「近くで工事をしているので、お宅の屋根を無料で点検します」「分電盤(または給湯器、排水管)の点検に伺います」。こうした電話が来たら、その場で点検の日を決めず、いったん切って大丈夫です。依頼していない点検の電話は、国民生活センターが注意を呼びかけている「点検商法」の入口になることがあります。契約してしまった場合でも、自宅で契約したときは書面を受け取った日から8日以内ならクーリング・オフできる場合があります。
この記事では、国民生活センターと消費者庁の公開情報をもとに、点検の電話から契約までの流れ、よく使われる言い方、断り方、契約した後にできることをまとめます。
点検商法の相談は年間およそ2万件
点検商法とは、「無料で点検する」などと言って家に来て、点検のあとに「このままだと危ない」と不安をあおり、工事や商品の契約をさせる手口です。国民生活センターによると、全国の消費生活センター等に寄せられた点検商法の相談は次のとおりです。
| 年度 | 点検商法の相談件数 |
|---|---|
| 2023年度 | 12,550件 |
| 2024年度 | 19,249件 |
| 2025年度 | 19,696件 |
| 2026年度 | 2,193件(2026年5月31日現在。前年同期は2,012件) |
なかでも多いのが屋根工事です。2022年度の屋根工事の点検商法の相談は2,885件で、2018年度(923件)の約3倍でした。契約した人の8割超が60歳以上で、2022年度の契約金額は平均で約132万円です。排水管の洗浄サービスの相談も2019年度に2,149件寄せられており、「無料点検」のはずが洗浄を勧められたという相談が紹介されています。
電話が入口になる例
点検商法は突然の訪問から始まることも多いですが、電話で点検の日時を取り付けてから家に来る例もあります。国民生活センターが紹介している相談には、次のようなものがあります。
- 給湯器: 「給湯器を点検する」と電話があり、訪問した業者に高額なメンテナンス契約を勧められて契約したが、メーカーの保証期間内だったと後で分かった。
- 分電盤: 契約している電力会社の委託だと名乗る業者が「分電盤が古いので漏電する可能性もある」と説明し、90代の男性が約23万円で交換工事を契約した。後で電力会社に確認すると関係がなかった。
「分電盤の点検に行きます」の電話から始まる勧誘の相談は、2024年11月30日までの登録分で461件と、2023年度の同じ時期の約25倍に急増しました。国民生活センターは「電話等で点検を持ち掛ける業者には安易に点検させないようにしましょう」と呼びかけています。
よく使われる言い方(屋根工事の例)
国民生活センターは、屋根工事の点検商法で実際に使われた言い方を紹介しています。電話で同じような言葉を聞いたら注意してください。
点検のきっかけを作る
- 「近くで工事をしている者です」「工事の挨拶に来ました」
- 「屋根が浮いているみたいですね。無料で点検してあげます」
- 「近所をドローンで撮影していたら屋根が傷んでいるのが見えました」
不安をあおる
- 「このままだと台風が来たら雨漏りしますよ」「瓦が飛んで近所の人にも迷惑がかかってしまいます」
見せられる写真や動画が、業者があらかじめ用意したものだった場合もあります。
負担が軽いと思わせる・次々に勧める
- 「この場で契約するなら特別に安くしますよ」「保険申請の手続きもしてあげます」
- 「外壁も傷んでいて工事が必要だ」
経年劣化による傷みは、火災保険などの支払いの対象になりません。うその理由で保険金を請求すると、保険金の返還を求められたり、詐欺罪に問われたりするおそれがあります。保険金のことは、業者ではなく自分が契約している保険会社か代理店に直接たずねてください。
電話が来たときの断り方
- その場で日時を決めない。「点検は頼んでいません」「必要なら自分で業者を探します」と伝えて切ります。理由を詳しく説明する必要はありません。
- 名乗りを聞き、自分で確かめる。電力会社やメーカーの名前を出されたら、請求書や取扱説明書に載っている番号へ自分でかけて、本当に点検の予定があるか確かめます。電話で言われた番号にはかけ直しません。
- はっきり断る。特定商取引法では、電話勧誘販売の事業者は最初に事業者名・担当者名・商品の種類・勧誘の目的を告げなければならず、契約しないと伝えた人への勧誘の継続や再勧誘は禁止されています。家に来た場合も、契約の意思がないと伝えたあとで勧誘を続けることは禁止されています。
- 家族に話す。屋根工事の点検商法では、契約した人の8割超が60歳以上です。離れて暮らす家族の電話にも気を配ってください(高齢の家族を電話の詐欺から守る方法)。
本当に点検が必要か気になるときは、家を建てた工務店などに相談し、複数の会社から見積もりを取って比べることを国民生活センターは勧めています。営業電話全般の断り方は営業電話の断り方にまとめています。
契約してしまったときにできること
- クーリング・オフ: 自宅など営業所以外の場所で契約した場合は、特定商取引法の「訪問販売」にあたることがあります。その場合、法律で決められた書面を受け取った日から8日以内なら、書面か電磁的記録(メールなど)で契約を解除できます。電話で申し込んだ場合(電話勧誘販売)も、書面を受け取った日から8日以内ならクーリング・オフできます。
- 8日を過ぎても取り消せる場合: 契約の大事な部分について事実と違うことを言われ、誤解して契約した場合は、誤解に気づいた時から1年間、または契約した時から5年間は取り消せる場合があります。
- 過量販売: 普通に必要な量を大きく超える契約をさせられた場合は、契約から1年間は解除できることがあります。
どれが使えるかは契約の内容によって変わります。自分で判断せず、契約書面・見積書・写真などを手元にそろえて、早めに消費者ホットライン188(最寄りの消費生活センターにつながります)へ相談してください。住宅リフォームの工事内容や費用は、住宅リフォーム・紛争処理支援センターの「住まいるダイヤル」(0570-016-100)でも相談できます。いつ・誰から・どんな電話があったかは、被害整理メモで書き留めておくと相談がスムーズです。
まとめ:頼んでいない点検の電話は、切ってから自分で確かめる
「無料で点検」「近くで工事をしている」「電力会社の委託です」という電話で点検の日を決めるのはやめましょう。いったん切って、名乗った会社には自分で調べた番号へかけて確かめてください。契約してしまったら8日以内に188へ。かかってきた番号が気になるときは、番号検索でほかの人の口コミを確かめられます。
参考
この記事は2026年9月に、以下の公開情報をもとに書きました。
- 国民生活センター「訪問販売によるリフォーム工事・点検商法」(2026年7月31日更新)
https://www.kokusen.go.jp/soudan_topics/data/reformtenken.html - 国民生活センター「『分電盤の点検に行きます』の電話から始まる勧誘に注意-2024年度に急増しています-」(2025年1月15日)
https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20250115_1.html - 国民生活センター「屋根工事の点検商法のトラブルが増えています-典型的な勧誘トークを知っておくことで防げます!-」(2023年10月11日)
https://www.kokusen.go.jp/pdf/n-20231011_1.pdf - 国民生活センター「排水管の点検や洗浄の勧誘にご注意!」(2020年10月15日)
https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20201015_1.html - 消費者庁 特定商取引法ガイド「訪問販売」
https://www.no-trouble.caa.go.jp/what/doortodoorsales/ - 消費者庁 特定商取引法ガイド「電話勧誘販売」
https://www.no-trouble.caa.go.jp/what/telemarketing/
※相談件数は国民生活センターの PIO-NET(全国消費生活情報ネットワークシステム)に登録された件数で、それぞれの出典に書かれた時点のものです(点検商法全体は2026年5月31日現在、屋根工事は2023年8月31日までの登録分、分電盤は2024年11月30日までの登録分)。クーリング・オフや取消しが使えるかは契約ごとに異なるため、消費生活センター(188)で確認してください。