電話の歴史

電話加入権とは:施設設置負担金39,600円の中身と今の価値

公開日

結論: 電話加入権は「NTTの加入電話を使う権利」で、その元になる施設設置負担金は2026年10月時点でも1回線39,600円(税込)です。ただし、この負担金は解約しても返ってこず、国税庁も「取引相場が存在していない」と整理しています。この記事では、負担金の額が戦後どう変わってきたか、今の加入権に財産としての価値がどれくらい残っているか、休止・解約・相続のときに何に気をつければよいかを、NTT東日本と国税庁の公開資料をもとにまとめます。

電話加入権と施設設置負担金は別のもの

よく混同されますが、NTT東日本は次のように説明しています。

  • 電話加入権: 「加入電話契約者が加入電話契約に基づいて加入電話の提供を受ける権利」(電話サービス契約約款第21条)。
  • 施設設置負担金: 加入電話を新しく契約するときに払う料金。市内の交換局から自宅までの回線(電柱・ケーブルなど)の建設費の一部を、「基本料の前払い的な位置付け」で負担するもの。

大事な点は2つです。1つ目は、施設設置負担金は解約しても返還されないこと。2つ目は、NTT東日本自身が「電話加入権の財産的価値を保証しているものではありません」と書いていることです。それでも、質権を設定できる、法人税法上は減価償却しない資産として扱う、といった制度があり、売買の市場も形成されてきました。「払ったお金が権利として残る」という感覚は、こうした制度から生まれたものです。

負担金の額の移り変わり(東京・単独電話)

NTT東日本が公表している変遷表を、年表にまとめると次のとおりです。電信電話債券は、「電信電話設備の拡充のための暫定措置に関する法律(拡充法)」に基づき、負担金とは別に1契約当たりで引き受けた債券で、償還期間が終わると資金が返される性格のものでした。表の「↓」は、前の額のまま続いたことを表します。

時期新規加入時の負担金電信電話債券(1契約当たり)
1952年当時装置料4,000円+負担料30,000円(合計34,000円)-
1953年1月↓60,000円
1960年4月設備料10,000円150,000円
1968年5月設備料30,000円↓
1971年6月設備料50,000円↓
1976年11月設備料80,000円↓
1983年3月↓廃止(拡充法の廃止による)
1985年4月工事負担金72,000円(80,000円から宅内工事費8,000円を分けたもの)-
1989年4月名前が「施設設置負担金」に変わる-
2005年3月施設設置負担金36,000円(税抜)-
2026年10月時点39,600円(税込)+契約料880円(税込)-

「電話加入権は72,000円」という記憶がある人が多いのは、1985年4月から2005年2月までの約20年間、この額が続いたためです。72,000円は相場が値上がりした結果ではなく、NTTが新規契約のときに受け取る負担金の額でした。1985年の72,000円は、それまでの80,000円から宅内工事費8,000円を別にしたもので、宅内工事をする場合の実際の負担は変わらなかったと、NTT東日本は注記しています。

2005年に半額になった理由

NTT東日本の資料によると、施設設置負担金の受入額は累計で約4兆7千億円(NTT東西の合計)にのぼり、電話網の建設に大きな役割を果たしました。しかし固定電話の施設数(NTT東西の合計)は1997年度をピークに横ばいから減少に転じ、負担金の受入額も2003年度には64億円まで減っていました。初期費用のいらない電話サービスを他社が始めたこともあり、総務省の情報通信審議会は2004年10月の答申で、NTT東西が「廃止も選択肢とした見直しを欲するのであれば、容認されるべき」としました。

これを受けてNTT東日本は、2005年3月1日に72,000円(税抜)から36,000円(税抜)に引き下げました。廃止ではなく半額にとどめたのは、「当時の電話加入権取引市場の売買価格に直接影響を与えない範囲内」にするためだと説明しています。電話の新規契約が多い転勤・新入学卒業期に間に合うよう3月1日を選んだことも書かれています。

負担金を払わない「ライトプラン」とひかり電話

NTT東日本は、負担金の代わりに月々の基本料へ一定額を上乗せする「ライトプラン」を、INSネット64では1997年7月から、加入電話では2002年2月から選べるようにしています。上乗せ額は2005年3月に月640円から月250円(税抜)に下がりました。NTT東日本の資料では、新規契約の大半がライトプランを選んでいるとしています。2026年4月更新のNTT東日本の案内でも、初期費用を抑えたい人には「加入電話・ライトプラン」を勧めています。

また、ひかり電話は光回線を使うため、施設設置負担金がかかりません。停電時の動き・音質・料金など、加入電話との違いはひかり電話と加入電話の違い:停電・音質・やめどきにまとめています。

今の電話加入権に、お金としての価値はあるか

税金の上での扱いを見ると、今の価値がはっきりします。国税庁は財産評価基本通達の改正で、次のように整理しました。

  • 電話加入権の取引相場は存在していない。
  • 国税局長が決めていた標準価額は、平成26年(2014年)以降1回線当たり1,500円と、とても低い。
  • このため標準価額をやめ、家具などの一般動産と同じく、売買の実例や専門家の意見を参考に評価する。
  • 相続税の申告では、家庭用の動産とまとめて評価してよい。

つまり、かつて72,000円を払った加入権でも、今は財産として大きな額にはならない、というのが税務の公式な見方です。買取の広告などで具体的な金額が示されていても、それは業者ごとの値付けで、公的な相場ではありません。

使わなくなった固定電話:休止・解約・相続

NTT東日本の案内では、加入電話をやめるときの手続きは3つあります。

  1. 利用休止: 月々の料金の支払いを止めて、電話加入権を残す。取扱期間は5年間で、延長の手続きをすれば最長10年間まで加入権を保てます。期間が終わっても延長や再開の申し出がなければ、契約は解除されたものとして扱われます。
  2. 一時中断: 同じ電話番号でまた使う予定があるときの手続き。毎月の回線使用料はかかります。
  3. 解約: 今後使う予定がないときの手続き。施設設置負担金は返ってきません。

名義人が亡くなったときの承継や名義変更など、個別の手続きの方法・手数料は、NTT東日本・西日本の窓口(固定電話からは局番なしの116)で確かめてください。番号を変えたいときの流れは電話番号を変える方法と費用にあります。

加入権の話を持ち出す勧誘電話に注意

NTT東西は2024年1月から順次、固定電話網(PSTN)をIP網へ切り替えました。NTT東西が2022年1月に公表した資料では、加入電話の契約はそのまま続き、「『電話加入権』・『INSサービス利用権』についても、名称及び内容に変更ありません」と明記されています。その一方で、国民生活センターは2022年4月に、これに便乗して「今後固定電話が使えなくなる。光回線にした方がいい」と勧誘する事例を紹介し、利用者側の手続きや自宅の工事は不要で、電話機や電話番号はそのまま使えると注意を呼びかけています。

「加入権が無駄になる」「今のうちに切り替えないと権利が消える」といった言葉で契約を急がせる電話も、同じ形の勧誘として疑ってかかるのが安全です。次のように対応してください。

  1. その場で契約しない。「NTTの代理店」「NTTの関連会社」と名乗っても、NTT東日本・西日本そのものとは限りません(詳しくは光回線の勧誘電話で「NTTの代理店です」と言われたら)。
  2. 「回線が止まる」「料金が未納」と言われたら、いったん切って、請求書や公式サイトで自分で調べた番号にかけ直す(手口はNTTを装う回線停止詐欺の手口と対策)。
  3. かかってきた番号は当サイトの番号検索で口コミを確かめる。市外局番から地域を知りたいときは固定電話の番号の一覧が使えます。
  4. 契約してしまった・不安が残るときは、消費者ホットライン188(いやや!)で最寄りの消費生活センターに相談する。

参考

この記事は2026年10月に、以下の公開情報をもとに書きました。

※負担金の額の移り変わりは、NTT東日本が公表している東京・単独電話の例です。現在の金額はNTT東日本の2026年4月時点の案内によります(NTT東日本は2027年4月以降の一部料金改定を予告しています)。相続や税の扱いは個別の事情で変わるため、具体的には税務署・税理士にご確認ください。

この記事に出てくる番号帯

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