「元本保証で必ず儲かります」「この話はあなただけに特別に」——知らない番号からの電話でこうした言葉が出たら、その勧誘は詐欺か無登録業者の可能性が高いと考えて、話を続けずに切ってください。株式や債券、投資信託やファンドは、経済状況によって元金を割り込むことがある商品です。金融商品取引法は、不確実なことを確実であるかのように言って勧誘する断定的判断の提供を禁止しています。この記事では、金融庁への相談件数の実際、相手が登録業者かを確かめる方法、その場での断り方、電話でよく使われる手口、そして困ったときの相談先を、公的機関の情報をもとに整理します。
投資詐欺の相談はどれくらいあるか
政府広報オンライン(2025年10月6日掲載)によると、金融庁に寄せられた投資詐欺に関する相談は、2023年1月から2024年12月までの2年間で合計15,054件でした。このうち12,526件(83.2%)は、何らかの被害を受けてしまった相談です。
2024年1年間の相談を相談者の年代別にみると、60代が13.22%、70代以上が11.26%で、約25%が60代以上でした(年齢不明が37.31%あるため、実際の比率はこれとは異なる可能性があります)。高齢の家族がいる場合は、この記事の内容を一緒に確認しておくと安心です。
相手が正規業者か確認する方法
金融商品取引法第29条は、金融商品取引業は内閣総理大臣の登録を受けた者でなければ行うことができないと定めています。政府広報オンラインも、幅広い投資家にファンドへの出資を勧誘できるのは金融庁(財務局)の登録を受けた業者に限られ、それ以外の事業者の勧誘は法律違反の可能性があると説明しています。「登録があるかどうか」が最初の見分け方です。
確認は誰でも無料でできます。
- 金融庁「免許・許可・登録等を受けている業者一覧」:名称や電話番号を入力して、金融庁から登録等を受けている業者を検索できます。勧誘してきた会社が載っていなければ、慎重に対応してください。
- 金融庁「無登録で金融商品取引業を行う者の名称等について」:無登録で金融商品取引業を行っているとして、金融庁(財務局)が警告書を出した者の名称が載っています。ここに名前があれば関わってはいけません。ただし、載っているのは警告を出した業者だけなので、「載っていないから安全」とはいえません。
電話口では会社名・登録番号・担当者名を必ず聞き取ってください。登録番号をはぐらかす、「登録は申請中」と言うといった相手は、その時点で切って構いません。かかってきた番号の評判は番号検索でも調べられます。
「金融庁の届出業者」「金融庁から委託されている」に注意
政府広報オンラインは、「当社は金融庁に届出をした業者です」「プロ投資家向けのファンドを運用しています」と言って信用させる手口を紹介しています。プロ向けファンドは本来、証券会社や銀行などのプロ投資家向けで、広く一般の人に売ることは想定されていません。また、金融庁などの公的機関が、投資の勧誘を民間業者に委託・指示することはありません。金融庁・財務局・消費者庁・消費生活センターなどの名前や、それを連想させる名前を出してくる勧誘も要注意です。
その場での断り方
コツは、興味があるそぶりを見せず、短くはっきり断ることです。
- 「興味がありません。今後の電話も不要です」とだけ伝える。質問し返すと会話が続き、断りにくくなります。金融商品取引法第38条第6号は、政令で定める契約について、客が契約しない意思(勧誘を続けて受けたくない意思を含む)を示したのに勧誘を続けることを禁じています。はっきり断ったのに何度もかかってくる場合は、相談先に伝えましょう。
- 「資料だけでも」を断る。資料を受け取るには住所や氏名を相手に伝えることになります。
- 口座番号・カード番号・マイナンバー・家族構成・資産状況を答えない。
- その場で契約・振込を決めず、一度電話を切る。政府広報オンラインも、怪しい勧誘は途中でもきっぱり断り、絶対に関わらないよう呼びかけています。
なお同条第4号は、政令で定める契約について、頼んでもいない客に電話や訪問で勧誘すること(不招請勧誘)そのものを禁じています。
固定電話なら「防犯機能付き電話」も
警察庁は特殊詐欺の対策として防犯機能付き電話の導入をすすめています。着信音が鳴る前に「この通話は防犯のために録音されます」などの警告メッセージを流す機能や、通話を自動で録音する機能があります。自治体によっては購入の補助があるので、お住まいの市区町村の情報を確認してください。
やり取りに不安が残ったら、日時・会社名・言われた内容を書き留めておくと、あとの相談がスムーズです。記録の付け方は被害整理メモを参考にしてください。知らない番号への対応全般は関連コラムでも扱っています。
未公開株・劇場型・暗号資産など典型手口
- 未公開株・私募債:「上場確実」「上場すれば高値が付く」と持ちかける手口です。金融庁によると、未公開株を販売できるのは発行会社や登録を受けた証券会社に限られ、上場しなければ換金する方法はほとんどありません。政府広報オンラインも、幅広い投資家に未公開株や私募債の取引が勧誘されることは一般的に考えられないとしています。
- 劇場型勧誘:別々の会社を装った複数の人物が口裏を合わせる手口です。国民生活センターの広報誌は、社債の案内が届いたあと「証券会社の従業員」を名乗る者から電話があり、「あなたが買ってくれたら5倍の値段で買い取る」と言われて現金を渡したが、その後電話が通じず買い取りもされなかった例を紹介しています。政府広報オンラインも、購入を勧められた後に別の業者から「買ってくれたら後日高値で買い取る」と連絡が来るのは、投資詐欺によくみられる手口だとしています。
- 暗号資産・高配当の約束:同じ広報誌は、元本を保証しながら毎月3%の配当を出し続けるといった、経済常識に照らしてあり得ないことを実現可能であるかのように勧誘するのも、違法な利殖商法と同様だと解説しています。また、暗号資産を扱う事業者は、資金決済法で登録が必要です。
- 個人名義の口座への振込:国民生活センターは、投資資金の振込先に個人名義の口座を指定されたら「それは詐欺です」と明記しています。
登録業者は、損失を補塡すると約束することも金融商品取引法第39条で禁じられています。「元本保証」を口にする投資勧誘は、それだけで警戒に値します。ほかの言い回しは詐欺パターン集にまとめています。
「お金を取り戻します」という二次被害
国民生活センターは、いったん振り込むと被害回復には困難が伴うこと、さらに被害回復をうたう二次被害にあう可能性もあることを注意喚起しています。被害にあったあとで「取り戻せます」と連絡してくる相手にも、お金を払わないでください。
相談先
契約や振込をする前に、公的な窓口へ相談してください。金融庁の相談室は相談料が無料で、相談した人のプライバシーは守られます。
- 金融庁 金融サービス利用者相談室 0570-016811(IP電話 03-5251-6811・平日10時〜17時): 業者が登録されているか、勧誘に問題がないかを相談できます。詐欺的な投資勧誘の相談には専用番号 0570-050588 もあります。
- 消費者ホットライン 188(いやや):身近な消費生活センターや消費生活相談窓口を案内してもらえます。国民生活センターは、振り込んでしまった場合も、相手の説明に疑問を持ったらすぐに消費生活センターや警察に相談するよう呼びかけています。
- 警察相談専用電話 #9110:お金を払ってしまった、脅すような口調だったなど、被害やトラブルになったときの相談先です。たった今被害に遭った、という緊急のときは110番にかけます。
今日できることは3つです。勧誘してきた会社名を金融庁の業者一覧で検索する、登録がなければきっぱり断って番号を着信拒否にする、かかってきた番号を番号検索で確かめる。「元本保証」「必ず儲かる」「あなただけ」「高く買い取る」のどれかが出た電話は、それ以上話さずに切り、自分で調べてください。
参考
この記事は2026年9月に、以下の公開情報をもとに書きました。
- 政府広報オンライン「投資詐欺にご注意を 気をつけるべき6つのポイント。相談窓口もご紹介。」(2025年10月6日)
https://www.gov-online.go.jp/article/201510/entry-8432.html - e-Gov法令検索「金融商品取引法」(第29条・第38条・第39条)
https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000025 - 金融庁「詐欺的な投資勧誘等にご注意ください!」
https://www.fsa.go.jp/ordinary/chuui/attention.html - 金融庁「無登録で金融商品取引業を行う者の名称等について」
https://www.fsa.go.jp/ordinary/chuui/mutouroku.html - 金融庁「金融サービス利用者相談室 皆様の『声』をお寄せください!」
https://www.fsa.go.jp/receipt/soudansitu/index.html - 金融庁「未公開株購入の勧誘にご注意!~一般投資家への注意喚起~」
https://www.fsa.go.jp/ordinary/mikoukai/ - 国民生活センター『国民生活』2025年1月号「知っておきたい投資トラブル―4つの典型例を通じて―」
https://www.kokusen.go.jp/wko/pdf/wko-202501_02.pdf - 国民生活センター「SNSで著名人が勧める“もうかる方法” それって本当!?金融商品・サービスのトラブルにご注意!」(2026年9月1日)
https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20260901_1.html - 警察庁 SOS47「防犯機能付き電話の導入」
https://www.npa.go.jp/bureau/safetylife/sos47/case/security-phone/ - 消費者庁「消費者ホットライン」
https://www.caa.go.jp/policies/policy/local_cooperation/local_consumer_administration/hotline/ - 警視庁「相談ホットラインのご案内」
https://www.keishicho.metro.tokyo.lg.jp/sodan/madoguchi/sogo.html
※相談件数は、政府広報オンラインが金融庁の公表資料から集計した2023年1月〜2024年12月の数字(年代別は2024年1〜12月分)です。電話勧誘に限った数字ではありません。金融商品取引法第38条第4号・第6号の禁止は、政令で定める契約が対象で、すべての金融商品に当てはまるわけではありません。電話番号・受付時間は2026年9月時点の各機関のページによります。