結論: 着信履歴に「+870」「+881」「+882」で始まる番号が出たら、それは特定の国ではなく、衛星電話や国をまたぐ通信網に割り当てられた番号です。国際電気通信連合(ITU)の公式の一覧では、+870はインマルサット、+881は世界規模の衛星携帯電話(イリジウム、グローバルスター)、+882・+883は国際ネットワーク用です。この記事では、番号ごとの意味、かけ直したときの通話料の高さ(30秒で数百円)、宇宙ステーションと地上の通信、スマホが衛星と直接つながる「au Starlink Direct」の2026年時点の現状を公式資料で整理し、着信したときにどうすればよいかを書きます。
+870・+881・+882は「国」ではない番号
電話番号の先頭の「+」のあとの数字は国番号です。国番号の一般的な読み方は国際電話番号の読み方と国番号一覧で説明しています。ITUの国番号の一覧には、国や地域ではなくサービスや通信網に割り当てられた番号がいくつかあります。衛星電話に関係するものを中心にまとめると次のとおりです。
| 先頭の番号 | ITUの一覧での割り当て | 補足 |
|---|---|---|
| +870 | Inmarsat SNAC(インマルサット) | インマルサットの衛星通信の機器あての番号 |
| +881 | Global Mobile Satellite System(GMSS、世界規模の衛星携帯電話)の共用番号 | +8816・+8817はイリジウム、+8818・+8819はグローバルスター |
| +882 | International Networks(国際ネットワーク)の共用番号 | +88216はスラーヤ(Thuraya)の衛星網。ほかに船舶向け通信や大手通信会社の網も |
| +883 | International Networks(国際ネットワーク)の共用番号 | +882と同じく、国をまたぐ通信網向けの共用番号 |
| +888 | Telecommunications for Disaster Relief(災害救援用の通信) | 災害救援のための番号 |
インマルサットの番号は+870に一本化された
以前のインマルサットは、海域ごとに+871〜+874の番号も使っていました。ITUに掲載されたインマルサットの通知(2008年7月15日付)によると、871・872・873・874は2008年12月31日で使用を終了し、インマルサットの機器への発信は870を使うよう案内されました。2016年12月15日時点のITUの一覧でも、871〜874は「Spare code(空き番号)」になっています。古い資料で+871〜+874を見かけても、いまは使われていない番号です。
「+88」で始まっても衛星とは限らない
+88で始まる番号がすべて衛星電話というわけではありません。ITUの一覧では、+880はバングラデシュ、+886は台湾です。着信履歴を見るときは、+の後ろの3桁(衛星系はさらに次の1〜2桁)まで確かめてください。
+881・+882の中の内訳
+881と+882は複数の事業者で分け合う「共用の国番号」で、後ろに続く識別番号で事業者が決まります。ITUのデータベースでは、+881の識別番号のうち6と7がイリジウム、8と9がグローバルスターに割り当てられ、0〜3はかつての事業者から返還された空き番号です。+882では、16がスラーヤの衛星網に割り当てられているほか、船舶向けの通信会社や大手通信会社の網も並んでいます。+882だから必ず衛星電話、というわけでもありません。
かけ直すと高い:衛星電話あての通話料
衛星電話あての国際通話は、普通の国際電話より高く設定されています。ソフトバンクの国際電話料金(2025年3月19日時点)では、衛星電話あては次のとおりです。
| あて先 | 番号 | 料金(30秒あたり) |
|---|---|---|
| インマルサット(M設備) | 870 | 446円 |
| イリジウム | 8816/8817 | 380円 |
| スラーヤ | 88216 | 195円 |
たとえば+870あてに5分話すと、30秒446円×10回で4,460円になります(ソフトバンクの料金表で計算した場合)。料金は携帯会社ごとに違うので、自分の会社の料金表で確かめられるまでは、知らない衛星電話の番号にかけ直さないのが基本です。電話代は「かけた側」が払う仕組みで、出るだけなら通話料はかかりません。詳しくは通話料は誰が払うのかをご覧ください。
短く鳴らして切り、折り返しを誘う手口はワン切り・コールバック詐欺として知られています。+870・+881・+882からの見覚えのない不在着信も、同じように扱うのが安全です。
宇宙ステーションと地球はどうつながっているか
宇宙から地球への通話も、仕組みは「衛星を中継する」点で衛星電話と似ています。NASAによると、国際宇宙ステーション(ISS)の宇宙飛行士は、NASAの「Near Space Network(近宇宙ネットワーク)」の通信・航法サービスに頼っています。その宇宙側の中継役が追跡・データ中継衛星(TDRS)で、地上の施設(米ニューメキシコ州ホワイトサンズとグアム)と、軌道上の衛星や宇宙ステーションの間をつないでいます。NASAのページでは、TDRSはISSを含む25以上の宇宙ミッションに使われています。
つまり宇宙からの通話は、ISS→中継衛星→地上局→地上の通信網という順につながります。私たちのスマホに宇宙から直接電話がかかってくるわけではなく、「宇宙飛行士です」「宇宙にいる」と名乗る電話やメッセージでお金を求められたら、それは詐欺を疑うべき内容です。
スマホが衛星と直接つながる時代:au Starlink Directの現状
2026年時点で、日本でも普通のスマホが衛星と直接つながるサービスが始まっています。auの公式ページによると、「au Starlink Direct」では携帯電話の電波が届かない場所でも、メッセージの送受信や、対応アプリ(地図アプリ、LINEなど)でのデータ通信ができます。
- 音声通話は未対応(2026年7月時点)。高速データ通信と音声通話は、次世代の衛星(Starlink Mobile V2)を使って2027年内に提供開始の予定とされています。
- 圏外から緊急通報を送れる「au Starlink Direct SOSセンター」の仕組みがあります(au Starlink Direct限定の機能)。
専用の衛星電話機がいらず、いつものスマホで使える点が、+870や+881の番号を持つ従来の衛星電話との大きな違いです。
+870・+881・+882から着信があったら
- かけ直さない。心当たりがない限り折り返さない。料金は30秒で数百円になることがあります。
- 心当たりを確かめる。家族や知人が船・海外の山岳地帯などにいて衛星電話を使っている場合は、本人と普段の連絡手段で確かめる。
- 番号を検索する。当サイトの番号検索で口コミを確かめ、国別の情報は海外の電話番号のページで見られます。
- 国際電話の着信を止める。海外からの迷惑電話が続くときの止め方は国際電話詐欺:+1・+44・+86からの着信と止め方にまとめています。
- お金を払ってしまった・個人情報を話してしまったときは、警察相談専用電話#9110、消費者ホットライン188に相談する。
当サイトで検索された番号の中で日本以外の番号がどれくらいあるかは、検索された電話番号1,690件の分析で紹介しています。
参考
この記事は2026年10月に、以下の公開情報をもとに書きました。
- ITU「List of ITU-T Recommendation E.164 assigned country codes」(Annex to ITU Operational Bulletin No. 1114、2016年12月15日)
https://www.itu.int/dms_pub/itu-t/opb/sp/t-sp-e.164d-2016-pdf-e.pdf - ITU掲載「Inmarsat (country code +870) Communication of 15.VII.2008」
https://www.itu.int/dms_pub/itu-t/oth/02/02/T02020000650001MSWE.doc - ITU「E.164 International Shared Country Codes」(881)
https://www.itu.int/net/itu-t/inrdb/e164_intlsharedcc.aspx?cc=881 - ITU「E.164 International Shared Country Codes」(882)
https://www.itu.int/net/itu-t/inrdb/e164_intlsharedcc.aspx?cc=882 - ソフトバンク「国際電話 サービスエリア&料金」(2025年3月19日時点)
https://www.softbank.jp/mobile/service/global/outgoing/call/international-calls - au「au Starlink Direct」
https://www.au.com/pr/qr/starlink/ - NASA「Tracking and Data Relay Satellites」
https://www.nasa.gov/mission/tracking-and-data-relay-satellites/ - NASA「Communicating with Missions」
https://www.nasa.gov/communicating-with-missions/
※衛星電話あての料金はソフトバンクの2025年3月19日時点の料金表の例です。ほかの携帯会社・固定電話の料金とは異なります。+881・+882の内訳は2026年10月に確認したITUのデータベース、そのほかの国番号はITUの2016年12月15日時点の一覧によるもので、変わることがあります。au Starlink Directの内容は2026年7月時点の公式ページの記載です。