0110」の番号を使い、警察署などからの電話を装う事例が目立つとしています。末尾の数字が110番に似ていても、先頭が「+」の番号は国際電話番号の形式で、「+81」(日本の国番号)以外で始まるなら海外からの電話です。国番号は海外番号・国番号一覧で確認できます。
特殊詐欺に使われた番号の約75.5%が国際電話番号
警察庁によると、令和7年中、特殊詐欺に利用された電話番号のうち約75.5%が国際電話番号でした。「+1」や「+44」などから始まる番号が例として挙げられています。警察庁は、令和5年7月以降、特殊詐欺で国際電話番号の利用が急増しているとしています。
よく使われる名乗り
- 銀行協会・金融機関… 「キャッシュカードを取りに行く」「手続きのため暗証番号を教えてほしい」などと言う
- 警察… 警察署の代表番号を表示し「あなたも資金洗浄事件の容疑者になっている」などと言う。警察庁はニセ警察詐欺として特に注意を呼びかけています
- 自治体・税務署・年金事務所… 医療費や保険料の過払い金、未払いの年金があると言ってATMへ向かわせる
- 電話会社・総務省… 「携帯電話の未納料金がある」などと言ったあと、警察官役に代わる
いずれも、表示番号が本物に見えることで「公式だから安心」という心理的な隙を突きます。警察庁は、警察官や自治体・銀行協会などの職員が暗証番号を聞くことはなく、ATMでお金が返ってくることも「絶対にありません」としています。
受け手にできること・できないこと
まず正直に言うと、受け手が着信画面だけを見て、その番号が詐称かどうかを見分けることは基本的にできません。だからこそ、番号の真偽を見抜こうとするのではなく、行動のルールで身を守るのが現実的です。番号が本物に見えても通用する確認方法があります。
一度切って、自分で調べた番号にかけ直すことです。
- 会話中に判断しない。「折り返します」と言って切る
- キャッシュカードの裏面・請求書・通帳・公式サイトなど、手元にある資料から番号を確認する。警察なら最寄りの警察署に自分でかけ直して確認する
- 自分で調べた番号にかけて、そのような連絡をしたか確認する
警察庁は「相手方から教示された番号には、決して折り返さないでください」と呼びかけています。相手が「この番号にかけ直してください」と伝えてきた番号は使わないでください。着信履歴に残った番号でかけ直すのも避けてください。履歴に残った番号自体が詐称されている可能性があるため、かけ直す先は必ず自分で調べた番号にします。知らない番号への基本的な対応は知らない番号からの電話への対応、折り返しを狙う手口はワン切り詐欺も参考にしてください。
会話の中で出たら、そこで切ってよい言葉
- 暗証番号を聞かれた… 警察官や銀行協会などの職員が暗証番号を聞くことはありません
- ATMへ行くよう言われた… ATMでお金が返ってくることはありません
- カードを預かりに行くと言われた… 自治体や銀行協会などの職員がキャッシュカードを預かりに来ることはありません
- 「今日中に」と急がされた… 還付金詐欺では「払い戻しには期限がある」と焦らせる手口が紹介されています
警察を名乗る電話については、警察庁が本物の警察官はしないことを具体的に挙げています。
- 電話で「捜査対象となっている」と伝える
- メッセージアプリで連絡する
- 警察手帳や逮捕状の画像を送る
- 個人のスマートフォンに突然ビデオ電話をする
このどれかに当てはまったら、表示されている番号が警察署のものでも、その場で切ってかまいません。
受ける前に減らす
番号が偽装できる以上、そもそも会話を始めないことが有効です。警察庁が挙げている対策は次のとおりです。
| 対象 | 対策 |
|---|---|
| 固定電話・ひかり電話 | 国際電話不取扱受付センター(0120-210-364)に申し込むと、国際電話番号からの発着信を無償で休止できます。オペレーター案内は平日9時〜17時、自動音声案内は24時間受付で、Webからも申し込めます |
| 固定電話(NTT東日本・西日本) | 番号表示サービスと非通知拒否サービス(申し込みが必要)。非通知の着信には「番号を表示しておかけ直しください」といった音声が応答します。70歳以上の方、または70歳以上の方と同居している契約者は月額利用料・工事費が無料です(対応機器などの条件あり)。防犯機能付き電話の導入も対策に挙げられています |
| 携帯電話 | 国際電話の着信規制ができるアプリを使う。番号非通知・通知不可能な着信、電話帳に登録していない番号からの着信を拒否する設定にする。留守番電話機能を活用し、録音メッセージで相手が分かってからかけ直す |
| 共通 | 家族など大切な人と、詐欺への備えを話し合っておく |
国際電話を使う予定がない家庭なら、固定電話の国際電話休止は効果の大きい対策です。
かかってきた番号を調べる
心当たりのない番号は番号検索で調べてください。同じ番号への口コミや報告があれば警戒の材料になります。ただし前述のとおり、表示された番号自体が偽装されている場合があるため、「検索して問題なさそう」でも安心はできません。実在する警察署や銀行の番号が偽装された場合、その番号にはふだんの問い合わせの記録しか載っていないこともあります。あくまで判断材料の一つとして、前述のかけ直しルールと併用してください。
相談先
- 警察相談専用電話「#9110」:警察官を名乗る不審な電話を受けたら、電話を切ってここへ相談するよう警察庁が呼びかけています
- 消費者ホットライン「188」(いやや):身近な消費生活センターや消費生活相談窓口を案内してもらえます
お金やカードを渡してしまった場合は、すぐに110番と金融機関へ。相談の際は被害整理メモ・相談窓口を使って、着信日時・表示されていた番号・相手が名乗った組織・言われた内容・指示された操作などを書き出しておくと、状況が正確に伝わります。
まとめ
- 表示された番号は本物の証明にならない。警察庁も、実在する警察署等の番号を偽装して表示させる手口を確認している
- 確実なのは一度切って、自分で調べた番号にかけ直すこと。相手が教えた番号・着信履歴の番号にはかけ直さない
- 暗証番号を聞く/ATMへ行かせる/カードを預かる/ビデオ通話で警察手帳を見せる——どれも本物はやりません
- 特殊詐欺に使われた番号の約75.5%は国際電話番号(令和7年中)。固定電話は0120-210-364で国際電話を無償で休止、携帯は着信規制アプリや着信拒否設定を
- 迷ったら番号検索で調べ、#9110や188に相談する
参考
この記事は2026年9月に、以下の公開情報をもとに書きました。
- 警察庁 SOS47「警察に偽装した電話番号に注意!」(2025年3月25日)
https://www.npa.go.jp/bureau/safetylife/sos47/new-topics/250325/01.html - 警察庁 SOS47「ニセ警察詐欺に注意!」(2025年11月17日)
https://www.npa.go.jp/bureau/safetylife/sos47/new-topics/241218/02.html - 警察庁 SOS47「国際電話番号による特殊詐欺が増加中!」(2024年12月18日)
https://www.npa.go.jp/bureau/safetylife/sos47/new-topics/241218/03.html - 警察庁 SOS47「みんなでとめよう!!国際電話詐欺 #みんとめ」
https://www.npa.go.jp/bureau/safetylife/sos47/case/international-phone/ - 警察庁 SOS47「固定電話の番号表示・非通知拒否サービス」
https://www.npa.go.jp/bureau/safetylife/sos47/case/service/ - 警察庁 SOS47 特殊詐欺対策ページ
https://www.npa.go.jp/bureau/safetylife/sos47/ - 警察庁 SOS47「還付金詐欺」
https://www.npa.go.jp/bureau/safetylife/sos47/case/refund/ - 警察庁 SOS47「預貯金詐欺」
https://www.npa.go.jp/bureau/safetylife/sos47/case/deposits/ - 警察庁 SOS47「キャッシュカード詐欺盗」
https://www.npa.go.jp/bureau/safetylife/sos47/case/cashcard/ - 消費者庁「消費者ホットライン」
https://www.caa.go.jp/policies/policy/local_cooperation/local_consumer_administration/hotline/
※「約75.5%」は警察庁が公表している令和7年(2025年)中の特殊詐欺に利用された電話番号に占める国際電話番号の割合です。事例・対策・サービスの内容は2026年9月時点の警察庁・消費者庁の公開情報によります。番号表示サービス等の料金・無料の条件は変わることがあるため、申し込み前に各社でご確認ください。