「格安SIM(格安スマホ)に替えたら電話番号はどうなるの?」「知らない番号が格安SIMからの電話かどうか分かる?」――この記事では、格安SIM(MVNO)とeSIMがどのように広がってきたかを、総務省の資料で確かめられる日付と最新の契約数(2026年3月末時点)でたどります。あわせて、番号ポータビリティ(MNP)とSIMロック禁止で電話番号がどう「持ち運べる」ようになったか、2026年に成立した法改正でデータ専用SIMの扱いがどう変わるか、そして乗っ取り(SIMスワップ)など今気をつけたい点まで整理します。
格安SIM(MVNO)とは:電波を借りてサービスを提供する会社
総務省の携帯電話ポータルサイトは、自社で通信設備を整備する携帯会社をMNO(NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイル等)、MNOからネットワークを借りてサービスを提供する携帯会社をMVNO(Mobile Virtual Network Operator)と説明しています。「格安スマホ/格安SIM」は、大手携帯会社のメインブランドと比べて比較的安価なサービスを指し、主に「MVNO」のサービスがこれに当たると説明されています。
同じサイトでは、MVNOは「必要なだけ」ネットワークを借りるため、お昼休みなどの混雑する時間帯にはデータ通信速度が下がるケースがある一方、標準の電話アプリを使った通常の通話の品質は大手携帯会社と同等だと説明しています。
格安SIMと電話番号の歩み(年表)
MVNOの普及は、料金の話だけでなく「電話番号を変えずに会社を選べる」「端末をそのまま使える」制度づくりと一体で進んできました。総務省の資料で日付を確かめられた主な出来事は次のとおりです。
| 時期 | 出来事 |
|---|---|
| 2002年6月11日 | 総務省が「MVNOに係る電気通信事業法及び電波法の適用関係に関するガイドライン」を公表・運用開始。MVNOの参入を促すため、法律の適用関係を明確にした |
| 2006年10月24日 | 携帯電話の番号ポータビリティ(MNP)開始。会社を替えても同じ番号を使えるようになった |
| 2020年4月 | 楽天モバイルが自社回線のMNOとして本格サービス開始。MVNOについては、この月からSIMロックの設定自体を中止 |
| 2020年12月〜2021年3月 | 大手3社がオンライン専用の料金プランを発表・提供開始(ドコモ「ahamo」2021年3月26日、ソフトバンク「LINEMO」3月17日、KDDI「povo」3月23日) |
| 2021年4月1日 | MNPのガイドライン改正。MNP手数料の原則無料化、過度な引き止め行為の禁止など |
| 2021年10月1日 | この日以降に発売される携帯電話端末は、正当な理由がない限りSIMロックなしで販売することが義務に |
| 2023年5月24日 | MNPの「ワンストップ方式」開始。乗り換え先に申し込むだけで番号を引き継げる方式が加わった |
| 2023年10月1日 | この日以降に販売される全ての端末がSIMロックなしに。それ以前の端末も申し出ればいつでも無料で解除 |
| 2026年5月29日 | 携帯電話不正利用防止法の改正法が公布。契約時の本人確認の対象にデータ通信専用SIMを追加(施行は公布から1年以内の政令で定める日) |
ahamoの発表時の料金は、総務省資料によれば月間20GB・月額2,980円(税抜、1回5分以内の国内通話無料)で、のちに月額2,700円への引き下げが発表されました。
数字で見る今の格安SIM(2026年3月末)
総務省が2026年7月10日に公表した四半期データ(2026年3月末時点)によると、次のとおりです。
- 移動系通信(携帯電話・BWA)の契約数:2億3,142万
- MVNOサービスの契約数:4,277万(前年同期比+12.5%)。移動系通信全体に占める割合は18.5%
- そのうち、契約数3万以上のMVNOの区分別:スマホなどに挿す「SIMカード型」が1,817万、機械や機器に組み込む「通信モジュール」が1,601万
- MVNOの事業者数:MNOから直接回線を借りる一次MVNOが771、MVNOから借りる二次以降のMVNOが1,299
- 移動系通信の事業者別シェア(MVNOへの提供分を除く):NTTドコモ32.9%、KDDIグループ26.2%、ソフトバンク18.7%、楽天モバイル3.6%
注意したいのは、MVNOの4,277万には、機器に組み込んで使う通信モジュール(人が通話に使うとは限らない回線)も含まれる点です。「格安SIMのスマホを使う人が4,277万人いる」という意味ではありません。
また、総務省が2021年12月に実施したウェブアンケートでは、乗り換え経験者のうち乗り換え先がMVNOだった人の満足度は76.2%で、MNOに乗り換えた人の65.9%を上回りました。
電話番号は「会社」ではなく「人」についていく
MNPで番号はそのまま。データ専用は対象外
MNPを使えば、大手から格安SIMへ、格安SIMから別の会社へと乗り換えても、070・080・090の番号をそのまま使えます。MNPを一度使った後に元の会社や別の会社へ移るときも、再びMNPを利用できます。総務省のQ&Aによれば、利用者が負担するMNPの料金は無料で、対面や電話でMNP予約番号を発行する場合だけ「千円以下の額に消費税額を加算した額」がかかることがあります(乗り換え先での契約事務手数料は別)。
ただし、総務省は070・080・090の番号でもMNPが使えない場合として、データ通信専用サービスなどを挙げています。データ通信専用SIMは音声通話のサービスが付かないSIMなので、070・080・090の番号を持ち運ぶには音声通話付きのSIMを選ぶ必要があります。また、MNPは「元の会社を解約して新しい会社と新規契約する」仕組みなので、割引や一部のサービスは解約とともに終わる点にも注意が必要です。手続きの流れは番号ポータビリティ(MNP)の手続き・費用・注意点で詳しくまとめています。
番号から「格安SIMかどうか」は分からない
知らない番号から着信があったとき、相手が格安SIMかどうかを番号から知る方法はありません。総務省のQ&Aは、公開している「電気通信番号指定状況」は最初に番号を指定された会社の一覧であり、MNPの導入によって実際に契約している会社と異なる場合があると説明しています。番号は乗り換えとともに会社をまたいで移動するので、090・080・070の番号だけを見て、大手か格安SIMか、どの会社の回線かを判定することはできません。詳しくは携帯キャリアを番号で調べる方法をご覧ください。
なお、総務省は070・080・090番号の不足に備えて、2024年12月20日に060で始まる11桁の番号も携帯電話に使えるよう番号計画を変えました。ただし、2026年7月8日に事業者から060番号の提供開始の延期が公表され、総務省は2026年度末までに必要な対応がとられた後、順次提供が始まるよう促しています(2026年7月8日時点の情報)。番号の種類の違いは携帯番号090・080・070・060の違いと追加の歴史で解説しています。
SIMロックの原則禁止とeSIM
SIMロックとは、携帯会社が自社のSIMカードを挿したときだけ動くように端末を設定することです。総務省の資料によると、2021年8月にガイドラインが改正され、2021年10月1日以降に発売される端末は、正当な理由がない限りSIMロックなしで販売することが義務になりました。さらに2023年10月1日以降に販売される全ての端末はSIMロックなしとなり、それ以前に発売された端末も、申し出ればいつでも、どの窓口でも無料で解除できるルールになりました。総務省のQ&Aは、2021年10月以降も、それ以前に「発売」された端末が「販売」されていることがあると注意を促しています。古い端末を格安SIMで使う場合は、SIMロックの有無を確かめておくと安心です。
eSIMは、総務省の説明では「スマートフォンの端末内にSIMが内蔵されている本体一体型のSIM」で、カードを差し替えずにオンラインで乗り換え手続きを完了できるのが特徴です。2021年の改正では、eSIMもSIMロックガイドラインの対象に加えられました。お店に行かずに乗り換えられる便利さの一方で、手続きがオンラインで完結する分、IDやパスワードの管理がこれまで以上に大切になります。
データ専用SIMも本人確認の対象へ(2026年改正)
これまで、契約時の本人確認を義務づける携帯電話不正利用防止法の対象は音声通話のサービスで、データ通信専用SIMは対象外でした。総務省の立案担当者の解説によると、データ専用SIMを使い、SNSのメッセージ機能で詐欺を行う事例が多数確認されたことから、2026年5月29日に公布された改正法(令和8年法律第25号)で、本人確認の対象にデータ通信のサービスが加えられました。あわせて、1人が同時に使える端末の数が一定数を超える場合に、事業者が契約を断れるようにする措置も盛り込まれています。施行は、一部を除き公布の日から1年を超えない範囲で政令で定める日です。
また、オンラインなど対面でない契約での本人確認方法は、原則としてマイナンバーカードの公的個人認証に一本化する施行規則の改正が2026年4月1日に施行されています。格安SIMをオンラインで申し込む人にとっては、手続きに直接関わる変更です。改正の中身は携帯電話不正利用防止法2026年改正とデータSIM本人確認義務化で迷惑電話は減るのかで整理しています。
今気をつけたいこと:番号の乗っ取り(SIMスワップ)
電話番号を手軽に移せるようになったことは、悪用の入り口にもなり得ます。楽天証券は2026年4月6日の注意喚起で、第三者がフィッシングサイトやSNSなどで入手した個人情報を悪用し、利用者の携帯会社にSIMを再発行させる「SIMスワップ」の手口を説明しています。番号を乗っ取られると、SMSや電話による追加認証を突破されるおそれがあります。
同じ注意喚起では、次のような兆候が挙げられています。
- スマートフォンが突然圏外になり、通話やSMSが使えなくなる
- 身に覚えのないSIM再発行などの通知が携帯会社から届く
- 金融機関から身に覚えのないログイン・取引・出金の通知が届く
- メールサービスにログインできなくなる
被害が疑われる場合は、携帯会社に不正なSIMの停止を頼み、メールのパスワードを変え、金融機関に連絡するよう案内されています。手口の詳細はSIMスワップ詐欺とは、SMSの認証コードを守る方法は二段階認証のSMSコードが盗まれる4つの手口と守り方をご覧ください。
よくある質問
格安SIMに替えると電話番号は変わりますか?
音声通話付きのSIMでMNPを使えば、番号は変わりません。データ通信専用のサービスはMNPの対象外になる場合があるので、番号を残したいときは契約の種類を確かめてください。
格安SIMの電話番号は普通の携帯と見分けがつきますか?
つきません。格安SIMでも070・080・090の番号が使われ、MNPで番号が会社をまたいで移るため、番号から契約先を特定することはできません。
「SIMの再発行手続きをした」という連絡が来たら?
自分で手続きした覚えがなければ、連絡に書かれた番号やリンクは使わず、携帯会社の公式サイトや契約書類で自分で調べた窓口に確認してください。
知らない番号から電話が来たら
格安SIMの普及やMNPで、携帯番号を見ただけで相手の会社を見分けることはできなくなりました。だからこそ、知らない番号からの着信には次のように対応するのが安全です。
- すぐに出ない・かけ直さない。用件があれば留守番電話やSMSに残るのを待つ
- 携帯会社や金融機関を名乗る電話でも、その場で個人情報やSMSの認証コードを伝えない
- 気になるときは、公式サイトなど自分で調べた番号にかけ直して確かめる
- お金や契約のトラブルに巻き込まれそうなら消費者ホットライン188、詐欺かもしれないと感じたら警察相談専用電話#9110に相談する
- 着信番号は番号検索で、ほかの人の口コミを確かめてから判断する
参考
この記事は2026年10月に、以下の公開情報をもとに書きました。
- 総務省 報道資料「『MVNOに係る電気通信事業法及び電波法の適用関係に関するガイドライン』の公表」(平成14年6月11日)
https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/daijinkanbou/020611_2.pdf - 総務省 MVNO支援コーナー「MVNOガイドライン」
https://www.soumu.go.jp/joho_tsusin/eidsystem/mvmo01.html - 総務省 携帯電話ポータルサイト「みなさまの疑問を解決!」
https://www.soumu.go.jp/menu_seisaku/ictseisaku/keitai_portal/gimonkaiketsu.html - 総務省 携帯電話ポータルサイト「総論」
https://www.soumu.go.jp/menu_seisaku/ictseisaku/keitai_portal/souron.html - 総務省 携帯電話ポータルサイト「Q3.端末を変えずに乗り換えられるの?」
https://www.soumu.go.jp/menu_seisaku/ictseisaku/keitai_portal/gimonkaiketsu/q_3.html - 総務省 携帯電話ポータルサイト資料「SIMロックについて」
https://www.soumu.go.jp/menu_seisaku/ictseisaku/keitai_portal/pdf/kaijorule_r3_10.pdf - 総務省 競争ルールの検証に関するWG 資料「検討の方向性(案)について(通信市場の動向に関する事項)」(令和3年6月23日)
https://www.soumu.go.jp/main_content/000756678.pdf - 総務省「電気通信サービスの契約数及びシェアに関する四半期データの公表(令和7年度第4四半期(3月末))」(令和8年7月10日)
https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01kiban04_02000278.html
https://www.soumu.go.jp/main_content/001081665.pdf - 総務省「MNPに関するQ&A」
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/top/tel_number/mnp_menu2.html - 総務省「携帯電話・PHSの番号ポータビリティ(MNP)」
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/top/tel_number/mnp.html - 総務省「携帯電話番号への060番号の追加」(令和8年7月8日時点)
https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/joho_tsusin/top/tel_number/060keitai.html - 総務省『情報通信政策研究』第10巻第1号 立案担当者解説「携帯音声通信事業者による契約者等の本人確認等及び携帯音声通信役務の不正な利用の防止に関する法律の一部を改正する法律」
https://www.soumu.go.jp/main_content/001087943.pdf - 楽天証券「SIMスワップ詐欺に関する注意喚起」(2026年4月6日)
https://www.rakuten-sec.co.jp/web/info/info20260406-01.html
※契約数・シェアは総務省の四半期データ(2026年3月末時点)の値です。MVNOの契約数には通信モジュールなど人が通話に使うとは限らない回線も含まれ、SIMカード型・通信モジュールの内訳は契約数3万以上のMVNOの合計です。料金プランの金額は総務省資料に記載された発表当時の税抜価格で、現在の料金とは異なります。制度の施行日や060番号の提供時期は今後変わることがあるため、最新の情報は総務省や各社の公式サイトでご確認ください。