電話の歴史

ダイヤルアップとテレホーダイ:電話回線でネットをした時代

公開日

結論: 1990年代後半のインターネットは、多くの家庭で電話回線を使った「ダイヤルアップ接続」でした。接続中はずっと電話をかけているのと同じなので、つないだ時間だけ電話料金がかかり、その間は家の電話がふさがりました。そこで使われたのが、深夜・早朝帯に選んだ2つの番号への通話料を定額にするNTTの「テレホーダイ」(1995年開始)です。テレホーダイは固定電話のIP網移行に合わせて2024年1月1日から割引が適用されなくなり、ISDNの定額接続「フレッツ・ISDN」も2026年1月31日に終わりました。この記事では、当時の仕組みを公式資料で振り返り、その時代に起きた「知らないうちに国際電話につながる」被害が、今の国際電話の詐欺とどうつながるかまで説明します。

ダイヤルアップ接続は「プロバイダに電話をかけ続ける」しくみ

ダイヤルアップ接続では、パソコンにつないだモデムが、プロバイダ(ISP)の接続用の電話番号(アクセスポイント)に電話をかけ、つながっている間だけインターネットが使えました。総務省の平成13年版情報通信白書は、この方式の料金を次のように説明しています。

  • プロバイダへの接続料金:一定の利用時間までの定額制が一般的
  • 通信料金(電話料金):利用時間の長さで金額が決まる従量制

白書は、このため「インターネット利用時間が長くなるほど利用者の費用負担が大きくなり」、時間のかかる大きなデータのダウンロードなどの妨げになりうると指摘しています。つまり、ネットにつないでいる時間は、そのまま電話の通話時間として請求されていたわけです。

電話料金は、かけた先の番号と時間で決まります。電話番号の形と種類(固定電話・携帯・IP電話・フリーダイヤルなど)の見分け方は「電話番号の仕組み」にまとめています。

「ネット中は電話が使えない」理由

普通の加入電話(アナログ回線)は、1本の回線で1つの通話しかできません。モデムが回線を使っている間は、家族が電話をかけようとしても使えず、外からかけてきた人には話し中になりました。

この不便を解消したのがISDN(NTTの「INSネット64」)です。NTT西日本の「電話機のあゆみ」は、1999年に発売したISDN用コードレス電話機について「ISDN回線専用なので、インターネット接続中も電話でお話ができたり」と紹介しています。そのINSネットも、NTT東日本は2028年12月31日でサービスを終えると案内しています。

テレホーダイ:深夜・早朝の2つの番号を定額に

テレホーダイは、NTTが提供していた通話料の割引サービスです。NTT西日本・NTT東日本は、終了を知らせる資料で内容を「定額料の支払により、深夜・早朝帯に限り、あらかじめお客さまが選択された2つの電話番号への通話料が定額となる割引」と説明しています。この2つの番号の1つにプロバイダのアクセスポイントを登録すれば、深夜・早朝帯はどれだけ長くつないでも電話料金が定額になりました。

従量制の電話料金がかかるダイヤルアップでは、同じ時間つなぐなら、定額になる深夜・早朝帯に使うほど電話料金を抑えられる仕組みでした。テレホーダイは1995年8月に「テレホーダイ1800」、10月に「テレホーダイ3600」が始まり、1996年2月にはISDN向けの「INSテレホーダイ」も加わりました。

年表:ダイヤルアップから常時接続へ

年月日できごと
1995年8月22日「テレホーダイ1800」開始
1995年10月19日「テレホーダイ3600」開始
1996年2月9日ISDN向けの「INSテレホーダイ」開始
1999年11月DSL(ADSLなど)のサービスが始まる(総務省白書)。同月1日、NTT西日本が「フレッツ・ISDN」を試験提供
2000年7月NTT東西が「フレッツ・ISDN」の本格提供開始。白書は「我が国初めての全国的な常時接続サービス展開」と記す
2000年12月26日NTT西日本が「フレッツ・ADSL」を開始
2001年3月フレッツISDNは72万加入、DSLは70,655加入(3月末)。白書は「ブロードバンド元年」と表現
2023年9月30日テレホーダイを含む通話料割引サービスの新規受付停止
2024年1月1日固定電話のIP網移行に伴い、テレホーダイなどの割引を適用しなくなる
2026年1月31日「フレッツ・ISDN」提供終了

定額の常時接続が広がり、時間を気にしないネットへ

平成13年版情報通信白書によると、主なプロバイダ5社の料金は、2000年(平成12年)3月時点では定額制がないか月5,000円程度でしたが、2001年3月には各社とも定額制を始め、月2,000円前後と半額以下になりました。フレッツISDNに対応するプロバイダも、開始時の82社から2001年3月には308社に増えています。白書は、こうした常時接続の広がりで「インターネット利用者が時間を気にせずに長時間インターネットを利用できる環境が整ってきた」とまとめています。

速さの差も大きく、白書の例では、音楽CD1枚分のデータをダウンロードするのに、ISDN(64kbps)では約2時間半、ケーブル(1.5Mbps)では約6分、光回線(100Mbps)では約6秒かかるとしています。

ダイヤルアップ時代の被害:知らないうちに国際電話へ

電話回線でネットにつなぐ仕組みは、悪用もされました。白書のコラムによると、2000年初めから夏にかけて、ホームページを見ている途中で「国際通話に自動的につながるよう設定されてしまうソフトウェア」をダウンロードさせられ、多額の国際電話料金を請求される被害が続出しました。国民生活センターには「インターネットを始めたら、利用した覚えのない高額な国際電話の通話料金を請求された」という相談が寄せられ、郵政省(現総務省)は同年10月に国際電気通信事業者7社に対策を求めています。

「電話をかけた側が通話料を払う」「海外への通話は高い」という仕組みが狙われた点は、今も変わりません。電話回線を使った情報料の回収が問題になったダイヤルQ2の経緯は「ダイヤルQ2と0990:高額請求の仕組みと終了後の今」で説明しています。

今どうなっているか:割引は終わり、通話料は全国一律に

NTT東日本・西日本の固定電話は2024年1月から順次IP網へ移り、テレホーダイ・INSテレホーダイを含む通話料の割引サービスはすべて終わりました。NTT西日本・NTT東日本の資料では、移行後の固定電話あての通話料は、距離や時間帯に関係なく3分9.35円(全国一律・全時間帯)です。「深夜だから安い」という料金の考え方は、NTTの加入電話ではなくなりました。

ダイヤルアップで使われたモデムによる通信については、NTT東日本・西日本が2017年に、IP網への切替後の回線で手持ちのモデムやFAXが動くかを確かめられる検証環境を用意すると発表していました。フレッツ・ISDNは、利用者が年々減っていることなどを理由に2026年1月31日で提供を終えています。

今の電話に生かせること

テレホーダイの時代は、深夜に電話回線を使うのが当たり前でした。今は事情が違い、深夜・早朝の知らない番号からの電話には慎重になったほうがよい場面があります。対応の考え方は「深夜・早朝の知らない番号からの電話、出る前に知っておくこと」にまとめました。当サイトで知らない番号が調べられた時刻を数えた結果は「知らない番号を調べた2,067回を時刻で数えたら、88%が9時〜17時だった」で紹介しています。

ダイヤルアップ時代の「知らないうちに国際電話」は、今は「+」から始まる番号からの着信という形で続いています。国民生活センターは2026年3月19日、「+1」「+44」など「+」で始まる番号は海外からの番号で、心当たりのない国際電話は詐欺の可能性が高いとして、出ない・かけ直さないよう呼びかけました。手口と止め方は「国際電話詐欺:+1・+44・+86からの着信と止め方」、国番号の一覧は「国際電話の番号」で確かめられます。

知らない番号から電話が来たら

  1. 心当たりのない「+」から始まる番号には出ない・かけ直さない。かけ直すと、その通話料は自分の負担になります。
  2. 国際電話を使わないなら利用休止を検討する。固定電話は国際電話不取扱受付センター(無料・0120-210-364)で申し込めます。携帯電話は端末やキャリアのサービスで発着信を制限できる場合があります。
  3. 番号を調べる。当サイトの番号検索で、その番号の種類と口コミを確かめられます。
  4. 困ったら相談する。消費者ホットライン188、被害にあったときは警察相談専用電話#9110へ。

参考

この記事は2026年10月に、以下の公開情報をもとに書きました。

※加入者数・料金は、平成13年版情報通信白書に載っている2001年3月時点の数字です。年表の日付はNTT西日本の年表によります。今の通話料はNTT東日本・西日本の加入電話の例で、ひかり電話や他社の電話とは異なります。

この記事に出てくる番号帯

気になる番号は 番号検索 から調べられます。

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