結論: 日本の家庭のFAX保有率は、総務省の調査で平成8年末の20.7%から平成16年末の52.9%まで伸びました。「書面・押印・対面」を前提にした手続きがFAXの出番を支え、2020年以降に国がその見直しを進めています。この記事では、確かめられる数字と公式資料だけで「なぜ残ったか」を整理し、2026年10月の今、FAXがどの回線で使えるか、知らない番号から届くFAXをどう扱うかまでをまとめます。
数字で見る「FAXが家に来た時代」
FAXは会社の機械という印象がありますが、総務省の通信利用動向調査では、家庭にも広く入っていたことが分かります。平成17年版の情報通信白書は、世帯の主な情報通信機器の保有率の推移を次のように示しています。
| 時点(年末) | ファクシミリ | 携帯電話 | パソコン |
|---|---|---|---|
| 平成8年(1996年) | 20.7% | 24.9% | 22.3% |
| 平成12年(2000年) | 40.4% | 75.4% | 50.5% |
| 平成14年(2002年) | 50.8% | 86.1% | 71.7% |
| 平成15年(2003年) | 53.9% | 93.9% | 78.2% |
| 平成16年(2004年) | 52.9% | 91.1% | 77.5% |
平成15年末には、世帯の半分以上がFAXを持っていました。携帯電話やパソコンが一気に広がった時期に、FAXも同じように増えていたことが、この表から読み取れます。
一方、いまの家庭では固定電話そのものが減っています。令和7年通信利用動向調査(令和7年8月末時点)では、固定電話の世帯保有率は53.6%で、平成28年の72.2%から18.6ポイント下がっています。FAXは固定電話の回線を使う機器なので、家庭のFAXも固定電話と同じ流れの中にあります。
残った理由1:「書面・押印・対面」が手続きの前提だった
FAXが長く使われた背景としてはっきり確かめられるのは、行政や取引の手続きが紙の書面と押印を前提にしていたことです。2020年7月8日、内閣府・規制改革推進会議と経済4団体は「『書面、押印、対面』を原則とした制度・慣行・意識の抜本的見直しに向けた共同宣言」を出しました。宣言は、これらを「社会課題として顕在化した」ものと書き、各府省に対して、書面主義・押印原則・対面主義を求めるすべての行政手続を原則デジタル化する方向で、法令・告示・通達などの見直しを求めています。
紙に書いて判を押した書類を、その日のうちに相手へ届けるには、郵送よりFAXが早い。手続きが紙と押印を求める限り、FAXはその「速達の道具」として役割を持ち続けました。逆に言えば、FAXが減るかどうかは機械の新旧より、手続きのルールが変わるかどうかに左右されます。
残った理由2:現場の「届け出の道」がFAXだった(新型コロナの例)
FAXの問題がはっきり表に出たのが、新型コロナウイルス感染症の発生届です。厚生労働省は、医療機関から保健所への発生届について、資料の中で「当初は FAX が主流であった」と書いています。そのうえで、パソコンやタブレットから入力できる新しい仕組み(HER-SYS)への切り替えを進め、「全国的に HER-SYS による提出が主流となっている」としました。
同じ資料は、紙を用いた運用で「資料の紛失や転記ミスといった事案が発生した」とも書いています。FAXで届いた紙を見て別の仕組みに打ち直す作業が、急ぐ場面で負担と誤りの元になったということです。FAXは「送る側には簡単」ですが、受け取った側の整理と入力に手間が残る、という弱点がここで見えました。
今(2026年10月)、FAXはどの回線で使えるか
家庭やお店でFAXを使い続けている人にとって大事なのは、電話回線の切り替えです。NTT東日本・西日本の固定電話はIP網への移行が進んでいます。
- ふつうのFAX(G3):NTT東日本は、ひかり電話で「アナログ回線用の機器(G3FAX)はご利用いただけます」と案内しています。ただし、高速な「スーパーG3」のモードは「通信環境によりご利用いただけない場合があります」と案内されています。
- ISDN専用のFAX(G4):同じ案内で「ISDN回線専用の機器(G4FAX)はご利用いただくことができません」と案内されています。INSネット(ISDN)はNTT西日本の案内で2028年12月31日にサービス提供を終了し、移行の間に使われている「補完策」のデータ通信もその対象に含まれます。
- メタル回線の加入電話:NTT西日本は、メタル設備を使った加入電話について「2035年頃までに、光回線/モバイル回線を用いたサービスへの移行を段階的に実施」すると案内し、代わりに光回線電話・ワイヤレス固定電話・ひかり電話(いずれもIP電話サービス)を提供するとしています。
FAXを使っている人は、機械の取扱説明書で「G3」か「G4」かを確かめておくと、回線を変えるときに慌てずに済みます。ひかり電話と昔からの加入電話の違い(停電時の扱いなど)は、ひかり電話と加入電話の違いにまとめています。
FAX番号は電話番号と同じ形をしている
電話番号を調べるサイトとして付け加えておきたいのは、FAX番号も「03-」などの市外局番から始まる、ふつうの固定電話の番号だという点です。番号の形だけでは、それが電話用かFAX用かは分かりません。例えば東京23区の番号は03で始まる番号の形をしていますが、その中に電話の番号もFAXの番号も混ざっています。番号の形と種類の見分け方は電話番号の仕組みで解説しています。
このため、知らない番号から電話がかかってきて、出ると「ピー」という信号音だけが聞こえることがあります。相手がFAX機で、送り先の番号を打ち間違えたか、送り先の一覧にこちらの番号が入っている場合です。電話機で受けている家庭では、この音が続いたら切って構いません。何度も続くときは、着信の日時と番号を控えておくと、後で相談するときに役立ちます。
頼んでいない広告FAXのルール
通信販売の広告をFAXで送ることには、法律のルールがあります。特定商取引法第12条の5は、販売業者などが、相手の「承諾を得ないでファクシミリ広告」をしてはならないと定めています。相手から請求があった場合や、すでに申込み・契約をした相手に一定の形で送る場合などが例外です。
- 頼んでいない通販の広告FAXが何度も届く場合、記載の連絡先にはかけ直さず、届いた日時と送り主の名前を控えておく。
- 「配信停止はこちらへ」と書かれた番号にかけるときは、料金のかかる番号(0570など)でないかを先に確かめる。
- 困ったら消費者ホットライン188(いやや)に相談する。
電話の勧誘を断った後の扱いは特定商取引法の電話勧誘ルールで、番号がどこから広告業者に渡るのかは名簿業者から電話番号が流出する仕組みで説明しています。
FAXに書かれた番号にかけ直す前に
「未払いがあります」「至急ご連絡ください」といった文面のFAXが届いても、そこに書かれた番号にすぐ電話してはいけません。FAXはだれでも送れるので、紙に書かれた会社名や番号が本物である保証はありません。
- FAXに書かれた番号には、すぐにはかけない。
- 書かれている番号を番号検索で調べ、口コミや公開情報を確かめる(番号から分かることの範囲は電話番号の逆引きを参照)。
- 取引先や役所を名乗っている場合は、公式サイトや手元の書類で自分で調べた番号にかけて確かめる。
- お金の話が出たら、家族や消費者ホットライン188に相談する。詐欺の疑いがあれば警察相談専用電話 #9110 へ。
参考
この記事は2026年10月に、以下の公開情報をもとに書きました。
- 総務省「平成17年版 情報通信白書」第2章第7節 家庭の情報化
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h17/pdf/H2070000.pdf - 総務省「令和7年通信利用動向調査 ポイント」(令和8年5月29日公表)
https://www.soumu.go.jp/main_content/001074767.pdf - 内閣府ほか「『書面、押印、対面』を原則とした制度・慣行・意識の抜本的見直しに向けた共同宣言」(2020年7月8日)
https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/publication/document/200708document01.pdf - 厚生労働省「新型コロナウイルス感染症に係る保健所の業務に関する今後の取組について」
https://www.mhlw.go.jp/content/000838792.pdf - 厚生労働省 HER-SYS 説明資料
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000728154.pdf - NTT東日本 よくあるご質問「ひかり電話でFAXは使用できるのですか?」
https://faq.ntt-east.co.jp/kb/article/ひかり電話でFAXは使用できるのですか?/ - NTT西日本「INSネットのサービス終了について」
https://www.ntt-west.co.jp/denwa/2028ins/ - NTT西日本「加入電話(固定電話)」の移行のご案内(2026年9月1日時点)
https://www.ntt-west.co.jp/denwa/2035denwa/ - e-Gov法令検索「特定商取引に関する法律」(第12条の5)
https://laws.e-gov.go.jp/law/351AC0000000057
※FAXの保有率は総務省「通信利用動向調査」の世帯の数字(各年末時点、平成8年〜16年)です。平成17年以降のFAX保有率は、今回確認した総務省の公表資料に項目がなかったため載せていません。固定電話の保有率は令和7年8月末時点です。回線の提供終了時期は2026年10月時点の各社の案内によります。