「未納料金があります」「法的措置をとります」——身に覚えのない請求が、SMSでも固定電話でもハガキでも届きます。この記事では、国民生活センターが2026年7月31日に更新した架空請求の相談件数と最近の事例、警察庁が紹介している「裁判」「返金」「身辺調査」を使った脅し方、「探偵」「調査会社」を名乗られたときに法律で確かめられること、そして今日からできる5つの対処と電話の設定をまとめます。
相談件数(PIO-NET登録分)
国民生活センターが公表している、PIO-NETに登録された架空請求に関する相談件数です。
- 2023年度… 16,359件
- 2024年度… 16,566件
- 2025年度… 8,546件
- 2026年度… 1,056件(前年同期 1,156件)
数字を読むときの注意点が、出典にも明記されています。これらは2026年5月31日現在の登録分であり、消費生活センター等からの経由相談は含まれていません。2026年度は年度の途中なので、前年同期の1,156件と並べて見るのが正しい読み方です。
最近の相談事例——固定電話が狙われている
公表されている最近の事例5件のうち、3件は電話が入口です。
- 自宅の固定電話に契約中の電話会社を名乗って「2時間後に電話が止まる」と電話があった。オペレーターに名前や住所等の個人情報を伝えてしまった。
- 総務省の名前をかたり、未納料金があるとの電話が固定電話にかかってきた。
- スマートフォンに、契約していない電力会社から「未払いがある」というメールが届いた。
- スマートフォンのSMSに「クレジットカードの料金未納」とのメッセージが届く。覚えがない。
- 収納代行業者を名乗る着信があり、「有料サイト利用料金が未納なので法的措置をとる」と連絡があった。海外から発信されているようだった。
電話会社、総務省、電力会社、カード会社、収納代行業者——名乗りはばらばらですが、「未納」と「止まる/法的措置」の組み合わせという点で共通しています。最後の事例のように海外から発信されている着信もあります。海外からの知らない番号についてはワン切り・コールバック詐欺もあわせてご覧ください。電話会社を名乗る「回線が止まる」型はNTTを装う回線停止詐欺の手口と対策で詳しく扱っています。
脅し文句のパターンは決まっている
国民生活センターは、請求ハガキや電子メール等に書かれる不安をあおる文句として、次のものを挙げています。
- 「自宅へ出向く」
- 「勤務先を調査」
- 「執行官の立会いの下、給与・動産・不動産の差し押さえ」
- 「強制執行」
- 「信用情報機関に登録」
また「消費料金に関する訴訟最終告知」など、請求内容がよく分からないハガキが送られてくる場合もあります。書かれた電話番号に連絡しないと訴訟や差し押さえを執行すると書かれており、実際に連絡すると、訴訟の取り下げ費用等と称して料金を請求されます。
警察庁が紹介する手口——「裁判」「返金」「身辺調査」
警察庁の特殊詐欺対策ページ(SOS47)は、この手口を「架空料金請求詐欺」と呼び、「未払いの料金があるなど架空の事実を口実とし金銭等をだまし取る(脅し取る)手口」と説明しています。入口はSMSや、法務省や裁判所などの名称で自宅に届くハガキです。そこに書かれた番号に電話をかけると、次のように言われます。
- 「払わなければ裁判になる」
- 「今日払えば大半が返金される」
- 「保険が使えるから全額返金される」——警察庁は、これらはすべて支払わせるための嘘だと明記しています。
同じページに載っている実際の架空請求メールの文面には、「個人調査の開始」「身辺調査及び弊社回収員による訪問回収」「少額訴訟裁判の強制執行」といった言葉が並びます。「あなたのことを調べる」という脅しは、架空請求の定番の一部です。
警察庁は、見分けに役立つ事実もはっきり書いています。
- 事業者、法務省や裁判所などが「未納料金などの支払い」の名目で、コンビニで電子マネー(プリペイドカード)を買わせることは絶対にない。
- 裁判所が電子メールで折り返しの電話や連絡を求めたり、裁判が起こされたことを知らせたりすることはない。
- ハガキにある「法務省管轄支局民間訴訟告知センター」「法務省管轄支局国民訴訟通達センター」等の団体は、法務省とは一切関係がない。
「探偵」「調査会社」を名乗られたら——法律で確かめられること
電話の相手が「探偵」「調査会社」を名乗り、「調査が入っている」「調査費用を払え」と言ってきた場合に備えて、法律の中身を知っておくと役に立ちます。探偵業には探偵業の業務の適正化に関する法律(平成18年法律第60号)があり、正規の探偵業者には次の義務があります。
- 探偵業務は「他人の依頼を受けて」行うもので、調査結果は依頼者に報告する業務と定義されています(第2条)。
- 営業所ごとに、所在地を管轄する都道府県公安委員会に届出をしなければなりません(第4条)。
- 依頼者と契約する前に、書面を渡して説明しなければなりません。説明する事項には、届出をした公安委員会の名称や、依頼者が払う金銭の概算額と支払時期が含まれます(第8条)。
- 届出をしたことを示す標識を営業所に掲示し、原則としてインターネットでも公開しなければなりません(第12条第2項)。
つまり、探偵業者にお金を払う関係になるのは自分が依頼して、書面の説明を受けて契約したときです。依頼した覚えがないのに電話一本で調査費用などを求められたら、その場で払わず、書かれた番号にもかけ直さないでください。「勤務先を調査」「身辺調査」は、国民生活センターと警察庁が架空請求の脅し文句として挙げている言葉です。
支払い方法にも特徴がある
国民生活センターの集計ページには、支払い方法も口座への振込だけではなく、プリペイドカードによる方法や、詐欺業者が消費者に「支払番号」を伝えてコンビニのレジでお金を支払わせる方法等さまざまだと書かれています。
コンビニで電子マネーを買ってカード番号を伝える、コンビニのレジで「支払番号」を使って払う——この2つが出てきたら、手を止めてください。前述のとおり、警察庁は未納料金の支払いで電子マネーを買わせることは「絶対にありません」と書いています。
5つの対処
国民生活センターのアドバイスは、次の5つです。
- 利用していなければ連絡しない。請求ハガキ等に書いてある電話番号等には決して連絡しない
- 最寄りの消費生活センターへ相談する。判断がつかない、不安だという場合は、相手に連絡する前・料金を支払う前に相談する。「裁判所からの支払督促」や「少額訴訟の呼出状」と思われるものは、真偽の判断が難しいので放置せず、すぐ相談する
- これ以上、電話番号などの個人的な情報は知らせない。新たな情報を知られると、別の手段で請求してくることが予想される
- 証拠は保管しておく。請求ハガキ、封書、電子メール等は残しておく
- 警察へ届け出をする。根拠のない悪質な取り立ての場合
1番と3番は、電話番号を調べるサイトとして特に強調したい点です。国民生活センターは、ハガキなら名前と住所、メールやSMSならメールアドレスや電話番号を、相手はすでに知っていると説明しています。そのうえで新たに個人的な情報を知られると、別の手段で請求してくることが予想されるとも書いています。知らない番号にかけ直さないことが、情報を渡さない第一歩です。
電話の設定でできること
警察庁は、架空料金請求詐欺の対策として次の設定と行動を挙げています。
- 固定電話への国際電話の着信をブロックする
- 携帯電話は、知らない番号を着信拒否に設定する
- 本物か迷ったら、最寄りの警察署にかけ直して本物かを確かめる
かけ直す先は、ハガキやSMS、電話の相手が伝えてきた番号ではなく、自分で調べた番号にしてください。
具体的な設定方法は迷惑電話をブロックする方法にまとめています。
困ったときの相談先
- 消費者ホットライン 188
- 警察相談専用窓口 #9110
たった今お金を払ってしまった、相手が家に来ると言っているなど、事件や事故として緊急の場合は 110番に通報してください(警視庁「事件事故等、緊急の場合は110番通報をお願いします。」)。
着信した番号は番号検索で調べられます。あわせて自動音声の電話:危ないのは「操作させる」タイプです、被害の整理は被害整理メモ・相談窓口をご覧ください。
参考
この記事は2026年9月に、以下の公開情報をもとに書きました。件数・事例・脅し文句・アドバイス・法律の内容は出典のとおりです。
- 国民生活センター「架空請求(各種相談の件数や傾向)」(2026年7月31日更新)
https://www.kokusen.go.jp/soudan_topics/data/kakuseikyu.html - 国民生活センター「『利用した覚えのない請求(架空請求)』が横行しています」(2026年5月27日更新)
https://www.kokusen.go.jp/soudan_now/data/kaku-seikyu.html - 警察庁・SOS47特殊詐欺対策ページ「架空料金請求詐欺」
https://www.npa.go.jp/bureau/safetylife/sos47/case/fictitious-billing/ - e-Gov法令検索「探偵業の業務の適正化に関する法律」(平成18年法律第60号)
https://laws.e-gov.go.jp/law/418AC1000000060 - 警視庁「警視庁総合相談センター」(2026年9月18日更新)
https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/sodan/madoguchi/sogo.html
※相談件数は2026年5月31日現在のPIO-NET登録分で、消費生活センター等からの経由相談は含まれていません。事例・脅し文句・支払い方法・アドバイスは国民生活センター、手口の説明・対策・相談窓口は警察庁の公表資料、110番の案内は警視庁の公表資料、探偵業者の義務は法律の条文(2026年9月時点で閲覧したもの)によります。法律の説明は要点のみで、例外規定は省いています。