実用・知識

クラウドPBXの選び方:使える番号と不正発信の防ぎ方

公開日

結論:クラウドPBXは、会社の電話の「交換機」をインターネット上のサーバーで使うサービスです。選ぶときにまず確かめたいのは今の番号(03などの市外局番の番号)をそのまま使えるか、050番号に変わるのかです。050番号は110・119にかけられず、固定電話の番号ポータビリティの対象外でもあります。もう一つ大事なのが乗っ取られて国際電話を勝手にかけられる不正発信への備えです。この記事では、番号の選び方と、なりすまし・不正発信を防ぐ設定を、総務省とNTT東日本の公開情報をもとに中小企業向けにまとめます。

クラウドPBXとビジネスフォンの違い

PBXは会社の中の電話を内線でつなぎ、外からの電話を担当者に振り分ける「構内交換機」です。これまでのビジネスフォンは、この交換機(主装置)を事務所の中に置いて、配線した電話機で使うのが一般的でした。NTT東日本は、クラウドPBXを「インターネット上のサーバーを通じてPBX(構内交換機)の機能を利用できるサービス」と説明しています。

交換機を自社で持たないので、スマホやパソコンを内線の電話として使いやすく、在宅勤務や複数の事務所をまとめやすいのが特徴です。一方で、NTT東日本は、クラウドPBXはインターネット上で音声をデータにしてやりとりする仕組みのため通信環境に大きく左右されるとも書いています。事務所の回線の速さや安定性、スマホの電波も含めて、試用期間などで実際の音声を確かめてから決めると安心です。

固定電話の網そのものがIP網に移っている流れはひかり電話と加入電話の違いにまとめています。

どの番号が使えるか:03番号・050番号・0120

NTT東日本は、クラウドPBXに切り替えると今の固定電話やIP電話の番号から、クラウドPBX用の050番号に変わるケースがあるとし、市外局番から始まる番号をそのまま使えるサービスもあるので、番号を変えたくないときは対応しているかを確かめるよう勧めています。番号の種類による違いを表にまとめます。

番号主な違い(公開情報から)選ぶときの確認点
市外局番から始まる番号(例 03・06)050番号のIP電話より通話品質の基準が高い(NTT東日本)。双方向番号ポータビリティの対象今の番号を移せるか。移した後に別の会社へまた移せるか
050番号通話品質の基準が低い。110・119などの緊急通報が使えない。双方向番号ポータビリティの対象外(NTT東日本)解約・乗り換えのときに番号を持ち出せない前提で使うか
0120・0800通話料は受ける側(会社)が払う(総務省)今のフリーダイヤルの着信先をクラウドPBXに向けられるか

特に注意したいのは、050番号は会社を替えると番号も変わることです。NTT東日本によると、2025年1月に受付が始まった固定電話の双方向番号ポータビリティでは「050番号」は対象外です。名刺やホームページに050番号を載せた後で事業者を乗り換えると、すべて刷り直しになります。長く使う代表番号は市外局番の番号にしておき、050番号は社員のスマホの発信用などに分ける、といった考え方もあります。番号の種類ごとの説明は03番号・050番号・0120番号のページでも確認できます。

停電と緊急通報

NTT東日本は、インターネット回線に頼るIP電話を固定電話として使う場合、電力の供給が途切れると基本的に通話が一切できないと注意しています。050番号では110・119にもかけられません。事務所の非常時の連絡手段として、携帯電話など別の手段を必ず残しておきましょう。

050番号が「警戒される」理由

受ける側から見ると、050番号は少し警戒されやすい番号です。総務省の情報通信審議会の資料(2025年11月)では、警察庁が、特殊詐欺に使われる番号の種類は固定電話番号・携帯電話番号・特定IP電話番号(050)などと移り変わってきたと説明しています。電気通信事業者協会によると、警察などの要請で利用停止などをした番号は、令和6年末までに固定電話番号が13,972件、050IP電話番号が11,588件でした。

会社が050番号を使うこと自体に問題はありませんが、「知らない050番号には出ない」という人もいます。お客に折り返しの電話をかける番号は、ホームページに載せた番号と同じにしておくと、お客が確かめやすくなります。050番号が詐欺に使われやすい背景は050番号が詐欺に多用される理由で詳しく説明しています。

乗っ取りによる国際電話の不正発信

クラウドPBXやIP電話で高額の請求につながるおそれがあるのが、第三者に乗っ取られて勝手に国際電話をかけられる被害です。総務省は2015年6月の注意喚起で、IP電話などが第三者に不正利用され利用者に高額な国際電話料金が請求される問題が起きているとし、確認されたケースとして次の2つを挙げています。

  • PBXや、それに入れたソフトウェアのセキュリティ対策が不十分なため、第三者がインターネット経由で会社のPBXにアクセスし、会社になりすまして国際電話をかけた。
  • IP電話につなぐルータの対策が不十分なため、第三者が接続用のIDやパスワードを不正に手に入れ、なりすまして国際電話をかけた。

総務省が求めている対策は次の4つです。

  1. 使っているソフトウェアを最新版にアップデートするなどのセキュリティ対策をする。
  2. 機器やソフトウェアにアクセスログを記録・保存する機能があれば使い、不審なアクセスがないか確かめる。
  3. 国際電話を使わないなら、電話会社の国際通話の発信規制サービスを申し込む。
  4. 電話会社が公表している「不正利用の宛先になりやすい国・地域」への発信を、機器の設定で止める。

この注意喚起は2015年のものですが、クラウドPBXでも「管理画面やアカウントを乗っ取られて発信される」という構図は同じです。クラウドPBXの事業者を選ぶときは、次の点も確かめておくと安心です。

  • 管理画面のログインに、パスワード以外の確認(二段階認証など)を設定できるか。
  • 国際電話や特定の番号への発信を、会社側で止められるか。
  • 発信の記録(いつ・どの内線から・どこへ)を管理者が見られるか。通話料が急に増えたときに知らせてくれるか。
  • 通話や管理画面の通信が暗号化されているか。
  • 退職した人や使わなくなったスマホの内線アカウントを、すぐ止められるか。

固定電話・ひかり電話については、京都府警察が、国際電話不取扱受付センター(0120-210-364)に申し込むと国際電話の発信・着信を無償で休止できると案内しています(一定の条件あり。NTT東西などの国際電話発信は、別にNTT東西やNTTコミュニケーションズなどへの停止の申し込みが必要)。海外と電話をしない事務所なら、国際電話そのものを止めておくと安心です。海外からかかってくる不審な電話については国際電話詐欺:+1・+44・+86からの着信と止め方もご覧ください。

会社の名前をかたる電話への備え

電話の仕組みを整えても、会社の名前をかたる電話を完全には止められません。表示された番号が会社の番号でも、本物の証明にはなりません(番号詐称:表示された番号は本物の証明になりません)。会社としてできるのは、お客が確かめやすい形を作っておくことです。

  • ホームページに「当社から電話でお願いすること・お願いしないこと」(例:電話で暗証番号は聞かない)を書いておく。
  • 代表番号・問い合わせ番号を一つのページにまとめ、「これ以外の番号から当社を名乗る電話があったらこちらへ」と案内する。
  • 番号を変えたときは、まずホームページを更新してから取引先に知らせる。

まとめ:導入前にやること

  1. 今の番号(市外局番・0120)をそのまま使えるか、050番号に変わるのかを事業者に確かめる。
  2. 050番号を使うなら、緊急通報が使えないこと・乗り換えで番号が変わることを社内で共有し、別の連絡手段を残す。
  3. 管理画面の二段階認証、国際電話の発信制限、発信記録の確認をはじめに設定する。
  4. 国際電話を使わないなら、発信規制や国際電話の休止を申し込む。

会社に知らない番号から電話がかかってきたときは、番号検索で口コミを確かめられます。不審な電話でお金や情報を求められたら、消費者ホットライン188、警察相談専用電話#9110に相談してください。

参考

この記事は2026年10月に、以下の公開情報をもとに書きました。

※利用停止の件数は、電気通信事業者協会が総務省の審議会で示した令和6年末までの累計です。050番号の通話品質や緊急通報の扱いは一般的な説明で、個別のサービスの条件は各事業者に確かめてください。総務省の不正利用の注意喚起は2015年6月の公表です。

← コラム一覧へ戻る