電話の歴史

黒電話のデザインと仕組み:4号・600形・601形の歩みと今

公開日

結論: 「黒電話」は、ダイヤルを回してかける卓上電話機の通称です。NTTの資料によると、1950年に生まれた「4号」、高度成長期の大量需要にこたえた「600形」、オイルショック後の「601形」がその代表で、この3機種は2022年9月13日に国立科学博物館の「未来技術遺産」に登録されました。この記事では、あの形と仕組みがどう決まったのか、なぜ全国どこでも同じ電話機だったのか、そして2026年の今、ダイヤル式の電話機や固定電話がどうなっているかを、NTT・総務省・メーカーの公開資料をもとにまとめます。

黒電話の系譜:4号・600形・601形

NTTは2022年の発表で、NTT技術史料館が所蔵するこの3機種の特徴を次のように紹介しています。実機は同館で一般公開されています。

機種時代NTTが挙げる特徴
4号自動式卓上電話機1950年に誕生(戦後復興期)それまで粗悪だった音響部分を徹底的に研究して抜本的に改良し、当時の最先端の通話品質を実現。流線形のデザイン
600形自動式卓上電話機高度成長期電気回路に初めてプリント配線板を導入。送受話器、ダイヤル、筐体まで研究し、信頼性と量産性を高めた。製造の自動化を視野に部品配置や組み立て方法に配慮
601形自動式卓上電話機オイルショック後大幅なコストダウンと高いメンテナンス性。省資源化と将来の需要減を考え、手作業での組み立てを前提にした構造。音声明瞭度や通信音量の国際規格を満たす

600形を量産したメーカーの一つ、OKIの社史コラムによると、600形の仕様は1963年8月に電電公社が策定しました。OKIは同年11月から出荷を始め、1971年3月に送り出した最後の600形は390万8,706台目だったと記録しています。1社だけでこの台数ですから、黒電話がいかに大量に作られたかが分かります。

なぜ全国どこでも同じ電話機だったのか

理由は、電話機が「買う物」ではなく「電電公社から提供される物」だったからです。総務省の情報通信白書は、1985年の通信自由化の前は本電話機が電電公社により直接提供されていたこと、自由化とともに、技術基準に適合していれば利用者が自由に設置できるようになったことを説明しています。

電電公社は1952年に発足し、白書によると、当面の主要な目標は電話の申込みに設備が追いつかない「積滞」の解消でした。加入電話は1950年代から1970年代にかけて大きく増え、積滞の解消は1978年に達成されています。大量の家庭に、同じ規格の電話機を確実に届ける必要があった時代です。設計の段階から量産性や保守のしやすさが重視されたのは、こうした事情と重なります。

自由化の後は、電話機を選んで買う時代に移ります。NTT西日本の「電話機のあゆみ」によると、1980年5月に初めて登場したコードレスホンはレンタル商品としてのみ提供されていましたが、1987年10月の電波法改正で自由化され、購入できる商品が登場しました。黒電話が「どの家にも同じ物がある電話機」だったのは、提供のされ方そのものが今とは違っていたからです。

ダイヤルの仕組み:パルスで番号を伝える

黒電話は、ダイヤルを回して指を離すと、ダイヤルが戻る間に電気の断続(パルス)を送り、それで番号を交換機に伝えます。文化遺産オンラインに載る高岡市立博物館の600形の解説では、型番の「A2」は、ダイヤルの戻るスピードがA1(10パルス/秒)より速い(20パルス/秒)モデルだと説明されています。

同じ博物館には「610形」という共同電話用の電話機も所蔵されています。共同電話は1つの回線を複数の加入者で共用する方式で、この機種は赤いフックスイッチが特徴です。底面には600形として作られたものを610形に変更した刻印が残り、ダイヤル中央の紙には「A2の特徴」として横に2本の赤線が引かれていると解説されています。1本の回線を分け合う使い方に合わせて、電話機も作り分けられていたことが分かります。

ボタンで番号を送る方式は、OKIの社史によると、トーンダイヤル方式専用の「プッシュホン」として1969年5月17日に発売されました。NTT東日本は2015年の報道発表で、電話機から交換機へ送る信号として「プッシュトーン」「ダイヤルパルス10pps」「ダイヤルパルス20pps」の3種類を挙げています。

年表:黒電話から今の固定電話まで

時期出来事
1950年4号自動式卓上電話機が誕生
1952年日本電信電話公社が発足
1963年8月電電公社が600形の仕様を策定
1969年5月17日プッシュホン発売
1978年電話の積滞を解消
1980年5月コードレスホン初登場(当初はレンタルのみ)
1985年通信自由化。電話機を利用者が自由に設置できるように
1987年10月電波法改正でコードレスホンが自由化され、購入できる商品が登場
1998年2月ナンバー・ディスプレイ提供開始
2022年9月13日4号・600形・601形が「未来技術遺産」に登録
2024年1月以降NTT東日本が加入電話の局内設備を地域ごとにIP網へ切り替え(現在は完了)

2026年の今、黒電話は使えるのか

NTT東日本は、加入電話の局内設備を2024年1月1日以降に地域ごとに切り替え、IP網への移行を完了したと案内しています。この切り替えで「お客さま宅内の電話機の交換や回線の切替工事は必要ありません」と案内しており、通話料は全国一律になりました。ひかり電話については、NTT東日本は一般的なアナログ電話機をそのまま接続して使えるとしつつ、「一部そのまま利用できない場合があります」と注意しています。古いダイヤル式の電話機をつなぐ場合は、契約している会社に確認するのが確実です。ひかり電話と加入電話の違いはひかり電話と加入電話の違い:停電・音質・やめどきで整理しています。

料金の面では、白書によると1985年当初の最遠距離の通話料は3分400円で、10年後には3分180円まで下がりました。いまの加入電話は固定電話あて全国一律3分9.35円で、NTT東日本は2027年4月1日の利用分から3分10.45円に改定すると発表しています。

黒電話にない機能:かけてきた番号が分からない

黒電話の時代、電話は鳴っても誰からかかってきたかを画面で見ることはできませんでした。かけてきた相手の番号を表示するナンバー・ディスプレイの提供が始まったのは1998年2月です。今でも番号表示のない電話機や、番号表示の契約をしていない固定電話では、出るまで相手が分かりません。

知らない相手からの電話にそなえるには、番号が見える状態にしておくことが第一歩です。NTT東日本は、契約者が70歳以上か、70歳以上の方と同居している契約者の回線について、申告すればナンバー・ディスプレイとナンバー・リクエストの月額利用料と工事費を無料にしています(事務用・法人名義の回線は対象外。詳しくは固定電話の迷惑電話対策 70歳以上は番号表示が無料)。番号表示やキャッチホンの歩みはナンバー・ディスプレイとキャッチホンの歩みと今の使い方で紹介しています。固定電話の番号の読み方(市外局番と地域)は固定電話番号のページや電話番号の仕組みにまとめています。

実家の固定電話を見直すときのチェック

  1. 電話機に番号表示の画面があるか、番号表示の契約があるかを確かめる。どちらかが欠けると、かけてきた番号は見えません。
  2. 知らない番号からの電話は留守番電話で受ける。伝言の内容を聞いてから、かけ直すかどうかを決めます。
  3. 「電話機の交換が必要」「回線が切り替わるので工事費を」といった電話は、その場で払わない。契約している電話会社の窓口に、自分で調べた番号でかけて確かめる。
  4. 表示された番号は当サイトの番号検索で調べる。不安なときは消費者ホットライン188、警察相談専用電話#9110へ相談してください。

参考

この記事は2026年10月に、以下の公開情報をもとに書きました。

※機種の特徴はNTTの2022年の発表、生産台数はOKI1社の記録で、黒電話全体の台数ではありません。通話料は税込で、2026年10月時点の公表内容です。お使いの電話機が今の回線で使えるかは、機種と契約によって異なります。

この記事に出てくる番号帯

気になる番号は 番号検索 から調べられます。

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