雑学・トリビア

電話の「もしもし」と「Hello」はどこから来たか

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結論: 「もしもし」は電話のために作られた言葉ではありません。辞書では「もうしもうし」が変化した語で、人に呼びかける言い方として1591年の文献に用例があり、それが電話の第一声にも使われるようになりました。英語の「Hello」は、電話の初期にベルが「Ahoy!」を使い、エジソンが1877年の手紙で「Hello!」を勧めた記録が残っています。この記事では、確かめられた事実だけで二つの言葉の歩みをたどり、最後に「知らない番号に出るとき、第一声をどうするか」という今の話につなげます。

「もしもし」は電話より古い呼びかけの言葉

国語辞典を引くと、「もしもし」には二つの意味が載っています。デジタル大辞泉は「相手に呼びかけるときに言う語」と「電話で話し始めるときに用いる語」の二つを挙げ、語の成り立ちを「もうしもうし」の音変化としています。精選版 日本国語大辞典も同じく「もうしもうし」の変化した語とし、電話の意味を「電話を通して最初に相手に呼びかける語。また、電話が通じていることを確認する時にもいう」と説明しています。

注目したいのは用例の年です。日本国語大辞典は、呼びかけの「もしもし」の用例として1591年の『サントスの御作業の内抜書』を引いています。ローマ字で「moximoxi」と書かれたものです。日本に電話が入るよりずっと前から、人に声をかける言い方として「もしもし」はあったことになります。

電話の意味での用例としては、尾崎紅葉の『令夫人』(1903年)の「電話の口切ぢゃないが、もしもしと言ひたいね」が引かれています。「電話の口切(話し始め)のように、もしもしと言いたい」という言い回しが小説に出てくるということは、このころには「電話といえば、もしもし」という結びつきが読者に通じていたと読めます。

なお、「交換手が『申す申す』と言ったのが始まり」「『試し試し』が縮まった」といった由来の話はよく紹介されますが、公的な資料では確かめられませんでした。この記事では、辞書で確かめられる「もうしもうし」からの変化という点までにとどめます。

日本の電話は「交換手に話しかける」ところから始まった

NTT東日本の解説によると、日本の電話サービスは1890年に東京市内と横浜市内を結んで始まりました。当時は電話と電話の間に「交換手」がいて、受話器を上げると交換手につながり、「横浜のAさんにつないでください」と相手を告げると、交換手が手作業でつなぐ仕組みでした。

つまり初期の電話では、最初に話す相手は目的の人ではなく交換手でした。相手の顔が見えず、声がきちんと届いているかも分からない中で、丁寧に呼びかけ、つながっているかを確かめる言葉が要ります。日本国語大辞典が電話の「もしもし」に「電話が通じていることを確認する時にもいう」と書き添えているのは、この使われ方をよく表しています。

NTT東日本の同じ解説では、1926年から徐々に、交換手に代わる「自動交換機」が導入されるようになったとされています。自分でダイヤルして相手に直接つながる時代になっても、「もしもし」は電話の第一声として残りました。

英語の「Hello」:ベルの「Ahoy!」とエジソンの手紙

英語圏の話は、発明家エジソンの文書を整理・公開しているラトガース大学の「トーマス・A・エジソン・ペーパーズ」のニュースレター(2015年2月号)に、まとまった記述があります。

  • 「Hello」やその変形は1800年代初めにはよく使われるあいさつで、1833年には印刷物に出ている。つまり電話のために作られた言葉ではない。
  • ベルは電話の実験を始めたころ、あいさつに「Ahoy!」を使っていた。
  • エジソンは1877年8月、トーマス・B・A・デイビッドあての手紙に「呼び出しのベルは要らないだろう。Hello! なら10〜20フィート(約3〜6メートル)先まで聞こえる」と書いた。
  • 電話交換手は、鳴った電話を取るときの言葉を「What is wanted?(ご用件は?)」から「Hello?」に変えていき、交換手は「hello girls」と呼ばれるようになった。
  • 1880年9月の第1回全米電話会社大会では、会長が「皆さんの名札に書いてある言葉、『Hello』」と述べ、会場が拍手に包まれた。

「hello girls」という呼び名はその後も残ります。アメリカ陸軍の記事によると、第一次世界大戦では1918年3月に女性の電話交換手の最初の部隊がパリに到着し、最終的におよそ200人が、パリをはじめフランスとイギリスの各地で交換業務にあたりました。彼女たちは「Hello Girls」と呼ばれ、退役軍人としての地位が法律で認められたのは1978年になってからでした。

二つの言葉の歩み(年表)

年日本(もしもし)アメリカ(Hello)
1591年呼びかけの「moximoxi(モシモシ)」の用例(日本国語大辞典)―
1833年―「Hello」の系統の語が印刷物に出る
1877年8月―エジソンが手紙で「Hello!」を勧める
1880年9月―第1回全米電話会社大会で「Hello」の名札
1890年東京市内と横浜市内を結ぶ電話サービス開始(交換手が手作業でつなぐ)―
1903年小説『令夫人』に電話の「もしもし」の用例―
1918年3月―陸軍の女性電話交換手(Hello Girls)がパリに到着
1926年自動交換機の導入が始まる―

日本語の「もしもし」も英語の「Hello」も、もとからあった呼びかけの言葉が電話に入り、交換手の時代を通じて「電話の第一声」になった、という点で似ています。

今の電話の第一声:知らない番号には「出る前に確かめる」

交換手の時代は、まず声を出さなければ何も始まりませんでした。今は違います。電話が鳴った時点で、画面やナンバー・ディスプレイに相手の番号が出ます(表示の仕組みの移り変わりはナンバー・ディスプレイとキャッチホンの歩みで書いています)。第一声の「もしもし」を言う前に、番号を見て判断できるようになったのが、昔との一番大きな違いです。

総務省の特殊詐欺対策のページは「知らない番号からの電話は、すぐには応答せず、一度立ち止まって確認しましょう」と呼びかけ、本当に必要な連絡なら後で留守番電話や別の方法で確認できるとしています。鹿児島県の消費生活のページも、心配な人に向けて、固定電話を常に留守番電話に設定し、携帯電話では知らない番号や非通知の着信に出ないことを対策として挙げています。

知らない番号に出てしまったときの第一声について、覚えておくと役に立つ点をまとめます。

  1. 自分から名乗らなくてよい。「もしもし」だけで相手の名乗りを待ちます。用件のある相手なら、会社名や名前を言うはずです。
  2. 無言ならそのまま切る。「もしもし」に返事が無い電話にはいくつかの理由があります。詳しくは出ると切れる・無言の電話は何?にまとめています。
  3. 「はい」と言ったら悪用される、という話は落ち着いて読む。うわさの出どころと本当の注意点は電話で「はい」は録音悪用される?で整理しています。
  4. 「+」で始まる海外の番号は、出る前に番号の形を確かめる。知らない国際電話への対処は国際電話詐欺:+1・+44・+86からの着信と止め方に、「+1」の番号の見方は+1(アメリカ・カナダ)の番号のページにまとめています。

まとめ:第一声の前に番号を見る

「もしもし」は400年以上前から使われてきた呼びかけの言葉で、交換手に話しかける時代の電話にそのまま入りました。「Hello」も、ベルが使った「Ahoy!」ではなく、エジソンが手紙で勧め、交換手が使ったことで電話の言葉になりました。

今の電話は、出る前に相手の番号が見えます。知らない番号から着信があったら、すぐに出ず、留守番電話に用件を残してもらうか、番号検索でその番号の口コミや種類を調べてから判断してください。番号の先頭の数字で種類を見分ける方法は電話番号の仕組みに、折り返すかどうかの判断は知らない番号からの着信、折り返すべき?にまとめています。不審な電話でお金や個人情報の話が出たら、切ってから警察相談専用電話 #9110 や消費者ホットライン 188 に相談してください。

参考

この記事は2026年10月に、以下の公開情報をもとに書きました。

※「もしもし」の由来には、交換手の言葉から生まれたという説などさまざまな説明がありますが、この記事では辞書と公的な資料で確かめられた内容だけを書いています。英語の「Hello」の経緯は、エジソン・ペーパーズのニュースレターの記述によります。

この記事に出てくる番号帯

気になる番号は 番号検索 から調べられます。

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