「医療費の払い戻しがあります」「未払いの医療費があります」——病院や自治体の窓口を名乗ってかかってくる電話があります。名乗られた医療機関や役所が実在することも多く、番号だけでは判断できません。この記事では、警察庁が紹介している医療費・保険料を口実にした手口の流れ、電話で言われたら止まるべき言葉、かかってきた電話の確かめ方、電話機の設定でできる予防策、困ったときの相談先をまとめます。
電話でお金の話が出たら、いったん切る
判断の基準はひとつです。警察庁の特殊詐欺対策ページ(SOS47)は「電話でお金の話が出たら、一旦電話を切り、すぐに家族などに相談しましょう!」と呼びかけています。病院・診療所・役所を名乗っていても、この基準は変わりません。
医療費・保険料を口実にした手口の流れ
警察庁は、医療費や保険料を口実にした手口として次の2つを紹介しています。
還付金詐欺:ATMへ行かせて、犯人の口座へ振り込ませる
自治体、税務署、年金事務所の職員などを名乗り、医療費・保険料の過払い金や未払いの年金があるなど「お金を受け取れる」という電話をかけてきます。払い戻しには期限があると焦らせ、今すぐ携帯電話を持って近くのATMへ行くよう指示します。ATMに着いたら電話で操作を指示され、言われたとおりにボタンを押すと、実際には犯人側の口座にお金を振り込んでしまいます。
警察庁のページには、はっきりこう書かれています。「ATMでお金が返ってくることは、絶対にありません。」
警察庁の確定値では、令和7年の還付金詐欺は認知件数3,179件、被害額61.9億円でした。警察庁は、還付金詐欺の大半は固定電話にかかってきたものだとしています。警察庁と金融庁は連名で全国銀行協会などに協力を求め、「ATMでの携帯電話の通話は、しない、させない」を社会の常識にする「ストップ!ATMでの携帯電話」運動を全国で展開しています。
預貯金詐欺:キャッシュカードを取りに来る
自治体などの職員を名乗って「医療費(保険料)の払い戻しがあるので、キャッシュカードの確認や取り替えが必要」と電話があり、その後銀行協会などを名乗る別の人物から「カードを取りに行く」「手続きのため暗証番号を教えてほしい」と電話が来る手口です。警察庁は「自治体、銀行協会などの職員が暗証番号を聞いたり、キャッシュカードを預かりに来ることは絶対にありません」としています。
市役所や自治体を名乗る還付金の電話は、市役所の医療費還付詐欺の手口と対策でも詳しく扱っています。
電話で言われたら止まるべき言葉
- 「医療費(保険料)の払い戻しがあります」「期限は今日までです」… 還付金詐欺の入り口です
- 「携帯電話を持ってATMへ行ってください」… ATMでお金が返ってくることは絶対にありません
- 「暗証番号を教えてください」「キャッシュカードを取りに行きます」… 自治体や銀行協会の職員が暗証番号を聞いたり、カードを預かりに来たりすることは絶対にありません
- 「コンビニで電子マネーカードを買って、番号を教えてください」… 警察庁は「電話で電子マネーカードの話が出てきたら、絶対に詐欺です」としています
その場で答えない。切って、自分で調べた番号にかけ直す
いちばん確実な確認方法は、かかってきた番号や、相手が伝えてきた番号にかけ直さないことです。警察庁も「最寄りの警察署にかけ直して本物かを確認」「家族にかけ直して本物かを確認」を挙げています。
- 一度電話を切る。「こちらからかけ直します」と言って切って構いません
- 診察券・領収書・届いている郵便物、またはその医療機関や自治体の公式サイトに載っている番号を自分で確認する
- 自分で調べた番号にかけて、そのような連絡をしたか尋ねる。迷ったら家族や最寄りの警察署に相談する
住所や予定を聞き出すだけの電話もある
その場ではお金を求めず、個人情報だけを確かめる電話もあります。警察庁は、住所や氏名、資産、利用している金融機関などを探る特殊詐欺が疑われる電話を「予兆電話」として数えており、令和7年は331,653件でした。国民生活センターが2021年5月に公表した相談事例では、80歳代の方のもとに自治体職員を名乗って「新型コロナワクチン接種の申し込みを受け付けた。役員が説明に伺うので都合のいい日を教えてほしい。住所はこれで合っているか」という電話があり、予約していないのに住所の確認と訪問の約束をしてしまったケースが紹介されています。
国民生活センターは当時、「ワクチン接種は無料です」とし、行政機関や団体が接種に必要だとして個人情報や金融機関情報を電話やメールで聞くことはないので答えないよう呼びかけていました。名目が健康診断や予防接種であっても、電話で住所・在宅の予定・口座などを聞かれたら答えず、いったん切って自分で確かめるのが安全です。
電話機の設定で、そもそも話さない
警察庁は「特殊詐欺の被害にあわないためには、犯人と話さないことが一番効果的」としています。次のような備えが紹介されています。
| 備え | 中身(警察庁SOS47の記載) |
|---|---|
| 番号表示・非通知拒否サービス(固定電話) | 出る前に相手の番号が表示される。非通知の電話には音声メッセージが応答する。NTT東日本・NTT西日本では、70歳以上の方か70歳以上の方と同居している契約者は、申し込めば月額利用料・工事費が無料(条件あり) |
| 防犯機能付き電話 | 自動通話録音や、鳴る前に「この通話は防犯のために録音されます」などの警告を流す機能がある |
| 国際電話の着信ブロック | 令和7年中に特殊詐欺に使われた電話番号の約75.5%が国際電話番号。固定電話は国際電話不取扱受付センター(0120-210-364)などで利用休止を申し込める |
| 携帯電話の着信設定 | 非通知・電話帳にない番号からの着信を拒否する。留守番電話機能を使い、録音メッセージで相手がわかってからかけ直す |
| ATMの利用限度額 | 限度額を低く設定しておく |
かかってきた番号を確かめる
心当たりのない番号は、かけ直す前に番号検索で調べてください。同じ番号に他の人からの報告が集まっていることがあります。「+」から始まる国際電話番号で病院や役所を名乗る電話が来たら、特に注意してください。
相談先
- 警察相談専用電話「#9110」… 詐欺かもしれないと不安なとき
- 消費者ホットライン「188」… 身近な消費生活センターや消費生活相談窓口を案内してもらえます
お金を振り込んでしまった場合は、金融庁の案内どおり、すぐに警察(お近くの警察署または#9110)と振込先の金融機関に連絡してください。被害の整理は被害整理メモ・相談窓口にまとめています。
まとめ
- 病院や役所を名乗っていても、電話でお金の話が出たら一旦切り、家族などに相談する(警察庁)
- ATMでお金が返ってくることは絶対にない。「携帯を持ってATMへ」と言われたら詐欺
- 暗証番号を聞く・カードを取りに来る・電子マネーを買わせる電話にも応じない
- 自分で調べた番号にかけ直す。相手が伝えた番号は使わない
- 番号表示・非通知拒否、防犯機能付き電話、国際電話ブロックで犯人と話さない
- 相談は#9110/188。振り込んでしまったら警察と振込先の金融機関へ
参考
この記事は2026年9月に、以下の公開情報をもとに書きました。
- 警察庁・SOS47特殊詐欺対策ページ「還付金詐欺」
https://www.npa.go.jp/bureau/safetylife/sos47/case/refund/ - 警察庁・SOS47特殊詐欺対策ページ「預貯金詐欺」
https://www.npa.go.jp/bureau/safetylife/sos47/case/deposits/ - 警察庁・SOS47特殊詐欺対策ページ「オレオレ詐欺」
https://www.npa.go.jp/bureau/safetylife/sos47/case/oreore/ - 警察庁・SOS47特殊詐欺対策ページ「サポート詐欺」
https://www.npa.go.jp/bureau/safetylife/sos47/case/support/ - 警察庁・SOS47特殊詐欺対策ページ「令和7年における特殊詐欺及びSNS型投資・ロマンス詐欺の認知・検挙状況等について(確定値)」(2026年6月5日)
https://www.npa.go.jp/bureau/safetylife/sos47/new-topics/260605/01.html - 警察庁・SOS47特殊詐欺対策ページ「『ストップ!ATMでの携帯電話』運動について」(2025年1月10日)
https://www.npa.go.jp/bureau/safetylife/sos47/new-topics/250110/05.html - 警察庁・SOS47特殊詐欺対策ページ「固定電話の番号表示・非通知拒否サービス」
https://www.npa.go.jp/bureau/safetylife/sos47/case/service/ - 警察庁・SOS47特殊詐欺対策ページ「防犯機能付き電話の導入」
https://www.npa.go.jp/bureau/safetylife/sos47/case/security-phone/ - 警察庁・SOS47特殊詐欺対策ページ「国際電話の着信ブロック(#みんとめ)」
https://www.npa.go.jp/bureau/safetylife/sos47/case/international-phone/ - 国民生活センター「『新型コロナワクチン詐欺 消費者ホットライン』の受付状況について(2)」(2021年5月14日公表)
https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20210514_1.html - 消費者庁「消費者ホットライン」
https://www.caa.go.jp/policies/policy/local_cooperation/local_consumer_administration/hotline/ - 金融庁「振り込め詐欺等の被害にあわれた方へ」
https://www.fsa.go.jp/policy/kyuusai/furikome/index.html
※還付金詐欺の件数・被害額(認知件数3,179件・被害額61.9億円)と予兆電話の件数(331,653件)は、警察庁が2026年6月5日に公表した令和7年の確定値です。国際電話番号の割合(約75.5%)は令和7年中の数字です。ワクチン接種の事例は2021年5月時点の国民生活センターの公表内容です。NTT東日本・西日本の無料化には申し込みと機器などの条件があります。最新の状況は各出典をご確認ください。