結論: ISDNは、電話回線をデジタルにしたNTTの「INSネット」として1988年4月に始まり、1本の回線で電話2本分を使えることから、家庭や会社で電話・FAX・インターネットに使われました。そのINSネットは、2024年1月にデータ通信用の「ディジタル通信モード」が段階的に終わり、新規販売も2024年8月31日に終了、2028年12月31日に通話も含めて提供を終える予定です(NTT東日本・西日本)。この記事では、ISDNの仕組みと歴史を公式資料で振り返り、2026年10月の今、INSネットを使っている人が何を確かめればよいかをまとめます。
ISDN(INSネット)とは:1本で2回線分使えるデジタル回線
ISDNは、電話回線をデジタル化して、電話もデータ通信も同じ回線で扱えるようにしたサービスです。NTT東日本・西日本では「INSネット」という名前で、「INSネット64」「INSネット64・ライト」「INSネット1500」の3種類がありました。
総務省の資料によると、INSネット64の回線は次の2種類のチャネルでできています。
| チャネル | 本数と速さ | 役割 |
|---|---|---|
| Bチャネル | 2本(各64kbps) | 通話・データ通信など情報を運ぶ |
| Dチャネル | 1本(16kbps) | 発着信や通信の制御に使う管理用の信号を運ぶ |
Bチャネルが2本あるので、NTT東日本の説明どおり「1本の回線で2回線分利用できる」のが特徴でした。普通の加入電話(アナログ回線)では、インターネットにつないでいる間は電話が話し中になりましたが、ISDNなら片方でネット、もう片方で通話ができました。NTT西日本の「電話機のあゆみ」も、1999年に出たISDN専用のコードレス電話機について「ISDN回線専用なので、インターネット接続中も電話でお話ができたり」と紹介しています。
また、INSネットは「ディジタル通信」「通話」「パケット通信」の3つのモードで使えました。このうち、今回まっさきに終わったのが「ディジタル通信モード」です。
年表:実験から終了まで
| 年月日 | できごと |
|---|---|
| 1984年9月28日 | INSモデルシステム実験スタート(東京都武蔵野・三鷹地区) |
| 1988年4月19日 | INSネット64、東京・名古屋・大阪の3地域でサービス開始 |
| 1989年6月27日 | INSネット1500 サービス開始 |
| 1990年6月1日 | INS-P(パケット通信)サービス開始 |
| 1996年2月9日 | INSテレホーダイ(深夜・早朝の通話料定額)開始 |
| 2000年1月31日 | INSネットが西日本エリアで300万回線突破 |
| 2000年7月7日 | ISDNの定額インターネット接続「フレッツ・ISDN」本格提供開始 |
| 2000年12月8日 | INSネットが全国(NTT東西計)で1,000万回線突破 |
| 2016年3月末 | INSネットは256万契約(全ISDNでは337万契約) |
| 2024年1月 | 固定電話のIP網移行に合わせ、ディジタル通信モードを地域ごとに終了(予定日は1月2日・17日・31日の3段階)。代わりに「補完策」の提供開始。INSテレホーダイなどの割引も終了 |
| 2024年8月31日 | INSネットの新規販売(新規・移転の申込受付)終了 |
| 2026年1月31日 | フレッツ・ISDN 提供終了 |
| 2028年12月31日 | INSネット64・64ライト・1500と補完策の提供終了(予定) |
2000年12月に全国で1,000万回線を超えたINSネットは、2016年3月末には256万契約になっていました。NTT東日本は、ひかり電話などのIP電話が広がり、比較的低速なISDNの需要が減り続けていると説明しています。ISDNや電話回線で、深夜に定額でネットにつないだ時代のことは「ダイヤルアップとテレホーダイ:電話回線でネットをした時代」で取り上げています。
なぜ終わるのか
NTT東日本は、終了の理由として「ISDNの契約者数の減少」と「設備の維持が難しい」ことを挙げています。長年使われてきた設備は、部品の調達や技術者の確保が年々難しくなっているとしています。
終了は2段階で進みました。NTT東日本・西日本は2017年10月17日、固定電話網をIP網に切り替えるのに合わせて「ディジタル通信モード」を2024年1月に終えると発表しました。このとき、機器の入れ替えが間に合わない利用者向けに、IP網に切り替えた後の回線でデータ通信を続けられる「補完策」を「2027年頃までを目途として提供することを検討中」としていました。ただし、補完策は元のディジタル通信モードとは品質が異なり、「利用する機器によっては処理時間が増加する場合があります」と注意しています。
その後、2024年3月7日に、INSネット全体の新規申込受付と提供の終了が発表されました。今のNTT東日本・西日本の案内では、補完策も含めて2028年12月31日で終わります。
家庭より影響が大きいのは「見えない所」の通信
ディジタル通信モードは、通話だけでなく、機械どうしのデータのやり取りにも使われてきました。総務省が2016年にまとめた資料には、利用の例として電力の検針が載っています。代わりの手段についての意見では、情報サービスの業界団体(JISA)が企業間の電子データ交換(EDI)での制約を挙げ、全国銀行協会、警備会社、ラジオ局も意見を出しています。NTT東日本も、終了で影響を受ける可能性があるものとして、小売の「POSシステム」や「EDI(電子データ交換)システム」を挙げています。
家庭でINSネットを電話として使っている場合も、2028年12月31日を過ぎると今の契約のままでは使えなくなります。NTT東日本・西日本は移行先として、光回線が使える地域では「フレッツ光」と「ひかり電話」など、使えない地域では「加入電話」(NTT東日本)や「ワイヤレス固定電話」を案内しています。ひかり電話と加入電話の違い(停電時・音質・料金)は「ひかり電話と加入電話の違い:停電・音質・やめどき」で説明しています。
今INSネットを使っている人が確かめること
- 何につながっているかを書き出す。電話機・FAXのほか、店のレジ(POS)、警備の機器、取引先とのデータ交換など、INSネットの回線に何がつながっているかを確かめます。
- 契約先の公式窓口で、移行先と手続きを確かめる。電話番号をそのまま使えるか、機器を替える必要があるかは、使い方によって変わります。案内は契約書や請求書、公式サイトに載っている窓口に自分で問い合わせます。
- 期限を逆算する。工事や機器の入れ替えには時間がかかるので、2028年12月31日より前に余裕をもって移ります。
「回線が使えなくなる」という電話に注意
サービスの終了や切り替えは、それを口実にした電話の入口にもなります。「NTTです」「このままでは電話が使えなくなります」「今すぐ手続きを」と言われても、その場で契約や支払いをせず、いったん切って、契約書や請求書にある番号、または公式サイトで自分で調べた窓口に確かめてください。手口と見分け方は「NTTを装う回線停止詐欺の手口と対策」、光回線の勧誘で「NTTの代理店です」と言われた場合は「光回線の勧誘電話で「NTTの代理店です」と言われたら」にまとめています。
かかってきた番号が固定電話か携帯か、どの地域の番号かは、番号の形である程度分かります。見分け方は「電話番号の仕組み」と「固定電話の市外局番」で確かめられます。
知らない番号から電話が来たら
- その場で契約・支払い・個人情報の回答をしない。
- 着信の番号にかけ直さず、自分で調べた公式の番号にかけ直して確かめる。
- 番号を調べる。当サイトの番号検索で、その番号の種類と口コミを確かめられます。
- 困ったら相談する。消費者ホットライン188、被害にあったときは警察相談専用電話#9110へ。
参考
この記事は2026年10月に、以下の公開情報をもとに書きました。
- NTT西日本「電信電話のあゆみ 1830〜1992年」
https://www.ntt-west.co.jp/info/databook/pdf/095-098_denshindenwa_ayumi1830-1992.pdf - NTT西日本「電信電話のあゆみ 1993〜2004年」
https://www.ntt-west.co.jp/info/databook/pdf/099-102_denshindenwa_ayumi1993-2004.pdf - NTT西日本「電話機のあゆみ 1988〜2001年」
https://www.ntt-west.co.jp/info/databook/pdf/085-086_denwakiayumi1988-2001.pdf - 総務省 総合通信基盤局「INSネット(ISDNディジタル通信モード)終了に伴う対応の考え方」(2016年7月14日)
https://www.soumu.go.jp/main_content/000430735.pdf - NTT東日本「ISDN(INSネット)とは?2028年12月終了の影響と企業が取るべき対応」(2026年3月26日更新)
https://business.ntt-east.co.jp/column/denwa/isdn.html - NTT東日本「INSネット」サービス終了について
https://flets.com/2028ins/ - NTT西日本「INSネット」サービス終了について
https://www.ntt-west.co.jp/denwa/2028ins/ - NTT東日本・NTT西日本「固定電話のIP網への移行後のサービス及び移行スケジュールについて」(2017年10月17日)
https://www.ntt-east.co.jp/release/detail/pdf/20171017_01_01.pdf - NTT西日本・NTT東日本「固定電話のIP網への移行後のサービスについて」(2022年12月8日)
https://www.ntt-west.co.jp/news/2212/pdf/221208a_1.pdf - NTT西日本「『フレッツ・ISDN』の提供終了および『フレッツ光』未提供エリアにおける新規申込受付終了について」(2023年7月28日)
https://www.ntt-west.co.jp/news/2307/230728a.html - NTT東日本「基本料金(回線使用料)」
https://flets.com/denwa/fare/kihonryo.html
※終了日は2026年10月時点のNTT東日本・西日本の案内によります。他社が提供するISDNサービスの終了時期は各社の案内をご確認ください。年表の回線数・契約数は、それぞれの時点の数字です。