不動産会社からの営業電話は、ふつうの「迷惑電話」とは少し違う法律で規制されています。この記事では、宅地建物取引業法(宅建業法)で禁止されている勧誘の具体的な中身(現行の条文番号つき)、それに沿った角の立たない断り方と言い方の例、相手が本当に免許を持った業者か・過去に行政処分を受けていないかを国土交通省のサイトで確かめる方法、うっかり申し込んでしまったときのクーリング・オフ(8日間)の条件、そして断ってもかかってくるときの相談先(免許を出した役所・188)を、法令と公的機関の資料をもとにまとめます。
不動産の営業電話を縛るのは「特定商取引法」ではなく「宅建業法」
訪問販売や電話勧誘販売には特定商取引法(特商法)のルールがありますが、消費者庁の解説によると、宅地建物取引業者が行う宅地・建物の販売などは、特商法の電話勧誘販売などの規定の適用が除外されています(特商法第26条第1項第8号ロ)。宅建業法という別の法律で消費者保護が図られている、という整理です。
ただし同じ解説で、次の場合は特商法の規定が適用されると説明しています。
- 宅建業法の免許を受けていない者が、不動産の販売を訪問販売等で行った場合
- 免許を受けた宅建業者でも、宅地以外の不動産(例:用途地域外の山林・雑種地を宅地造成せずにそのまま売る)を訪問販売等で行った場合
つまり、電話の相手が免許を持つ宅建業者かどうかで、使えるルールと相談先が変わります。特商法の電話勧誘のルール(断った後の再勧誘の禁止など)は断った営業電話がまた来たら?特定商取引法の電話勧誘ルールで解説しています。
宅建業法で禁止されている勧誘(電話に関係するもの)
宅建業法第47条の2と、その第3項を受けた施行規則第16条の11は、宅建業者(代理人・従業者を含む)の勧誘について次の行為を禁止しています。商号の告知・断った後の勧誘継続・迷惑な時間の3つは、2011年10月1日施行の施行規則改正で明文化されました(公布は同年8月31日)。
| 禁止されている行為 | 根拠 |
|---|---|
| 1. 利益が確実だと誤解させる断定的な判断を示す(「必ず値上がりする」など) | 宅建業法 第47条の2第1項 |
| 2. 契約させるため、または解約を妨げるために威迫する(脅すような言い方で迫る) | 宅建業法 第47条の2第2項 |
| 3. 勧誘の前に、会社名(商号)・勧誘する人の氏名・勧誘が目的であることを告げずに勧誘する | 施行規則 第16条の11第1号ハ |
| 4. 相手が契約しない意思(勧誘を今後受けたくない意思を含む)を示したのに、勧誘を続ける | 施行規則 第16条の11第1号ニ |
| 5. 迷惑を覚えさせるような時間に電話・訪問する | 施行規則 第16条の11第1号ホ |
| 6. 深夜または長時間の勧誘など、私生活や業務の平穏を害するような方法で困惑させる | 施行規則 第16条の11第1号ヘ |
| 7. 正当な理由なく、契約するか考える時間を与えない | 施行規則 第16条の11第1号ロ |
| 8. 将来の環境や交通の便について誤解させる断定的な判断を示す | 施行規則 第16条の11第1号イ |
2011年当時の国土交通省の報道発表や、国土交通省・地方整備局の案内ページでは、同じ内容が「施行規則第16条の12」として書かれています。いま e-Gov法令検索で見られる現行の条文では第16条の11です。
規則は「迷惑を覚えさせるような時間」と定めているだけで、何時から何時までという線引きは条文にはありません。「職場に何度もかけてくる」も、表の6の「業務の平穏を害する」方法に入りうる行為です。
これらに違反した業者に対して、免許を出した役所(国土交通大臣または都道府県知事)は必要な指示をしたり、1年以内の期間を定めて業務の全部または一部の停止を命じたりできます(宅建業法第65条)。相談先に免許行政庁が出てくるのはこのためです。
電話を受けたときの断り方(3ステップ)
上の禁止行為を知っていると、断り方の「型」が自然に決まります。嘘の理由(「もう他社と契約した」など)を作る必要はありません。
- 会社名・担当者名・用件を確認する
「どちらの会社の、どなたですか。何のご用件ですか」と聞きます。勧誘の前にこれを告げるのは業者側の義務です(表の3)。名乗らない・はぐらかす場合は、その時点で話を続ける理由はありません。 - 「契約しません。今後の勧誘も不要です」とはっきり伝える
規則は「契約を締結しない旨の意思」だけでなく「勧誘を引き続き受けることを希望しない旨の意思」を示した後の勧誘継続も禁止しています(表の4)。「今は忙しい」「また今度」ではなく、今後も不要と言い切るのがポイントです。国民生活センターも投資用マンションの勧誘について「契約の意思が無ければ会わずに、きっぱり断りましょう」と呼びかけています。 - 伝えたら電話を切り、記録を残す
国土交通省は、しつこい勧誘などを受けたときは日時・正確な会社名・会社の所在地・免許証番号・担当者名・具体的なやり取りを記録して免許行政庁に知らせるよう案内しています。着信履歴の番号と合わせてメモしておきましょう。書き方は被害の記録メモの作り方が使えます。会話を録音しておきたいときの方法は通話録音の注意点とやり方にまとめています。
こう言われたときの返し方の例
| 相手の言葉 | 返し方の例 |
|---|---|
| 「説明だけでも」「一度お会いして」 | 「会う予定はありません。契約もしませんし、今後の電話も不要です」 |
| 「なぜダメなんですか」「理由を教えてください」 | 「理由をお伝えする必要はありません。契約しないという返事です」 |
| 「絶対に損はしません」「必ず値上がりします」 | 「確実と言い切れる話はお受けできません。失礼します」(表の1) |
| 「今日決めないと他の人に」 | 「考える時間をもらえない契約はしません」(表の7) |
| 別の担当者・別の番号から再びかかってきた | 「○月○日に御社の○○さんに、今後の勧誘は不要と伝えています」と日時を添えて伝え、記録に追記する |
相手が本当に宅建業者か確かめる
国土交通省の「建設業者・宅建業者等企業情報検索システム」では、宅地建物取引業者を検索できます。電話で聞いた会社名で調べ、免許があるか、どこの役所(国土交通大臣か都道府県知事か)の免許かを確認しておくと、後で相談するときに話が早くなります。国土交通省の案内では、新規の取得や内容の変更はおおむね1か月程度で検索システムに掲載されます。
あわせて「国土交通省ネガティブ情報等検索サイト」では、国土交通大臣・地方整備局長・都道府県知事などが宅建業者に行った免許取消・業務停止・指示の処分を、事業者名(部分一致)で検索できます。掲載は直近5年分で、おおむね1か月に1回更新です。一部の自治体はこのサイトではなく自分のサイトで公表しているため、見つからなくても「処分歴がない」とまでは言えません。
かかってきた番号そのものは、当サイトの番号検索で調べられます。当サイトの不動産カテゴリ(宅建業者・不動産売買・賃貸管理など)には、2026年9月23日時点で128,120件の番号が載っています。番号ページの口コミで、同じ番号から似た電話を受けた人がいないかも確認できます。
資料請求などで渡した連絡先の扱い
過去に資料請求や問い合わせをした会社から電話が続く場合もあります。個人情報保護委員会のQ&Aは、ダイレクトメールの例で、本人が停止の意思を示したのに繰り返し送られてくるような場合など、個人情報保護法第35条第5項の要件を満たす場合には、事業者に保有個人データの利用停止または消去の義務がある(同条第6項)と説明しています。あわせて、事業者は停止の求めを苦情として適切かつ迅速に処理するよう努めなければならないとしています(第40条第1項)。国土交通省の案内も、勧誘してきた事業者の個人情報相談窓口にデータの消去などを申し出る方法を紹介しています。
電話を断るときに「こちらの連絡先の利用停止と消去もお願いします」と一言添え、その日時も記録しておくとよいでしょう。名簿業者などを経由して番号が出回る仕組みは名簿業者から電話番号が流出する仕組みで解説しています。
申し込んでしまったら:宅建業法のクーリング・オフ
電話の後に押し切られて会い、申し込んでしまった場合でも、宅建業法第37条の2のクーリング・オフが使えることがあります。条件は次のとおりです。
- 宅建業者が自ら売主となる宅地・建物の売買であること
- 業者の事務所や案内所など(「事務所等」)以外の場所で申し込んだ、または契約したこと(事務所等で申し込み、それ以外の場所で契約した場合は対象外)
- クーリング・オフできる旨と方法を書面で告げられた日から8日を過ぎていないこと
- 物件の引渡しを受け、かつ代金を全部支払った後ではないこと
注意したいのは、自分から「自宅(または勤務先)で説明を聞きたい」と申し出た場合、その自宅や勤務先は「事務所等」に含まれ、クーリング・オフの対象外になる点です(施行規則第16条の5第2号)。電話で「ご自宅に伺ってもよいですか」と聞かれて応じるかどうかは、この点も踏まえて考えましょう。
クーリング・オフは書面で行い、書面を出した時に効力が生じます。業者は損害賠償や違約金を請求できず、受け取った手付金などを速やかに返さなければなりません。書面の出し方の一般的な注意はクーリング・オフは電話でできる?正しい通知方法と注意点も参考にしてください。8日を過ぎていたり、条件に当てはまるか分からないときは、すぐ下の相談先に相談します。
断ってもかかってくるときの相談先
- 免許を出した役所(免許行政庁)
国土交通省は、宅建業者の悪質な勧誘の相談先として、国土交通大臣免許の業者は本店所在地を管轄する地方整備局等、知事免許の業者は都道府県の宅地建物取引業の免許担当部局を案内しています。例えば関東地方整備局では、茨城・栃木・群馬・埼玉・千葉・東京・神奈川・山梨・長野に本店がある大臣免許業者について、建政部 建設産業第二課 不動産業第一係(048-601-3151 代表・内線6656)が窓口です。関東地方整備局の受付時間は9時15分〜12時・13時〜18時です。上の検索システムでどの役所の免許かを確かめてから連絡します。 - 消費者ホットライン 188(いやや!)
地方公共団体の消費生活センターや消費生活相談窓口を案内してくれる全国共通の番号です(消費者庁につながるわけではありません)。相談は無料ですが通話料はかかります。地元のセンターが開いていない日は国民生活センターが相談を補います。免許のない業者からの勧誘や、どこに相談すればよいか分からないときもまずここへ。なお、全国の消費生活センター等に寄せられた相談は2025年度に100.6万件で、前年度から約9万件増えています。
脅すような言葉があって身の危険を感じる場合など、ほかの相談先との使い分けは迷惑電話の相談先の使い分けにまとめています。
投資用マンションの勧誘には特に注意
国土交通省は、投資用マンションの勧誘について「断ったにもかかわらずしつこく電話をかけてくる」「長時間にわたって電話を切らせてくれなかった」「深夜や早朝といった迷惑な時間に電話をかけられた」「絶対に儲かるから心配ないと言われた」といった例を挙げ、こうした勧誘を受けたら記録して免許行政庁に知らせるよう呼びかけています。
国民生活センターの公表(2019年3月28日)によると、投資用マンションに関する20歳代の相談は2013年度の160件から2018年度(2019年2月28日時点)の405件へ増えました(全体では2013年度2,321件、2018年度1,350件)。2018年度の20歳代の平均契約購入金額は2,776万円です。同センターは「投資にはリスクがあり、必ず儲(もう)かるわけではありません」「金融機関から融資を受ける際に虚偽申告をしてはいけません」と注意を呼びかけています。「必ず儲かる」「絶対に値上がりする」といった言い方は、宅建業法で禁止されている「利益が確実だと誤解させる断定的判断」(表の1)にあたるおそれがあります。
まとめ:営業電話が来たら
- 会社名・担当者名・用件を聞く(名乗らなければ切ってよい)
- 「契約しません。今後の勧誘も不要です」と伝えて切る。会う約束・自宅訪問の約束はしない
- 日時・会社名・免許番号・担当者名・内容をメモする
- 番号を当サイトの番号検索で調べ、会社名を国土交通省の検索システムとネガティブ情報等検索サイトで確かめる
- それでも続くなら免許行政庁、または188へ相談する。番号ごと止めたいときは迷惑電話をブロックする方法を参考に着信拒否を設定する
あわせて読みたい
参考
この記事は2026年9月に書き、2026年10月に最新の公開情報で見直しました。
- e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」(第37条の2・第47条の2・第65条)
https://laws.e-gov.go.jp/law/327AC1000000176 - e-Gov法令検索「宅地建物取引業法施行規則」(第16条の5・第16条の6・第16条の11)
https://laws.e-gov.go.jp/law/332M50004000012 - 国土交通省「宅地建物取引業法施行規則の一部改正について」(報道発表 平成23年8月31日)
https://www.mlit.go.jp/report/press/totikensangyo16_hh_000060.html - 国土交通省「投資用マンションについての悪質な勧誘電話等にご注意ください」
https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/sosei_const_tk3_000028.html - 国土交通省 関東地方整備局「宅地建物取引業者からの悪質な勧誘電話等にご注意ください。」
https://www.ktr.mlit.go.jp/kensan/kensan00000030.html - 国土交通省「建設業者・宅建業者等企業情報検索システム」
https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/sosei_const_tk3_000037.html - 国土交通省「ネガティブ情報等検索サイト」(宅地建物取引業者)
https://www.mlit.go.jp/nega-inf/cgi-bin/search.cgi?jigyoubunya=takuti - 消費者庁「特定商取引に関する法律の解説」第26条(適用除外)
https://www.no-trouble.caa.go.jp/pdf/20220601la03_06.pdf - 個人情報保護委員会「ガイドラインに関するQ&A」Q9-21
https://www.ppc.go.jp/all_faq_index/faq1-q9-21/ - 国民生活センター「20歳代に増える投資用マンションの強引な勧誘に注意!」(2019年3月28日)
https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20190328_1.html - 国民生活センター「2025年度 全国の消費生活相談の状況」(2026年8月5日)
https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20260805_1.html - 消費者庁「消費者ホットライン」
https://www.caa.go.jp/policies/policy/local_cooperation/local_consumer_administration/hotline/
※投資用マンションの相談件数は国民生活センターが2019年3月28日に公表したもので、2018年度分は2019年2月28日までの登録分です。いずれも全国の消費生活センター等に寄せられた投資用マンションに関する相談で、不動産の営業電話全体の件数ではありません。2025年度の100.6万件は、商品・サービスを問わない消費生活相談全体の件数です。条文番号は2026年10月時点の e-Gov法令検索の現行条文によります。当サイトの不動産カテゴリの件数は2026年9月23日時点でカテゴリに掲載している電話番号の数で、そのすべてが営業電話をかけている番号という意味ではありません。法律の適用は個別の事情で変わるため、具体的な判断は免許行政庁や消費生活センターにご相談ください。