結論: 裁判所が電話で「訴えられています」と知らせたり、電話でお金の振り込みを求めたりすることはありません。はがきで訴訟や強制執行の開始を知らせることもありません。電話ならその場で切り、はがきなら書いてある番号にはかけないでください。気になるときは、自分で調べた最寄りの裁判所へ問い合わせます。
この記事では、裁判所と法務省が公式サイトで注意を呼びかけている手口、本物の裁判所の書類の届き方、それでも「本物かもしれない」ときの確かめ方をまとめます。本物の支払督促を放っておくと困ったことになるので、「全部無視してよい」とは言い切れない点もあわせて説明します。
裁判所・法務省をかたる電話の例
裁判所の公式サイト「電話の例」には、実際に寄せられた不審な電話が載っています。
- 「東京簡易裁判所」の書記官や職員を名乗り、通販で買ったサプリメントの代金(1万円前後)が未払いで、利子もついて300万円の支払いを求める訴訟を起こされている、と言う。
- 「出頭命令が出ている」「召喚状を受け取ってもらっていないので、身分証を持ってとりに来てほしい」と言う。
- 自動音声で「召喚に関する最終通告です。担当にお繋ぎしますので、○を押してください」と流す。
- 「クレジットカードの不正利用の関係で大阪府警が捜査しています」「銀行口座がマネーロンダリングに利用されている」「重要参考人になっている」と言って解決金を求め、「守秘義務があるから誰にも相談しないように」と口止めする。
最後の例では、大阪・津・名古屋・福岡などにある実在の裁判所の代表番号が使われました(2025年7月掲載・10月更新)。着信画面に本物の裁判所の番号が出ていても、それだけで本物とは言えません。警察を名乗る電話に回される流れは、警察をかたる「口座凍結」の電話とよく似ています。
裁判所は、こうした電話について次のように書いています。
- 裁判所から電話で、裁判所への出頭を求めたり、裁判が起こされたことを知らせたりすることはない。
- 電話で金銭の振り込みを求めることはない。電話で解決金などを要求することもない。
- 守秘義務などと言って、事件の当事者に相談を禁じることはない。
「訴訟最終通知」などのはがき・封書の例
電話の前に、はがきや封書が届くこともあります。法務省によると、「法務省管轄支局 国民訴訟通達センター」「法務省管轄支局 民事訴訟管理センター」などの名前で「少額消費料金未納に関する訴訟最終告知」といったはがき・封書が届いています。財産の差押えをほのめかして電話をかけさせ、弁護士の紹介費用などの名目でお金をだまし取る手口です。法務省は、これらの団体と法務省は一切関係がないとしています。
裁判所のサイトの「郵便物の例」(2025年11月更新)にも、次のようなものが載っています。
- 「裁判所書記官室」名義で、訴訟が起こされたと知らせるはがき
- 「民事訴訟管理センター」名義の「総合消費料金未納分訴訟最終通知書」
- 「法務省管理局」「日本民事保全協会」などを名乗り、給与などを差し押さえるとほのめかすもの
裁判所は「はがきで裁判所に電話をするよう求めたり,裁判が起こされたことや強制執行の開始をはがきでお知らせすることはありません」としています。「未納料金」を口実にする架空請求の全体像は、「未納料金があります」の架空請求で説明しています。
本物の裁判所の書類はこう届く
法務省の「督促手続・少額訴訟Q&A」や注意喚起によると、本物には次の特徴があります。
| 見るところ | 本物の裁判所の書類 | かたりの例 |
|---|---|---|
| 届き方 | 「特別送達」と書かれた、裁判所の名前入りの封書。郵便職員が手渡しし、「郵便送達報告書」への署名や押印を求める | ポストに入るはがき・普通の封書、メール、SNSのメッセージ |
| 差出人 | 実在する裁判所の名前 | 「〇〇センター」「法務省管轄支局」「〇〇協会」など |
| 振込先 | 支払督促に、お金を振り込む預金口座は書かれない | 口座番号が書いてある、電話で振込先を伝える |
| 連絡のしかた | 電話で訴訟を知らせたり、支払いを求めたりしない | 「至急連絡を」「本日中に」とせかす |
振込先の口座が書いてある「支払督促」は、法務省のQ&Aにしたがえば架空請求です。
「本物かもしれない」ときの確かめ方
ややこしいのは、身に覚えのない請求でも、本物の裁判所の手続きが使われることがある点です。法務省によると、架空請求に支払督促や少額訴訟の手続きを悪用するケースがあります。裁判所は支払督促を出す段階では請求が正しいかどうかを判断しないため、架空であることは受け取った人が自分で申し立てる必要があります。
裁判所の説明では、支払督促を受け取ってから2週間以内に「督促異議の申立て」ができます。異議を出さないと、相手は仮執行宣言を申し立てることができ、仮執行宣言が出ると強制執行を申し立てられるようになります。法務省も、本物の書類を放っておくと、強制執行されるなどの不利益を受けるおそれがあると注意しています。
「特別送達」の封書を手渡しで受け取ったときは、次の順で確かめてください。
- 書類に書いてある電話番号にはかけない。法務省は、個人情報が漏れるおそれがあるとしています。
- 最高裁判所のホームページで、書類に書かれた裁判所の連絡先を自分で調べ、その番号に「この事件は本当にあるか」を問い合わせる。
- 本物だった場合、支払督促なら2週間以内に督促異議を申し立てる。少額訴訟なら、決められた日に出頭するか、前もって答弁書を出す。
- 偽物だった場合、相手に連絡する必要はありません。不安が残るときは消費生活センター(188)に相談します。
電話がかかってきた・はがきが届いたときにやること
- 電話はその場で切る。「○を押してください」という自動音声でも、ボタンを押さずに切ります。「誰にも相談するな」と言われても、それは本物の裁判所の言い方ではありません。
- はがき・封書に書いてある番号にはかけない。はがきは捨てずにとっておきます。
- 気になるときは、自分で調べた最寄りの裁判所へ問い合わせる。裁判所は、不審な電話や郵便物が届いたら最寄りの裁判所に相談するよう呼びかけています。
- 相談する。法務省は、届いたはがきや封書を持って最寄りの警察署か交番に相談することと、消費者ホットライン188への相談を案内しています。お金を払ってしまったときは、すぐに警察署へ行ってください。いつ・何と言われたかを被害整理メモにまとめておくと、相談のときに伝えやすくなります。
- かかってきた番号を調べる。番号検索で、同じ番号の口コミが寄せられていないか確認できます。ただし、実在する裁判所の番号が使われた例もあるので、検索結果だけで本物と決めないでください。
参考
この記事は2026年9月に、以下の公開情報をもとに書きました。
- 裁判所「裁判所や裁判所職員を騙る詐欺に御注意ください」
https://www.courts.go.jp/about/topics/hushinmail_soumu/index.html - 裁判所「電話の例」
https://www.courts.go.jp/about/topics/denwa/index.html - 裁判所「実在する裁判所の電話番号を悪用した不審な電話等に御注意ください。」(2025年7月掲載・10月更新)
https://www.courts.go.jp/about/topics/denwa/fushin_denwa_r7_7/index.html - 裁判所「裁判所の職員を名乗り、裁判所に来るように求めるなどの不審な電話に御注意ください。」
https://www.courts.go.jp/about/topics/denwa/fushin_denwa_r7/index.html - 裁判所「『東京簡易裁判所の書記官』等を名乗る、裁判所への来訪を求めたり、金銭の振り込みを求める内容の不審な電話にご注意ください」
https://www.courts.go.jp/about/topics/fushinnadenwa/index.html - 裁判所「郵便物の例」(2025年11月更新)
https://www.courts.go.jp/about/topics/yuubinbutu/index.html - 裁判所「『地方裁判所』の名前を騙る、はがき記載の連絡先に電話をするよう促すはがきに御注意ください。」
https://www.courts.go.jp/about/topics/hagaki-chuui/index.html - 裁判所「支払督促」
https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_minzi/minzi_25_22/index.html - 法務省「法務省の名称等を不正に使用した架空請求により被害が発生しています」
https://www.moj.go.jp/hisho/kouhou/hisho06_00434.html - 法務省「督促手続・少額訴訟手続を悪用した架空請求にご注意ください」
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji68.html - 法務省「督促手続・少額訴訟Q&A」
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji68-3.html
※手口の例は、2026年9月時点で裁判所・法務省の公式サイトに載っているものです。手口は変わることがあると裁判所も書いています。個別の事件が本物かどうかや、異議の出し方などの手続きは、自分で調べた裁判所の窓口か消費生活センター(188)に確かめてください。この記事は法律上の助言ではありません。